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R I N G C H E C K !

打撃系格闘技の練習や試合についてのブログでしたが、
現在は海外ボクシングとムエタイの記事が中心です。
知り合い・近親者向けに書いています。











あまりにも忙し過ぎてリアルタイムで見れませんでしたので、今頃鑑賞。 もはや日本だけでなく世界中のボクシングファンにとってのレジェンド、リナレスが挑むはWBAインター王者にして、当ブログ管理人がデビュー時より追い掛けている達人カテロール。※ カテロールは実質テイラーにも勝利している と当ブログ管理人は勝手に確信しているので ^ リナレスにとっては現世界王者に挑戦するのと同等の位置付けで鑑賞 … 。





▼ ホルヘ・リナレス vs ジャック・カテロール







初回の距離合わせ段階から大きくビハインドを取ったリナレス。サウスポーのカテロールは いつも通りのロー&ワイド、 半身が鋭角でショルダーロールのし易いスタンスをキープしつつ 右触角で拍を取り、リナレスよりも逸早く距離を合わせる。





リナレスの高速リードジャブはカテロールの右パリーと右フックのフラップカウンターに悉く潰され、 逆にカテロールのアタックターンに変換されてしまう。 また、カテロールの左に右カウンターを合わせようとするも、カテロールの左ストレートは逆手ガードを捨てて上体を捩じり切り遠距離を演出するタイプのストレートなので、教科書通りのリナレスのカウンターが逆に届かない。













そうなると一軸を捨ててでも軽打の餌を撒き、中間距離におけるカテロールの堅牢なバリアをまず解除したい所だが、リナレスはフェイントこそ混ぜるものの、飽くまでも基本に忠実なスタイルを貫き、単発のアタックを仕掛けてはカテロールのカウンターとリターンを被弾。 これまでのキャリアでもサウスポーへの苦手意識を感じさせたリナレスだが、カテロールの堅牢なスタイルに対し全く打つ手がない。





当ブログ管理人の採点では5Rのカテロールの左ストレートからのアタックとリナレスの受けたダメージに対しダウン同等のポイントを与え 118-109 カテロール。 KO負け以外の試合で フルR戦って ここまでリナレスが何も出来なかった試合というのは その長いキャリアの中でも初めてかもしれない。





試合後に引退を示唆したリナレス。残念ながら本人にとってもそれを決断せざるを得ない内容だったのか … 。しかしながら、そのインタビューでの発言内容と清々しいまでの前向きな態度には 世界中のボクシングファン達が共感し、YouTubeのコメント欄だけを見てもリナレスに対して尊敬の意を表すファンのコメントばかりが溢れている。






▼ 「これが私の最後の試合だ」






改めて偉大なるレジェンドとしてのリナレスを振り返ると、ボクシング史上に残る優美さ・俊敏さ・力強さを合わせ持った本当にかっこいいボクサーだった。 リナレスのボクシングを初めて観た時の あの感動は 同じ世代のファンであれば共通意識として持っているであろう。 そして そのような所作的な美しさや高い身体能力と、ボクシングにおける勝敗というものは必ずしも一致しない、という事も教訓として見せてくれたのもリナレスだ。手痛い連敗を喫していた2012年頃「リナレスはもうダメだ」という関係者の声も少なくなかった。





しかしながら、ファン・サルガド戦、アントニオ・デマルコ戦、セルジオ・トンプソン戦での厳しい敗戦を経て、 " そこから再び立ち上がる姿を見せてくれた事 " 、それこそがホルヘ・リナレスというボクサーの 本当に素晴らしく 本当に美しい真価なのだ。





ケビン・ミッチェル、 アンソニー・クローラ、 ルーク・キャンベル、 若き強豪を次々と破っていき、あのロマチェンコからはプロ初となるダウンを奪い、 我々を再び熱狂の渦に巻き込んでくれた … リナレスこそ本物のレジェンドだ。





端正なルックスとは裏腹に秋葉原やオタク文化を愛したナードな側面も見せるが … ボクシングに対しては心の底から熱く、また帝拳ジムでは私の息子に対しても真摯かつ丁寧な助言を下さった、本当に本当に、心優しきボクサー、 ホルヘ・リナレス。 長きに渡る現役生活、 本当にお疲れ様でした。













〇 結果:カテロール 12R判定勝利 3-0( 117-111、116-112×2 )
























