しゃくれた顎を突き出して、またまたお母様が無駄口を叩いていらっしゃる。
「それでどうだったのよ。そのうち一人ぐらい引っ掛けたんでしょうね。今日日、おかまだって何だって、ついてるものさえついてりゃ、しがみついていかなきゃ、おまえ」
だって。人を何だと思ってるのか。もう金輪際、外での神聖な仕事の話はお母様にはしないでおこう。あたしゃ、変な趣味は持ってない。レズの女が、ホモの男とくっつきたがるような訳にゃいかないわよ。心配無用、硬いかたい、体制側の石頭を喰っちゃったから大丈夫よ。あの青臭い警官ったら、てんでプラトニックのつもりでいるのよね。みんみん(関西の極めて大衆的な中華料理のチェーン店)なんか誘いやがってバカが。大体、自分と正反対の闘争学生が好んで行く店でしょうが。政治的に無節操なのよね奴は。ほいで、いざ帰りましょうって段になると、女の誘い方も知らないで。おかげでこっちが冷や汗かいちゃった。行きつけないスナックなんかで飲んだのが間違いだったのかな。奴は会津磐梯山歌いだすし、こっちは合いの手入れるのに忙っしくて…。円山公園で、口づけ交わしただけ。もっとも、あたしはちゃんと奴のズボンのチャックから手を入れて品定めしたけど、奴は気づいてないだろうね。ウフッ、初心な可愛い子ちゃん。
 どけ、このくそ邪魔なババタレ猫が。それどころじゃないんよね。今朝の京都新聞見て、あたしびっくりしちゃったのよ。死んでんのよ。誰がって、先生よ、釜本先生。腹上死なんだって。あたしは知らないわよ。荒れ狂う佐智を宥めすかして、早々に小学校のトイレを立ち去ったんだから。そうなの、例のトイレの中で死んでたのよね、先生。あいつ、つまり、あたしの可愛い子ちゃん(警官ね)も、またぞろ駆り出された筈よ。電話して聴いてみよっと。派出所の電話ってどうなってんだろ。ええっと、官公庁の…あったあった、これね。
「はっ、西大路四条駐在所です」
「バカタレ、派出所でしょうが、派出所」
「ああ、えん子さん。誰か思た」
「誰かもないもんよ。それにつや子ぐらいに読めないの。ほんとはよし子って読むんだけど。そんなことどうでもいい。ねっ、先生、釜本先生死んだでしょ。立ち会った?」
「うん、やらしいよな。男とやってたんやて。腹にアレこびり付かして」
「アレって何、アレって」
「ううん…つまりその…まっ、その…」
「バカタレ、田中角栄じゃないんよ、おっしゃい」
「うん、その、つまり、へんずりを…」
「汚い表現ね、精液とか何とか云えないの」

次回、最終回です。凛太郎の写真はまだまだ続きます。
$凛冽の汗