艶子の日常 終
いずれにせよ、釜本先生は、静馬青年と交合中、急激な快楽に心臓発作を起こし腹上死したということ。肝硬変と糖尿がちだったらしいし、まっ寿命ね。深く拘泥しないことにした。ダレ猫に紙袋をかぶせて遊んでいると電話が鳴った。「ヒマですか、お姉さま」佐智だった。公衆電話らしく、背後が騒々しい。「どこに居んのよ」「四条のジャズ喫茶」 そのジャズ喫茶で佐智と対した。以下筆談である。ー治ったよ、ぼくーー何が?ーーホモホモがーーじゃ、あたしがもっと治したげる。アレも見せたげるーーいらないよ、見飽きてるものー一瞬あたしは呆然とした。ヒューバート・ロウズのザシカゴテーマが大音響で撥ねまわっている。そんなに大きな音で聴くジャズじゃないのだが。ーどうなってんのよ?ーー復讐完成ーーどういうこと?ーー釜本は、実は俺の親父、春にお袋が離婚した親父さーーでも、うまい具合に死んだじゃないーそんな小説みたいな話、信じられないわって思いながらも、さらにつついてみる。ー佐智くん、何もしなかったわよねーー鈴さ! この鈴は恍惚を呼ぶ鈴なんだーー何ですって、そんなSFみたいなの信じないわーーお袋の怨念が籠ってんだよ。ホモ除けのお守りなんだ、元来ー佐智の謎解きペースにのせられつつある。ーそれにしても、巻き込まれた静馬君が可哀相ね。警察で事情聴取されてるわーーいいんだ。あいつも実は親父の隠し子さーーえっ、どういうことーー東京弁だったろ、あいつ。十年前に母一人子一人で京都へ流れたんだ。うちのお袋にいじわるされてね。つまり妾の子さ。パパー、ドウユーリメンバー、なんちゃってーーまっ、それで、あんた達、何人兄弟?ーー兄貴が二人居るよ、佐武と佐清ってのーーまっ、それじゃてっきりーーそっ、犬神家の一族さ。まだこれから事件が起こるーーいやだわ、どういうの?ーー謎だよまだ。金の鈴にミステリー。犬鈴っての、これー耳を聾するスピーカーの大音響に、馬鹿馬鹿しくもあたしは酔っていた。「艶子の日常」は、これにて完結です。次回からは、ちょっと恐い、で、少し悲しい推理小説をお送りします。凛太郎の九州行写真はまだあります。