蝉の声が、辺り一面に鳴り響いている。
今年も暑い夏だ。
西本はハンカチで汗を拭きながら、緩い坂道をゆっくりと登ってゆく。
ここへ来るのは、何年ぶりになるのか。
妻と別れてから、一度も来たことはない。
坂道を登り切った先に、かつて妻と暮らしていた家がある。
夫婦仲は悪くなかったのに、つい間が差して、部下の女性と浮気してしまった。
いい歳をして、娘のような年齢の女性に、入れあげてしまったのだ。
西本から別れを切り出したとき、妻はあっさりと頷いてくれた。
修羅場を覚悟していた西本は拍子抜けしたものの、これで晴れて浮気相手をと一緒になれると安堵もした。
ところが、妻と別れた途端、浮気相手が行方不明になってしまった。
どれだけ探しても、未だに行方はわかっていない。
今日、西本がここへ来たのは、かつての妻が末期の癌で余命いくばくもなく、最後に会いたいと、たっての頼みを受けたからだ。
「あなたの浮気相手は、わたしが殺して埋めたわ」
妻の告白を聞いて、西本は衝撃を受けた。
「なんで、わたしがあっさり離婚に応じたと思う? あなたに、とことん孤独な苦しみを味あわせるためよ」
元妻が、ぞっとするような笑みを顔に張りつかたまま崩折れ、息を引き取った。
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