【古事記】第十四回 天の安の河の誓約 | 真の国益を実現するブログ

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※岩波文庫「古事記」を参考に書いています。


前回は「【古事記】第十三回 須佐之男命の昇天」でした。

●天の安の河の誓約

□原文

故爾各中置天安河而、宇氣布時、天照大御神、先乞度建速須佐之男命所佩十拳劍、打折三段而、奴那登母母由良爾、【此八字以音。下效此】振滌天之眞名井而、佐賀美迩迦美而、【自佐下六字以音。下效此】於吹棄氣吹之狹霧所成神御名、多紀理毘賣命。【此神名以音】亦御名謂奧津嶋比賣命、次市寸嶋(上)比賣命。亦御名、謂狹依毘賣命。次多岐都比賣命。【三柱。此神名以音】速須佐之男命、乞度天照大御神所纏左御美豆良、八尺勾聰之五百津之美須麻流珠而、奴那登母母由良爾、振滌天之眞名井而、佐賀美迩迦美而、於吹棄氣吹之狹霧所成神御名、正勝吾勝勝速日天之忍穗耳命。亦乞度所纏右御美豆良之珠而。佐賀美迩迦美而。於吹棄氣吹之狹霧所成神御名、天之菩卑能命。【自菩下三字以音】亦乞度所纏御鬘之珠而、佐賀美迩迦美而、於吹棄氣吹之狹霧所成神御名、天津日子根命。又乞度所纏左御手之珠而、佐賀美迩迦美而、於吹棄氣吹之狹霧所成神御名、活津日子根命。亦乞度所纏右御手之珠而、佐賀美迩迦美而、於吹棄氣吹之狹霧所成神御名、熊野久須毘命。【自久下三字以音】并五柱。於是天照大御神、告速須佐之男命、是後所生五柱男子者、物實因我物所成。故、自吾子也。先所生之三柱女子者、物實因汝物所成。故乃汝子也。如此詔別也。

故、其先所生之神、多紀理毘賣命者、坐胸形之奧津宮。次市寸嶋比賣命者、坐胸形之中津宮。次田寸津比賣命者、坐胸形之邊津宮。此三柱神者、胸形君等之以伊都久三前大神者也。故、此後所生五柱子之中、天菩比命之子、建比良鳥命、【此出雲國造。无邪志國造、上菟上國造、下菟上國造、伊自牟國造、津嶋縣直。遠江國造等之祖也】次天津日子根命者。【凡川内國造、額田部湯坐連、<茨>木國造、倭田中直、山代國造、馬來田國造、道尻岐閇國造、周芳國造、倭淹知造、高市縣主、蒲生稻寸、三技部造等之祖也】


◆訓み下し文


故(かれ)爾(ここ)に各天安河(あめのやすかは)を中に置きて宇気布(うけふ)時に、天照大御神、先づ建速須佐之男命の佩(は)ける十拳剣(とつかのつるぎ)を乞ひ度(わた)して、三段(みきだ)に打ち折りて奴那登母母由良爾(ぬなとももゆらに)、天の真名井(まなゐ)に振り滌(すす)ぎて、佐賀美邇迦美(さがみにかみ)て、吹き棄つる気吹(いぶき)の狭霧(さぎり)に成れる神の御名は、多紀理毘売(たきりびめの)命。亦の御名は奥津嶋比売(おきつしまひめの)命と謂ふ。次に市寸嶋比売(いちきしまひめの)命。亦の御名は狭依毘売(さよりびめの)命と謂ふ。次に多岐都比売(たきつひめの)命。速須佐之男命、天照大御神の左の御美豆良(みみづら)に纏(ま)かせる八尺(やさか)の勾たまの五百津(いほつ)の美須麻流(みすまる)の珠を乞ひ度して、奴那登母母由良爾、天の真名井に振り滌ぎて、佐賀美邇迦美て、吹き棄つる気吹の狭霧に成れる神の御名は、正勝吾勝勝速日天之忍穂耳(まさかつあかつかちはやびあめのおしほみみの)命。亦右の御美豆良に纏かせる珠を乞ひ度して、佐賀美邇迦美て、吹き棄つる気吹の狭霧に成れる神の御名は、天之菩卑能(あめのほひの)命。亦御かづらに纏かせる珠を乞ひ度して、佐賀美邇迦美て、吹き棄つる気吹の狭霧に成れる神の御名は、天津日子根(あまつひこねの)命。又左の御手に纏かせる珠を乞ひ度して、佐賀美邇迦美て、吹き棄つる気吹の狭霧に成れる神の御名は、活津日子根(いくつひこねの)命。亦右の御手に纏かせる珠を乞ひ度して、佐賀美邇迦美て、吹き棄つる気吹の狭霧に成れる神の御名は、熊野久須毘(くまのくすびの)命。并(あは)せて五柱(いつはしら)なり。是(ここ)に天照大御神、速須佐之男命に告(の)りたまひけらく、「是(こ)の後に生(あ)れし五柱の男子(をのこご)は物実(ものざね)我が物に因(よ)りて成れり。故、自(おのづか)ら吾(あ)が子ぞ。先に生れし三柱の女子(をみなご)は、物実汝(いまし)が物に因りて成れり。故、乃ち汝が子ぞ。」如此(かく)詔(の)り別けたまひき。
故、其の先に生れし神、多紀理毘売命は、胸形(むなかた)の奥津宮(おきつみや)に坐(ま)す。次に市寸嶋比売命は、胸形の中津宮に坐す。次に田岐都比売命は、胸形の辺津宮(へつみや)に坐す。此の三柱の神は、胸形君等(むなかたのきみら)の以ち伊都久三前(いつくみまへ)の大神なり。故、此の後に生れし五柱の子の中に、天菩比(あめのほひの)命の子、建比良鳥(たけひらとりの)命、此は出雲国造、无邪志(むさし)国造、上菟上(かみつうなかみ)国造、下菟上国造、伊自牟(いじむ)国造、津島県直(あがたのあたへ)、遠江国造等が祖なり。次に天津日子根命は、凡川内(おふしかふち)国造、額田部湯坐連(ぬかたべのゆえのむらじ)、茨木(うばらき)国造、倭田中(やまとのたなか)直、山代国造、馬来田(うまくだ)国造、道尻岐閇(みちのしりのきへ)国造、周芳(すはう)国造、倭淹知(やまとのあむち)造、高市(たけち)県主、蒲生稲寸(かまふのいなぎ)、三枝部(さきくさべ)造等が祖なり。



