あと少しだ。
植田は、自分に言い聞かせていた。
息が上がり、手にも足にも力が入らない。だが、ここで挫けるわけにはいかない。
決めたのだ、頂上まで行くと。てっぺんまで登って、なにをやっても駄目な人生に区切りをつけ、新しい人生を歩もうと。
ここで挫けてしまったら、もう俺は一生立ち直れない。
その思いが、疲れた手足を動かし続けている。
植田は、このために特訓をした。装備も揃えた。
ロッククライミングに慣れた者にとっては、ほんの初級程度の岩山だろうが、運動が苦手で、これまで努力をしたことのない植田にとっては、20メートルの崖は、あまりにも高すぎる。 途中で転落すれば、ほぼ間違いなく死ぬ。
半分ほど登ったところで、植田は下を見た。眼が眩みそうになった。
そうだ。俺は、いつでも下ばかり見て、上を見ようとしなかった。
もう、下を見るのはやめようと思った。
植田は、上を見続けて、じりじりと登っていった。
徐々にゴールが近づいてくる。
ついに、植田の手が頂上に掛かった。そのまま、最後の気力を振り絞って、身体を上げていった。
身体が頂上に上がると、仰向いて空を見た。
どこまでも青い空を見つめる植田の両目から、とめどもなく涙が溢れている。
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