アントワーン・フークア監督、デンゼル・ワシントン、ダコタ・ファニング、レモ・ジローネ(医師エンゾ)、エウジェニオ・マストランドレア(国家憲兵ジオ)、ガイヤ・スコデッラーロ(カフェの店員アミーナ)、ダニエレ・ペッローネ(魚屋アンジェロ)、アンドレア・スカルドゥッツィオ(カモッラの頭目ヴィンセント・クアランタ)、アンドレア・ドデーロ(ヴィンセントの弟マルコ)、デア・ランザーロ(ジオの娘ガブリエラ)、ソニア・ベン・アマル(ジオの妻キアラ)、デヴィッド・デンマン(CIA捜査官コンロイ)、アドリアーノ・サブリエ(ヴィターレの孫)、アドルフォ・マルジオッタ(バレッラ署長)、ブルーノ・ビロッタ(ワイン農園主ロレンツォ・ヴィターレ)ほか出演の『イコライザー THE FINAL』。R15+。

 

シチリアでの事件で負傷し心身ともに限界を迎えた元CIA捜査官ロバート・マッコールは、アマルフィ海岸沿いの静かな田舎町にたどり着く。身内のように温かく接してくれる人々の存在に救われた彼は、この町を安住の地にすることを心に誓い、イコライザーのスイッチともいうべき腕時計を外すことを決意する。しかしその町にも魔の手が迫り、マッコールは大切な人々を守るため再びイコライザーの仕事を開始。やがて事態はイタリア全土を巻き込む爆破テロ事件へと拡大していく。(映画.comより転載)

 

アントワーン・フークア監督、デンゼル・ワシントン主演の「イコライザー」シリーズ第3弾にして最終章。

 

 

 

ネタバレがあります。

 

最初の1作目はかなり好きだったのが2作目については結構辛めの評価をしてしまったんですが、それでもそのさらなる続篇は気になったし、一応これが最後というふれこみでもあるので当然のごとく鑑賞。

 

実は待ちきれなくて、YouTubeで断片的にUPされてたヴァイオレンスシーンをいくつか観てしまっていたんですが…いやぁ、面白かったなぁ(^o^)

 

必殺仕置人ロバート・マッコールの面目躍如といった感じで。

 

最終作に相応しく、主人公が自分の居場所を手に入れて映画は終わる。

 

シリーズ初のR指定(前2作はいずれもPG12)。

 

前2作から舞台をイタリアに移して、今回の敵は現地のマフィア=カモッラ。

 

シチリアで重傷を負ったマッコールは国家憲兵のジオに助けられて医師のエンゾのもとへ担ぎ込まれる。エンゾはマッコールの正体や事情を詮索せず、手厚く治療・介護してくれた。その町・アルタモンテで療養することになったマッコールは、本名のロバートのイタリア語読みであるロベルトを名乗る。

 

町の人々とのふれあいの中で、いつしかそこを自身の生きる場所として考え始めるマッコールだったが、ヴィンセント・クアランタ率いるマフィアがその地をリゾート化するために住民たちへの暴力と殺戮を激化させていた。

 

1作目の敵がロシアン・マフィアで今回はイタリアン・マフィアという、わかりやすいといえば大変わかりやすい流れですが、美しき異邦の地に流れてきたアメリカ人の主人公が現地で悪さしてる奴らを懲らしめる、という、昔ながらのベタなお話ではあるものの、そのベタなストーリーを誠実に、そして見せるべきものは徹底してしっかり見せるという姿勢で作っているので、ありきたりな映画に終わっていない。

 

もともとアクション物の範疇に入るシリーズだし、そういう要素(マット・デイモン主演の「ボーン」シリーズ的な)は過去の2作にはある程度含まれていたけれど、この3作目はむしろ「ヴァイオレンス映画」と呼んだ方がよくて、派手で爽快なアクションはなく、またマッコールを圧倒するような、あるいは彼と戦闘能力が拮抗する強敵も出てこない。

 

主人公が勝てるかどうかハラハラしながら見守る、という展開がなくて、そういう部分でのカタルシスは期待しない方がいい。瞬殺なのでw

 

以前ならそれは不満要素だったかもしれませんが、本作品はひたすらロバート・マッコールがならず者たちに敵以上の残虐な方法で天誅を下すという、観客を暗い快楽に浸らせてくれるので、大変心地よいひとときを過ごせました(笑)

 

