気まぐれ復活すいません。 特別編というほどでもないのですが、プロボクシングでは近年稀に見る凄まじき技術戦を目の当たりにして、自分用メモとして残しておきたかったので。

レイモンド・ムラタラ(ムラタヤ)は、10年近いプロキャリアを誇り 美しくクラシカルなコンビネーションとスラッガー要素を併せ持つ現IBF世界ライト級王者。 ハイレベルな攻防スキルを持ち、2024年11月にはテヴィン・ファーマーに勝利し北米タイトル奪取、昨年5月 ザウル・アブドゥラエフとのIBF暫定王座決定戦に勝利し暫定王者に。 その後 正規王者ロマチェンコの引退により正規王者に格上げされています。(アマ時代の情報は少ないのですが、リオ五輪前のユース時代までは しっかりとアマキャリアを積んでおり、アンダージュニア時代にはライアン・ガルシアを3度破っています。)
対する アンディ・クルス は世界選手権3連覇、東京五輪金メダリスト、言わずと知れたロマチェンコに並ぶ 近代アマチュア/オリンピックスタイルボクシングにおける最高傑作の一人。 2023年のプロ転向から5戦は全員メキシカン相手に勝利、6戦目で三代選手を破り、プロ7戦目で遂に名のある王者と初の世界タイトルマッチです。
▼ レイモンド・ムラタラ vs アンディ・クルス(DAZN版ハイライト)
▼ レイモンド・ムラタラ vs アンディ・クルス(マッチルーム版ハイライト)
両者、中間より やや近い生きたパンチが届く距離設定を選び、初回から最終回までムラタラがフロントギア、クルスがバックギア展開の中、互いに全く集中力を切らす事なく、全Rに渡りクリンチ一切なしの高速かつ高精度な攻防 … まさに至高の技術戦としか言いようのない世界タイトルマッチが繰り広げられました。
ムラタラは終始プレスを掛けつつも、クルスのリターンにはバックステップ、サイドに逃げるクルスにLステップを使いながらラテラル~サイドプレスで目の前からポジションを外さない。 クルスはプロ転向後 初めて きっちりキューバンステップを踏まなければ捌けない相手と出会い、ムラタラの厳しいプレスを捌きながらも、とてつもない速さと精度のパンチの交換を楽しんでいる印象。
中盤、ムラタラのジャブからの右フックをピボット&スリッピングアウェーで外すクルス、ならばと右ボディに標的を変えダブルジャブからヒットを奪うムラタラ、そこにクルスはワンツーリターン、しかしクルスのツーに左フックのフラップカウンターを被せるムラタラ、そのカウンターをも避け、ムラタラのショートの細かな追撃をボディワークで捌き切るクルス … これ、一瞬の攻防なんですが、こんな攻防が どのRも絶え間なく繰り返される訳です … 。
どこを切り取っても本当に一瞬たりとも目が離せない … ムラタラのプレスのストッピングにクルスはスイッチしながら上下にジャブを散らすも、ボディジャブには完璧なタイミングでショートストレートカウンターを合わせるムラタラ、しかしながらクルスはそれすらもスウェーバックで避ける!一体なんなんだこれは!? ^
後半戦に入ると、ヘッドハンティングの手応えの無さを感じたムラタラが中間でのジャブフェイントからロングのボディショット、そこから一気にゼロ距離まで詰め一瞬だけヘッドトゥヘッドのポジションを取りボディを集める。 ポイントメイクを終えると瞬時にまた中間に戻りプレス。 この展開作りはクルスのボディワークを無効化させる意味でも素晴らしかったと思います。
ただ、こうしたムラタラの攻勢の中でさえ、クルスのスイッチを交えながらの二軸左右ショートストレートがムラタラの両目付近を時折弾いていて … 最終Rまでお互いに一瞬の隙も逃さない超集中の鬩ぎ合いが続きました … 。


本っ当に近年稀に見る物凄い技術戦でした … 。
既に4度見返しているのですが、マクロ的に見ると確かにプレスとアグレッシブネスはムラタラでした。 かつスタッツ的にも有効打は互角か ややムラタラなのも間違いないのですが、ムラタラのパワーショットはボディが多く、ミクロ的な部分、スローで映像を良く見てみると顔面は悉くクルスのフィリーシェルやスリッピングアウェー、スウェーバック等のボディワークやブロックで芯を外されている事に驚きます。
見返してみて、ことヘッドハンティングだけを見ると、クルスが優勢だったようにも思えます。 試合後インタビューでも両目元を腫らしていたムラタラと比べ、クルスは全くと言って良いほど打たれた形跡のない顔。 ただ、だからと言ってクルスの勝ちかと言われれば決してそうではなく、ボディショットも含め総合的に試合を支配していたのは やはりムラタラでした。 プレスしながらも振りを小さく抑え、抑制を利かせた高速コンビネーションで試合を作っていたのもリングジェネラルシップ掌握に繋がっていたと思います。
いやはや、何度でも見たい至高の技術戦でした。 まだまだ この試合を見返して学べる事は多そうです。
〇 結果:ムラタラ 12R 2-0 判定勝利(114-114、118-110、116-112)
ちなみに私的採点は ↓ こちら

※ 更に余談ですが、 アマ時代クルスに4度負けているこの御方 の態度 … このシアトリカルさが逆に可愛らしい ^ ↓ ↓ ↓
▼ 試合観戦後のキーショーン・デービス


