「ああ、あの頃はよかったな」

 夫は、最近ことある度に、その言葉を口にする。

 夫が言うあの頃とはいつの時代なのか、本人にもよくわかっていないようだ。

 何度か妻が尋ねた事があるが、あの頃っていったらあの頃だよと、あいまいな返事が返ってくるだけだった。

 妻が見るところ、働いている時の夫に、楽しそうな時代はなかった。

 いつも、家では愚痴をこぼしていたほどだ。

 定年になってから、愚痴は言わなくなったが、ふとした時に、あの頃はよかったと言うようになった。

 遠い目をしているわけでもなく、なにかを懐かしんでいる顔をしているわけでもない。

 今日も、テレビを観ていて、突然その言葉を口だした。

 見ていたのは、サラリーマンが苦労しながら、一生懸命家庭を守ろうとする陳腐なドラマだ。

 また言ってるわと思った妻が、聞き流すこともせず、いい加減にしてと怒るわけでもなく、「ねえ、教えてちょうだい。あの頃って、いつの時代なの」と真剣に尋ねた。

 興味本位ではなく、夫のの身を案じてのことだ。

「サラリーマン時代さ」

 いつもははぐらかす夫が、今回は素直に答えてくれた。

「あの頃は、家に帰って愚痴が言えただろ。だけど、今は言えない。おまえは、出来過ぎた女房だからな。俺はな、愚痴を言うのが趣味だったんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

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