はやみねかおる * 講談社 青い鳥文庫


飛行船で世界中を飛び回り、狙った得物は必ず盗む。名探偵・夢水清志郎の好敵手として登場した怪盗クイーンが主役となっているシリーズ一作目。

普段のはやみねかおる的ミステリ要素はあまりない、さらりと読める児童文学らしい作品になっています。しかし面白かった。

はやみねさんの描くキャラクターってどこかひょうきんというか間抜けというかズレているというか、常識と微妙な齟齬を持っていて、それが本当に上手いこと描写されているのですね。クイーンとジョーカーのやりとりとか見ていると微笑ましい反面うまいなぁと思うのでした。当たり前なんですけど、子ども(読者)に対する配慮がしっかりしているなぁと。ジョーカーのいう「東洋の神秘」なんかまさしくそうですもんね。

まぁ、言ってしまえば、シリーズ一作目で猫の蚤取りしながら登場した怪盗なんて見たことねぇ、ということになるんでしょうけれど。しかしそこが良い。

清志郎さんのシリーズでお馴染みのセ・シーマの伊藤さんや上越警部、岩清水刑事(この人は本当においしいとおもう…)も出てますよ。


はやみね かおる, K2商会
怪盗クイーンはサーカスがお好き

打海文三 * 中央公論新社


本当はSFファンタジーっぽいなぁと思うのですが、「恐怖譚」と記されているのと、何より作品を知ったのがミステリブックナビだったのでカテゴリはこちらに。

はじめて一人でコンサートへ行った帰り。人身事故を目撃したその瞬間から、微妙に、けれど確実に世界はズレはじめた。

ターニングポイントははっきりしているのに、元の世界に戻れないもどかしさ。主役が子どもという点でも、藤野千夜の「ルート225 」を思い出します。曖昧だけど確固とした「答え」を示した、大人向けの「ルート225」、という印象。

私はこの作品、あまり恐怖譚として楽しむことが出来なかったのですが(背筋を走る怖さはなかったもので…)、十二歳の少年に与えられる試練としてはあまりに酷なもの。可能性であって回答ではないにせよ、知らぬ世界の中で少年の見つけ出した、これは一種の哲学を示した物語なのかもしれない。


打海 文三
ぼくが愛したゴウスト

坂木司 * 東京創元社


ひきこもり探偵シリーズ三作目。

今まで連作短編の形式をとっていたのが反転、今回は一冊一本の話になっています。

鳥井と坂木の関係、過去、未来。そこにあるのはいじめであったり、些細な常識の相違であったり、人間関係に対する姿勢の多く描かれてきたシリーズの中でも突出して『相手と自分』を取り上げた内容になっています。向き合うこと、話し合うこと、分かち合うこと、互いに必要な想像力と労わり、努力。

鳥井と坂木の話は、これで終了になるようです。少し寂しいなぁと思いつつ、とても晴やかな気持ちで本を閉じる事の出来る一冊でした。


坂木 司
動物園の鳥

金城一紀 * 角川書店


ゾンビーズシリーズ一作目。

彼らが『ゾンビ』と呼ばれる理由は、『偏差値が脳死と判断される数値である』ことと、『殺しても死にそうにない』から。つまり馬鹿なのだ。この作品を語る上で絶対外せないのが「ギョウザ大好き!」なあたり、本当馬鹿だと思う。

しかしこの馬鹿たちが実に良いのです。応援したくなる、一緒に走り回りたくなる、格好良い。

まさに青春を名乗るに相応しい疾走感でした。


金城 一紀
レヴォリューション No.3

日日日 * 新風社


「ちーちゃんこと歌島千草は僕の家のごくごく近所に住んでいる」

幽霊好きの幼馴染・ちーちゃんに振り回されながら過ごす「僕」の平穏な日常は、しかしある日を境に崩れ始めた。けっこう話題にもなった天才高校生作家デビュー作。

もっと青春群像系のライトノベルかと思っていましたがそうでもなく。しかし文学的と評するには少々青さの目立つ、そんな話。

確かにすごく上手かったです。才能だと思う。拍手喝采する出来だとは言いませんが(個人的には、乙一の「夏と花火と私の死体」の方がインパクトは大きかったと)さらりと読めるのに薄くない文章はとても好印象でした。間の埋め方が上手いんだなぁ。

