打海文三 * 中央公論新社


本当はSFファンタジーっぽいなぁと思うのですが、「恐怖譚」と記されているのと、何より作品を知ったのがミステリブックナビだったのでカテゴリはこちらに。

はじめて一人でコンサートへ行った帰り。人身事故を目撃したその瞬間から、微妙に、けれど確実に世界はズレはじめた。

ターニングポイントははっきりしているのに、元の世界に戻れないもどかしさ。主役が子どもという点でも、藤野千夜の「ルート225 」を思い出します。曖昧だけど確固とした「答え」を示した、大人向けの「ルート225」、という印象。

私はこの作品、あまり恐怖譚として楽しむことが出来なかったのですが(背筋を走る怖さはなかったもので…)、十二歳の少年に与えられる試練としてはあまりに酷なもの。可能性であって回答ではないにせよ、知らぬ世界の中で少年の見つけ出した、これは一種の哲学を示した物語なのかもしれない。


打海 文三
ぼくが愛したゴウスト