そんな訳で、佐智はすべてゲロした。その供述のうち、あたしの乙女心をピリピリとふるわせた箇所がある。
「んで、その相手のお兄さんってのは…ハンサムなの?」
「ええ、そりゃもう、三浦友和みたいで…でも、あいつより足は長かったかな」
「ほんま、ね、ほんま、ほんで、あんた、そのお兄ちゃんの、アレも見たんでしょ。どんなんやった」
興奮すると、地の関西弁が出る。明らかに錯乱気味。
「でっかいのなんの…ぼくのお尻さけちゃったもん。今だって痛くて痛くて…」
これを聴いて、あたしの心はもう、そぞろそぞろもいいところ。
「行こ、行こ、現場へ行こ。なんでそいつが佐智ちゃんにそんなんしたんか、そのルーツを探らんとプロブレムの解決はあらへん」
恐らくあたしの眸は、うちのババタレ猫より深く、青く澄み、目脂様の粘液に潤んでいたに違いない。
 佐智を追い立てて、四条西大路近くの建設現場へと、タクシーを駆った。智恵光院横のセンターから1200円也は必要経費で落とせる。こんなしっかりしたあたしが、何故売れ残るのかしら。が、ボヤキは後回し、上手くいけば、その青年をモノに出来るかも知れないのだ。
 来てみて驚いた。タクシーが、知ったような街並を走ると思ったら、そこはあたしの家のすぐ近所のマンション建設予定地。あっちこっちに鉄材が積み上げてある。早々と入居者募集の看板が掛かってて、案内所らしいテント張りがある。が、昼飯どきで、誰も居ないらしい。嫌に白々しい光景だ。
「ここなんだ。前の通りを歩いてたら、あのブリキの破れから声掛けられてさ」
佐智は、現場に立って興奮気味らしい。ちょっと手で制して、隅の方へ走って行ったかと思うと、小便をし始めた。
「じゃ、この鉄材のとこね、佐智ちゃんが圧え込まれたのは…」
そう云って、下心があって近づいたあたしを見て、
「やだやだ、ばか、来るなよ、この野郎、ひっかけるぞおー」
ばかな佐智は、自分からかわいい、いや既に立派なのをあたしの目に晒してくれた。今しもその先っぽから勢いよくおしっこが迸っている。あたしは下司な妄想を思い巡らせた。下半身が火照る。
「ああっ」
と吐息を洩らした。
「何かっこつけてんのよ、おねえちゃま、目が寄っちゃってるよ」
また、佐智の言葉遣いが変わった。何でこいつは、カメレオンみたいに、こんなに色々と言動を豹変させられるのだろう。それにしても、目が寄るとは何ごとか。彼の国語担任は何を教えていたのか。
「バカタレ、寄るんじゃないの。こういう場合は、目が行っちゃってるとか何とか…」
そう云おうとしたあたしの肩を、佐智がむんずと掴んだ。
「あっ、お兄ちゃんが来る!」

 凛太郎の九州行写真、その4です。
$凛冽の汗