物語自体も、あのラストだけで私は満足です。ぞくぞく来た。

唯一文句をつけるなら、あのくどくどと長いあとがきなのですが…。まだ18歳、今後を期待したい作家だと思います。


日日日
ちーちゃんは悠久の向こう

あさのあつこ * 講談社 青い鳥文庫


シリーズ第五弾。

毎回置いてけぼりをくらって事件に参加できない凛兄ちゃんが今回はフル出演。翠のぶりっ子もフルパワーです。何かもう、巻を追うごとに翠が可愛くなっている気がしてならない…。蘭も可愛いけど、私は断然翠派です。

「すてき」連呼の麗香さんがもう少し活躍してくれれば面白かったのになぁ。また出てくるのかしら、彼女。良いキャラしてます。


あさの あつこ, 塚越 文雄
髑髏は知っていた―テレパシー少女「蘭」事件ノート〈5〉

坂木司 * 東京創元社


ひきこもり探偵シリーズ二冊目。相変わらずの共依存っぷりですふたりとも…。

前回の方々は勿論、新たな登場人物も増え、ついでに一話ごとのボリュームも増して中編集的作品になっています。前作から読まないと分かりにくいかも。

小さく不可解な謎の数々は、前回同様社会問題的でありながらどこか微笑ましい。坂木の性格がそうさせているのか……。

特に利明くんと父親の件なんて、都合よすぎというか要領悪すぎ! とも思うのに、なんだかほんわかしてしまう。格段に出番と存在感の増した栄三郎さんのお説教も効きます。

全体的に前作より面白かったのではないかと。ミステリとして楽しむのは難があるような気もしますが、優しい気持ちになれる事件が多いです。


坂木 司
仔羊の巣

重松清 * 新潮社


イジメをテーマにした短編集。

痛い。まさしくナイフのように突き刺さる、鋭利でただ冷たいだけの、けれど今は『よくある』、『些細な』、問題。

イジメを描いた作品は数多くありますが、これは作者の描写力もあって実に落ち込む。生きることに嫌気が差すし、気持ちが悪くなるし、過去の色々を思いだしては、また嫌悪感に包まれる。

それでも作品はそれぞれに希望を持たせています。だから救われるかどうかは別として、読後感は良い。みんな少しずつ、前に進んでいる。


重松 清
ナイフ

高里椎奈 * 講談社ノベルス


シリーズ三作目。相変わらず名前が覚えられません…。

何だろうなぁ、これ。なんで講談社ノベルスでやってるんだろう……ここでなければまたそれなりに違った楽しみ方が出来るような気がするのに。

純ファンタジーの中で面白いのか面白くないのかは私にはわからないのですが、講ノベでやってる作品とすればちょっと困ったな。高里さん、ちょっとキャラに気を取られすぎではないですか。

フェンの率直さ、優しさには好感です。ちょっと我儘がすぎるんじゃないかとも思うのですが、周囲の(ていうかテオの)甘さににやり。あのふたりがくっつけば面白いのになぁ(…)

今回、最初っから最後までシリアスだったので、次は少しほのぼのしてくれればいいなぁと思いつつ。


高里 椎奈
虚空の王者 フェンネル大陸 偽王伝

西尾維新 * 講談社ノベルス


戯言シリーズ8冊目にして最終章の中巻。な、何からどう言って良いのやら微妙ですが、思ったよりもごろごろ死ななくて良かったです。……負け惜しみですよ……。

開き直って言うと、新旧キャラ入り混じっての話の展開はファンとしては非常に嬉しいです。テンション上がる上がる。

絵本医師が非常に好きになり、というか、十三階段全体にひどく愛着を感じてしまいました。かわいいじゃないかあいつら…狐さんも…!

そいで裏表紙のあの子がとてもとても愛しくて……。《ぼく》もクビシメの頃とはもうあれ別人ですよね。以前は本気で蹴飛ばしてやりたいと思ってたんですけど、気付けばどんどん愛しい主人公になってる。

そしてやっぱり、玖渚友が好きです。

最終巻、いつ出るのかしりませんけれど、最後までなるたけ穏やかに見守りたいと思います。

……しかしもう一切ミステリしないつもりなのだろうか、西尾さん…。


西尾 維新
ネコソギラジカル (中) 赤き征裁VS.橙なる種