歌舞伎座裏にある喫茶アメリカンを愛してやまない、やまま氏による電子書籍「凡人の星になる」を読み終えたので(4/23には読み終えていたのですが…m(_ _)m)レビューを書きます。
書籍は、PV数を稼ぎたいブロガーが月間10万PVに到達するまでの試行錯誤(+アルファ)をまとめたエッセイという体をとっています。
書籍では一貫して「凡人であることの葛藤」がこれでもかと面白おかしく描かれています(ここらへんの面白さが、著者が多くの読者を引きつける理由だと思います)
そして、ある開き直りに達して以降は(著者は「偶然が重なった結果」と謙遜していますが)PV数が跳ね上がり、現在に至るという「昇華」を経て、書籍は閉じます。
で、この本がよくある「とあるブロガーがPV数を勝ち取るまで」という成功譚に終わっているかというと、私はそうは受け取りませんでした。
書籍に通底する隠れテーマは「幸福って一体何だろう」ということだったと思います。
・ブログを書き始めれば、読者のコメントが気になる
・同時期にスタートを切った同姓のブロガーの人気の上昇ぶりが気になる
・はてブユーザーが博識で、どんな手斧が飛んでくるかヒヤヒヤする
と、著者はさまざまな方面から飛んでくるかもしれないツッコミを恐れ、自分の内に湧く嫉妬を気にします。
それは、普段からSNSを使って生きる私たちの心の声をまるで代弁しているかのようです。
SNSで何らかの発信をしようとするときに、頭によぎる
「自分より詳しい人がいるだろうけど」「自分より優れた人がいるだろうけど」
というアレです。
インターネットやSNSがこれだけ普及する前は
中学校で一番歌が上手い人は、周りの友達から
「歌手になれるんじゃ?」と期待されたかもしれません(記憶から消えてしまいそうですが、そういう牧歌的な時代があったと思います)。
今やスマホやPC画面の向こう側にもっと上手い同世代の人がゴロゴロと転がっています。
途端に校内で一番歌が上手い同級生が相対的に、「全然凄くない人」になってしまう現象が起きてしまいます。
学校に限らず、どの分野でもそうです。
・自分よりもっと文章が面白い人がいる
・自分よりもっと効率化に長けた人がいる
・自分よりもっとプログラミングに長けた人がいる
・自分よりもっとスローライフを実践している人がいる
日本語圏だけで1億2700万人、全世界の70億人と比べたときに(全員が全員、ネットにアクセスできていないじゃないか〜というツッコミはこの際置いておいてくださいm(_ _)m)
「このことだけは誰にも負けない」という特技を、私たちが持っている可能性はほぼゼロです。
優劣で物事を考えてしまうと、わたしたちは統計的にほぼ全員(と言っても差し支えない数の人間)が「凡人」なわけです。
そこで著者は何を示唆したか。
優劣ではなく、「他者と違った視点を持っている」ということで十分じゃないか
ということを実践し、読者にそこはかとなくと提案しています。
そういう意味で、この本はブログにまつわるエッセイにとどまらず、「幸福を感じるために本質的な考え方」を示唆してくれていると思います。
「また、あの人ばっかり目立って!」とメラってしまったあなたにおすすめです。