神童 のボクシング転向2戦目。 初戦 にも増して高い注目度 … 試合後既に3日が経っているが、天心関連だけでヤフーニュースが200件近く上がっているのには … 驚いた … 。





▼ 那須川天心 vs ルイス・グスマン







有識者(?)の方々とは真逆の意見で申し訳ないのだが、重心におけるマイナーチェンジはあれど、基本的な所作回りや手癖、カウンターのタイム感など、幼少期から見てる身としては、そんなに変わってないんだよなぁ … 以前から言っている通り、キックボクシング時代からムエタイ由来の所謂キック的なスタンス、キック的なパンチ打法など、そうした要素は ほぼゼロだったので。





幼少期からフットワークをはじめパンチに関してもキックボクシングトレーナーではなくボクシング専門の(それも超凄腕の)トレーナーに叩き込まれていたのだから、天心に限っては「キックボクサーのパンチの癖が抜けない」とか「キックボクシングのスタイルのままボクシングに来ている」とか、そういう話は的外れも良い所。青木真也の話 に至っては笑ってしまった。こんな凄まじいタイム感のスリップカウンターを打つキックボクサーなんか天心以外に一人も居ないでしょうが … ^ ( 但し、天心がボクシングの試合に於いても パンチ技術に関しては元々ボクシング寄りだったキック時代から然程変化してない、という観点/視点から見ると、当ブログ管理人と同意見とも取れる。)





" キックのままボクシングをしている " のは天心よりも寧ろ武居由樹選手の方である。「倒せるか倒せないか論」の所為で滅茶苦茶になってしまっているが、ボクサーとしての所作回りの精度が高いのは間違いなく天心の方で、相変わらずスリップカウンターの正確さ、またウィービング&アングルチェンジ、ショルダーロール、スリッピングアウェー、スレスレで被弾を防ぐディフェンスワークの多彩さ流麗さ … トップアマ上がりでもなく、プロ2戦目でメキシコ王者を相手に こういったベクトルでの所作回りを魅せた日本人ボクサーを自分は見た事がない。





個人的に想うのは、本人も陣営も世間の意見に流されず、資質に合ったボクシングを志して欲しい、という事。当ブログ管理人は今回の試合も、無理に倒しに行かずに通常の精度でカウンターによるポイントピックに集中していたら、倒しに行く以上のKOチャンスが逆に生まれていたと思っている。ヤフコメ民一人一人に教えてあげたい … ボクシングの世界/歴史上には時代時代に様々なスタイルのスター/レジェンドがいて … パーネル・ウィテカー、フロイド・メイウェザーJr. 、ジョージ・ベントン、ニコリノ・ローチェ、こういったディフェンス/カウンターマスターのレジェンド達を志す日本人選手が居たって全然良い事だと思うのだが … 誰も彼もが井上尚弥選手のようなKOパンチャーを目指すような世界線など全く面白味がない。





( ※ ちなみに 「 天心は ロマチェンコ のスタイルで行くべき ! 」 という意見も散見するのだが … 天心とロマチェンコのボクシングスタイルには余りにも乖離がありすぎて … この声に関してはナンセンスと言わざるを得ない。)





天心の テッテ的 に被弾を嫌う性格/性質は、リング上の所作回りにしっかりと出てしまっているし、それは何も悪い事ではない。 例え1%でも負ける要素は本能的に避ける … この高過ぎる危機管理能力 … これは勝者としての必須条件の一つでもあるし、 やはり資質的にはアウトボクサー気質なのだと思う。加えて初回に見せたようなカウンターショットに関しては既に倒せるだけの切れ味があり、錬磨次第でキック時代と同じくKOに繋げる事の出来る大きな武器となる筈なのだ。





しかしながら そうではなく、飽く迄も強引に詰めてのKOを狙うスタイルで行くのであれば、ディフェンス回りの所作をある程度の幅まで絞って、クロスレンジで相手を削る為のブロック&リターンなど被弾覚悟のシンプルな近接攻防シーンをもっともっと増やしていかなければならない … それこそメインの拳四朗選手は一つ一つの攻防の細やかな所作精度や被弾量は天心より下回るが、長尺Rを通してみれば、被弾しつつも確実に後半には削り取って倒す為の布石を 前半からシンプルなパンチとコンビネーションをもって しっかりと撒いている。





