「やあ、君ぃ!」
こんなうまい偶然って、つくり話じゃないと出来やしない。にこやかに笑みを湛えて近づいてくる青年を見て、あたしは佐智の脇をつついた。
「何が三浦友和よ。ありゃ太川陽介ってタイプじゃない」(古い話ですみません)
「どっちだっていいじゃない。いずれにしても、イモ兄ちゃんタイプさ」
「まっ、何で友和さんがイモ兄ちゃんなのよ」
陽介は京都府中郡峰山の、くそ田舎産だからいいとして、友和さんのあのシティボーイ風のフィーリングをいも兄ちゃんとは。
 小生意気な佐智と諫っているうちに、青年が目の前に来て立った。目であたしの素性を佐智に聴いた。あたしの裡に残渣していた女らしさの片鱗が、あたしの体の線をとろけさせた。なよっと構えると青年に向かって軽く会釈する。カウンセラーと分かって、青年の眸が光った。豚を堵殺場へ引き立てるようにあたしの腕を把って、さっき、佐智が小便をしたブロック塀の隅っこへ引き立てた。
「先生っ!」
ときた。あたしはぶるっと震える。全く、目が寄りそうになっている。青年の、それでなくとも細い華奢な体が、棒のように見える。
「カウンセリングの先生なら、教えてください。ぼく、ぼく何故あんなことを……」
気の毒に青年は声を詰まらせている。両の拳を握りしめ、肩先からぶるぶると震えている。
「どうなすったの?」
あたしは努めて女らしく装った。彼の肩に手を置き、その唇を貪らんばかりに顔を近づけて覗き込む。
「あ、あの男の子に変なことをしてしまって…変、変って云えば、ぼくは変態なんでしょうか?」
屋外カウンセリングセンター開設か。
「そうね、おかしいのかしらね。とんがらしみたいなのをしゃぶっちゃうんだものね……あなた、ちゃんと持ってんのよね」
「えっ、何をですか」
「これ、ここよ。すっごくでっかいって聴いたわよ、あの子から」
あたしは焦っていた。青年の股間を無遠慮につついた。すぐにでも結婚にこぎつけたいぐらいだった。おどし戦法に出ようと思った。
「お母さまいらっしゃるんでしょ。お嘆きになるわよ…ねっ、あたしが直してあげてもいいのよ」
「直すって、何をですか?」
「とぼけんじゃないのよ。その、おかま趣味を直してあげようって云うのよ」
荒涼とした建設現場に、音高く、本編二回目の破裂音が響いた。あたしは頬をしばかれていた。
「そんなんじゃない。ぼ、ぼくは、ほんとに、あの男の子が好きなんだ」

 凛太郎の九州行写真も4回目になりました。
$凛冽の汗