シリーズが続くごとにどんどんマッコールの無敵度は上がってきていて、1作目ではまだ苦戦する描写があったのに、もはやどんな屈強な相手だろうが易々と息の根を止める。もうそれが気持ちよくって。

 

憎々しげだったり弱者を痛めつけて笑っている髭ヅラや坊主頭のクズたちを容赦なく退治するその姿に、ブラ~ヴォ!と叫びたくなる。

 

アクション映画の悪役みたいに相手にとどめを刺す前に長々と講釈を垂れたりせず、さっさとぶっ○すところも最高。相手が確実に死ぬことがわかった時点で黙ったままそいつの目をじっと覗き込んだり、殺しを愉しんでいるフシもうかがえるのが怖くもある。絶対に怒らせてはいけない人。

 

前作の感想にも書いたように、ロバート・マッコールのような“正義の味方”は現実には存在し得ない。

 

あんな殺人スキルを持った男が実在したら、とんでもない凶悪犯罪者になるだろう。

 

だから、彼はフィクションの中で「必要悪」として殺人を繰り広げるアンチヒーロー、またはダークヒーローなんだよね。座頭市みたいな。

 

座頭市は博打好きで好色でもあって、そこが人間臭くてあのキャラクターの魅力でもあったけど、ロバート・マッコールはなき妻以外女っ気は皆無だし禁欲的で生活感がなく、それが演じるデンゼル・ワシントンのイメージとも重なって、彼をどこか人間離れした聖性を帯びた存在に見せている。

 

こういうタイプの映画で、“ヒーロー”である主人公が女性の登場人物と一切性的な関係を持たず恋愛にも発展しない、というのは、ジャンルムーヴィーとしてのお約束を意図的に外してるわけで、人によってはそこに物足りなさを感じるかもしれませんが、個人的には好感が持てる。

 

前2作には売春をさせられている少女が出てきたり、男たちに性暴力を受けた女性が出てきたから、主人公がそういう性的な部分から完全に切り離されている、というのは安心感がある。

 

悪人には凄惨な暴力を振るうマッコールが、それを女性や弱い立場にある者に向けることはない、ということが強調されている。

 

哀しいことに、これが「フィクション」なのはそこの部分も大きいと思いますが。現実の世界ではそうではないから。ロバート・マッコールは映画の中だけに存在するヒーローだ。

 

そんなこといちいち言うまでもないんだけど、でもまもなく公開される『オペレーション・フォーチュン』の主演を務めるジェイソン・ステイサムがいつも披露しているような超絶アクションと比べると、このシリーズでのデンゼル・ワシントンの“技”は時間的に一瞬でキマる、というのもあるし、派手さを極力なくした分、ヴァイオレンス度を高めてあって、それが妙なリアリティを醸し出しているんですね。

 

アクションじゃなくて、あくまでもヴァイオレンス。

 

映画の中だけに存在できるキャラクターではあるけれど、でもデンゼル・ワシントンの物腰、表情や口調など、直接的な暴力シーン以外の場面で観客を見入らせる力があるから、いないけど、いたらいいな、とちょっとだけ思わせてくれる。

 

それから、今回の上映時間は109分で、1作目は132分、2作目は121分と回を重ねるたびに短くなってきているのもいいんですね。

 

最近のあちらのアクション物はやたらと上映時間が長くなってきていて、でも僕はこういうジャンルってそれこそ90分台から100分ぐらいの尺がちょうど観やすくていいと思うし、長くても2時間以内に収めてほしいんです。

 

だから2時間足らずの上映時間の中に必要な要素がちゃんと入っているこの映画は、僕は結構好きだなぁ。面白かった。

 

マッコールが知り合った町の人々の描写がもっとあってもよかった気もするけど、あまりくどくどと描かず最小限にまとめてるのもいい。

 

まぁ、1作目が良過ぎたんで、それを超えるのは難しいんだけど、前作が身内同士の闘いだったのが、今回はまた町のならず者たちを退治する話に戻ってて、町の人々を脅して調子に乗ってたマフィアがマッコールさんに壊滅させられるさまには心から「ざまぁ!!」と叫びたくなる快感があった。

 

 

 

今回、マッコールは敵が酷いことをやったからやり返すのではなくて、相手がまだ決定的な暴力を振るう前に(車椅子の老人を殺したり魚屋に放火して全焼させたり、充分悪事は働いているが)先回りして彼ら以上の暴力で組織を殲滅する。

 