 
天安河―高天原を流れる河。
 
宇気布―誓約、誓いのこと。
 
乞ひ度して―こちらから所望し、渡してもらうこと。
 
天の真名井―神聖な水をくむ井のこと。
 
佐賀美邇迦美―噛みに噛むこと。
 
吹き棄つる―吹き出すこと。
 
多紀理毘売命(奥津嶋比売命)
市寸嶋比売命(狭依毘売命)
多岐都比売命

以上三神を宗像三女神という
 
正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命―「正勝吾勝勝速」は正しく我が速く勝つことで、「日」は太陽、「忍穂」は豊かに実った稲穂、「耳」は尊称。
 
天之菩卑能命― 神名のホは「秀」に、ヒは「火」にも通じ、生命力が火のように燃えさかる他より秀でた稲穂ということになる。
 
天津日子根命―太陽の子の神。「根」は親愛の意を表す接尾語。
 
活津日子根命―活は活々と栄えるさまをあらわし、前神・天津日子根をうけて名づけられた神。。
 
熊野久須毘命―出雲国意宇郡熊野神社の祭神。

胸形の奥津宮―福岡県宗像郡沖の島。
 
胸形の中津宮―宗像郡大島。
 
胸形の辺津宮―宗像郡玄海町田島。
 
胸形君等―宗像にいた豪族。海上交通、漁撈を掌り、神功皇后の半島進出にも大功があったとされる。

无邪志―武蔵。
 
上菟上―上総国海上郡。国造、
 
下菟上国造―下総国海上郡。
 
伊自牟―上総国いじみ郡。
 
凡川内―河内国。
 
茨木―常陸国茨城郡。
 
倭田中―大和郡田中。
 
山代―山城国。
 
馬来田―上総国望多郡。
 
道尻岐閇―陸奥国磐城郡。
 
周芳―周防国。
 
倭淹知―大和国庵治。
 
高市―大和郡高市郡。
 
蒲生―近江国蒲生郡。


■現代語訳


それぞれ天安河を挟んで誓約をかわす時に、天照大御神はまず建速須佐之男命の帯びている十拳剣を請い取って、三つに打ち折り、着けている玉の音をたてながら、天の真名井で洗い浄めて、噛みに噛んで、吹出す息吹きの霧に生じた神の名は、多紀理毘売命。またの名は奥津嶋比売命という。次に市寸嶋比売命が生じた。またの名は狭依毘売命という。次に多岐都比売命が生じた。
  
 そして今度は速須佐之男命は、天照大御神の左のみづらにまとっている数多くの八尺の勾たまの連珠を請い取って、着けている玉の音をたてながら、天の真名井で洗い浄めて、噛みに噛んで、吹出す息吹きの霧に成った神の名は、正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命。右のみづらにまとった珠を請い取り、噛みに噛んで、吹出す息吹きの霧に成った神の名は、天之菩卑能命。またかづらにまとった珠を請い取り、噛みに噛んで、吹出す息吹きの霧に成った神の名は、天津日子根命。また左手にまとった珠をまとった珠を請い取り、噛みに噛んで、吹出す息吹きの霧に成った神の名は、活津日子根命。また右手にまとった珠を五柱の神である。
 
 誓約が終わると、天照大御神は速須佐之男命に「後に生まれた五柱の男の子は、私の珠によって生じたわが子です。先に生まれた三柱の女の子は、お前の剣によって生じたからお前の子です。」といって子を分けた。
 
 先に生れた神、多紀理毘売命は、胸形(むなかた。福岡県宗方郡)の奥津宮(おきつみや。沖の島)に鎮座している。次に市寸嶋比売命は、胸形の中津宮に鎮座している。次に田岐都比売命は、胸形の辺津宮に鎮座している。この三柱の神は、胸形君等が心身を浄めて祀っている住吉の大神なり。
 
 後に生れし五柱の子の中の、天菩比命の子、建比良鳥命、これは出雲国造、无邪志国造、上菟上国造、下菟上国造、伊自牟国造、津島県直、遠江国造等の祖である。次に天津日子根命は、凡川内国造、額田部湯坐連、茨木国造、倭田中直、山代国造、馬来田国造、道尻岐閇国造、周芳国造、倭淹知造、高市県主、蒲生稲寸、三枝部造等の祖である。


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