( ※ 今回 試合2週間前に三迫ジムにて加藤トレーナー、拳四朗選手と交流する機会が偶々あったが、距離感がバグっている期間を経て、条件マス的に距離感を正しく設定する練習と上下に的確な強打を捻じ込む練習を並行して行なっていた。 加藤トレーナーと拳四朗選手のミット打ちは本当に凄まじかった。)





話を天心に戻すと … 元来持っている資質を伸ばす方向か、持っていない部分を新たに身に付けていく方向か … いずれにせよボクオタも格闘技ファンも一般人もアンチも、天心の一挙手一投足には注目せざるを得ないのだ … さてさて、引き続き天心のボクシング世界王座奪取に大いに期待していきたいと思います。





■ キック出身のボクシング世界王者 → ポベトキン、 クリチコ、 トロヤノフスキー、 リピネッツ、 アルジェリ、 ディリアン・ホワイト、 マヌエル・チャー etc …

■ ムエタイ出身のボクシング世界王者 → センサック、 サーマート、 カオサイ、 ソムジット、 ポンサワン、 ウィラポン、 シリモンコン、 ワンヘン、 ノックアウト、 アムナット、 ヨックタイ、 ヨーサナン、 タノムサク、 チャッチャイ、 サマン、 シーサケット、 ソット、 テーパリット、 デンカオセーン、 ポンサクレック etc …













〇 結果:那須川天心 8R 判定勝利(80-70×3)
























ついに実現した世紀の一戦。 中量級ビッグマッチとしては、 レナード vs ハーンズ、 チャベス vs カマチョ、 デラホーヤ vs トリニダート、 メイウェザー vs パッキャオ に比肩するレベルの頂上対決であり、 全世界のボクシングファンが待ち望んでいた まさに究極の一戦です。




▼ エロール・スペンス Jr. vs テレンス・クロフォード







初回から最後まで一貫してクロフォードが選んだスタンスはサウスポー。 スペンスの左ストレートは所作的に被せの要素 ( クロスやスリップカウンターのイメージ ) が少なく、 右ジャブへのカウンターリスクも少ない。 尚且つスペンス自体がクリス・ヴァン・ヘーデン戦以降、 約8年間サウスポーとの試合がなく、 右ジャブを起点としたボクサーファイターへの試合での対応力が万全なはずもなく … クロフォードがサウスポーを選ぶのも当然の選択。





実際、 スペンスはクロフォードの右ジャブを起点としたテクニカルなサウスポースタイルに全く対応出来ず、 強引なアタックと強振もクロフォードの冷静なディフェンスワークの前では空転し、 初回以降の試合展開は一方的な物となりました。 スペンス最初のダウンとなったクロフォードの左ストレートカウンターからの右ジャブの逆ワンツー、 2度目のダウンは見えない右ショートアッパー、 3度目は右フックダブル、 4度目は右フックのフラップカウンター。 これらのカウンターの所作/動作的な部分はここでは言及せず、 直接指導に生かそうと思います。 当ブログ管理人の採点は決定Rまでフルマークでクロフォードでした。















8年前 この記事 で書いた事が本日、 完璧に証明されました。 何よりも 「 技術が力を凌駕した 」 この事実は大きく、 自分の指導者としての立場から見ても ( 極々勝手にですが ) 喜ばしい結果となりました。





フレームとフィジカルに優れたボクサーがシンプルなパンチをもって、 ジャブ、 ワンツー、 フックアッパーの基本コンビネーションのみで連戦連勝をしていく … 勿論それも素晴らしいボクシングの一つの形ではあると思うのですが、 漸進的/建設的であるかと問われれば、 否と答える他ありません。





基礎/基本の練習を日々繰り返し鍛錬/錬磨していく事なんて、 トップレベルの選手にとっては当たり前の事です。 その下敷きの上に新たな技術や打法を上乗せしていくからこそ競技が漸進し進化していくのです。 この2点は競技の練習に於いて常に並進して行かなければならない要素なのです。





世紀のメガマッチを完璧に制しウェルター級に於いて世界4団体を統一しただけでなく、 ボクシングの世界観自体を更に押し広げてくれたクロフォードの功績は大きい。 試合後にスペンスを称え、 神への感謝を述べたクロフォード … 全世界のボクサー、 ボクシング関係者、 ボクシングファンがリスペクトすべき2階級4団体統一王者の誕生です。













◎ 結果:クロフォード 9R TKO 勝利