マッコールにツボを押されてお仕置きされたマルコは、「明日、あいつを殺す」と仲間たちに告げるが、夜が明ける前にマッコールに皆殺しにされる。

 

その殺されっぷりがあまりにあっけなさ過ぎて、ちょっと笑いそうになってしまった。マッコールさん、殺り過ぎ、って(;^_^A

 

マルコの兄でカモッラを率いるヴィンセントも同様。

 

明日、町を焼き尽くす、みたいなこと言って屋敷で寝てたら、忍び込んできたマッコールさんに護衛の部下たちを全員残酷極まりない方法で惨殺された挙げ句、自分たちが儲けてきた薬物を大量に摂取させられて悶え苦しみながらこと切れる。

 

ヴィンセントはその前に、自分に逆らった警察署長の片方の手首を切断して(斬り落としたその手首をワインクーラーに入れて本人に持たせてるのが…^_^;)「次はお前の首を孫に送りつける」などと言ってたのが、マッコールによって部下の首を斬り落とされる。

 

やられてる敵がだんだん気の毒になってくるほどのマッコールさんのブッチャーぶり。そう、どんな悪人よりも誰よりもこの人が一番恐ろしいのだった。

 

かつてトニー・スコット監督の『マイ・ボディガード』で共演したダコタ・ファニングと本作品で19年ぶりに再共演。おチビちゃんだったファニングは立派に成長してCIAの職員に(^o^)

 

 

 

ダコタ・ファニング演じるエマ・コリンズの職場の電話番号を知っていて、彼女にマフィアとテロ組織についての情報を伝えたマッコールの真意は。

 

一応、前作のストーリーから続いていて、エマの親が誰だったのかわかるくだりでマッコールが彼女を選んだ理由も判明する。

 

ただし、エマはCIA職員ではあっても銃を持って敵と戦ったりはしないし、終盤でヴィンセントが仕組んだ自動車の爆破に巻き込まれて、マッコールの機転ですんでのところで命拾いはするものの怪我を負って病院に運ばれたために、最後までマッコールと直接行動をともにすることはない。

 

マッコールからの情報をもとに、最終的にマフィアからテロ組織に流れていた資金源を断つことに成功する。

 

このシリーズでは、一貫してマッコールは一人きりで行動し、敵を殺す。

 

その孤高ぶりがいい。群れないヒーローが好きだ(最近、このジャンルはチーム物ばっかだから)。

 

あえて個人的な好みから意見を言うなら、今回は全体的に映像がモノトーンっぽくて色が少なく(マフィアたちもマッコールもみんな黒ずくめだし)、スタイリッシュである一方で白い壁に真っ赤な鮮血、というコントラストが感じづらくて不満だった。

 

そこは抜けるような青空で明るい陽光が射す中でやってほしかったな、と。

 

血が黒っぽく映ってて残酷みをあまり感じないんですよね。

 

もしかしたら、レイティング(年齢制限)対策とかだったんだろうか。ここで血を真っ赤に映してしまったら、18禁になっちゃうとか?

 

でも、ホラー映画などに比べればおとなしいもんじゃないですか。

 

それにしても、デンゼル・ワシントンって現在68歳なんですよね。いやぁ、お若い。そりゃ、30年前のシュッとしてた彼と比べれば年を取ったのはわかるけど。

 

そして今回、ロバート・マッコールは重傷を負って杖をついて歩いたりするので、より年老いて見える。

 

その彼が、しかし傷を癒やして回復、再び闘い始めると…というのにアガる。

 

70代のリーアム・ニーソンやスタローンがアクションやってるぐらいだから、68歳が全然若く思えちゃうのがスゲェんだけど。

 

マッコールが唯一手負いになる相手が少年、というのもね。だが、彼がやがて成長しておとなになってもあの世界から足を洗っていなければ、その時はマッコールは容赦しないだろう。

 

…お話をやたらとデカくすることなく、だけど最終作ではアメリカを出てイタリアへ。

 

ここんとこ観てるあちらのアクション物(ポアロの映画みたいにアクション以外でも)でやたらとイタリアが出てくるんだけど、ハリウッドに撮影の誘致でもしてるのかな?

 

イタリアは建物も風景も美しいから絵になるし、別にそのことに不満はありませんが、でもたまには他の国も観たいんだけど。贅沢な希望ですが。

 

あ、予告篇で流れてた「ボ~ラレェ~♪」のビールのCMみたいな曲は映画本篇でもエンドクレジットでも使われていません。よかった(^o^)

 

 

 

 

 

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