Pyotr Tchaikovsky "Swan Lake "(February 20, 2019) @Janachek Theatre

Odette/ Odile : Andrea Popov Smejkalova

Prince Siegfried: Maxim Chashchegorov (Guest from Munich ballet)

Rotbart: Ivan Popov

 

ブルノにもプラハと同じように国立劇場があり、オペラやバレエ、演劇がほぼ毎日上演されています。ホームページ上でスケジュールをチェックしていると、ちょうど名作バレエ「白鳥の湖」の上演が始まることが判明。この週なら、授業もまだ始まったばかりで時間もあるから行けるのではないかと思い、空きコマを使ってチケットを購入しに行きました。

 

ブルノ国立劇場のチケットオフィスは、ちょうどMahen Theater(旧劇場)とJanackevo Theater(新劇場)の間にあります。公演のポスター等が貼ってあるので、場所も分かりやすいと思います。

念のため、希望の公演日と演目をチェコ語でメモして、カウンターで渡すと残席を確認してくれました。初めてだからおすすめを教えてほしいと伝えると、「同じ値段の席なら絶対ここよ!」って2階中央4列目を勧めてくれました。「あなた学生?」と聞かれたので返事をすると、「じゃあ学生割引で50%オフだから」って伝えられました。え⁉ 今50%オフって言われた?そもそもバレエに学割ってあるの?は、半額?一瞬茫然としました。日本では、学割チケットはないことはないですが、大体一般発売で売れ残った分を多少値引きますよっていうスタンスですよね?しかも半額にはならないはず。学生でも誰でも芸術に触れることができるようにしてあるシステムは素晴らしいと思います。文化レベルの違いは、こういうところからも生まれるんだろうな~。

結果として、2階中央4列目(日本ではおそらく1万円前後であろう良席)が半額の351コルナ(1700円ほど)になりました。いや、元の値段でも十分安いんですけどね。

これに気をよくして、金曜日の公演のチケットも購入してしまいました。(笑) 今度は1階席が残っていて、おばちゃんが「値段が上がってもいいなら、1階がやっぱりおすすめよ」って言われたので即決。それでも480コルナ(2400円)。日本ではバレエのチケット1枚分に満たないであろうお値段で、2回観られるなんて幸せ~。

 

ルンルン気分で迎えた1回目。会場はこちら。やっぱりテンション上がります。

 

ホワイエの様子。開演までドレスアップしたみなさんがワインや軽食を楽しんでいました。わ~、雰囲気あるし、優雅!

開演15分前に、ホールに入ることができます。うわ、真正面の席じゃないですか!ここが1700円だなんて信じられない。

そしていよいよ開演!生のオーケストラで聴くチャイコフスキーの音楽、序曲からひきこまれます。今回は、オデット姫が悪魔に白鳥に変えられてしまうプロローグがついていました。人間のときのオデットの衣装がシンデレラみたいな真水色でちょっとびっくり。白やピンクのイメージだったので。悪魔の求婚を断ったため、悪魔が姫を白鳥に変えて、永遠に自分の支配下に置くという設定らしいです。そんな身勝手な。(笑) 白鳥にしたところで、どうせ好きにはなってくれないやん。(笑)

 

というツッコミは置いておいて1幕へ。衣装もパステルカラーを基調とした明るい舞台。どうも、今回は美術と衣装をリニューアルしての上演だそうな。振付は、オリジナルなのか、元の振付からはかなり変わっていました。マリインスキーバレエ等の一流から比べると、若干手の動きが雑だったり、ジャンプのあと、5番のポジションに綺麗に入らなかったりということはありましたが、それでもみなさんプロポーションに恵まれた人が多いです。王妃の衣装がまるでエリザベート。ここはお国柄でしょうか。

乾杯の踊りのあと、悪魔が登場します。大臣のような衣装でしたが、そういう設定なのでしょうか。パリオペラ座のヌレエフ版では、悪魔と王子の家庭教師を同一人物とするのですが、ここではよく分かりませんでした。非常にヌレエフ版チックな王子のソロがあったあと、悪魔が王子に弓を手渡し、王子は友人と湖へ。

 

1つ残念だったのは、音楽がたまに何小節分かカットされていたことでしょうか。特に有名な「白鳥の情景」のオーボエソロがカットされ、いきなり全楽器で「ジャーン、ジャジャジャジャジャーン」と始まったのにはびっくり。そこはカットしないでほしかったな~。

 

そして2幕。いよいよ主役オデットの登場です。Andrea Popov Smejkalovaはここブルノ出身のプリンシパル。本物の白鳥のような柔らかい手の動きが印象的。欲を言えば、もう少し1つ1つのポーズで止まってほしかった気がしますが、主役としてのオーラは素晴らしかったです。王子への感情も表現され、人間らしいオデットでした。

そして特筆すべきは群舞。本当に素晴らしかった!24羽の白鳥が登場した途端、一流の雰囲気に変わりました。1幕で二流とか言ってごめんなさいっていうレベル。2階席から観たためか、フォーメーションの移動が大変美しく、チュチュがふんわりしたデザインだったこともあり、まるで白鳥が湖に浮かんでいるかのようでした。まさに夢の世界。

 

休憩をはさんで第3幕。まずは民族舞踊、特にハンガリーの踊りがうまかった!さすがに近隣諸国の踊りはDNAに組み込まれているのか、足さばきや上体の使い方が非常に格好よかったです。ポーランドの踊りも、ロシアチックな振付で雰囲気が出ていました。

そしてオディ―ルが登場。先程のオデットとは180度別人に化けてきましたね~。非常にダイナミックで押しの強い黒鳥でした。たまに動きが雑に感じられることもありましたが、主役としての自信と存在感がありました。見せ場の32回転は、前半にダブルを4回入れてきて、一度踵が落ちかけたものの、見事に立て直し、最後はしっかりダブルで締めてきたのには、プリンシパルの意地を感じました。

すっかり騙された王子は、オディ―ルに愛を誓うのですが、そこからのオディ―ルの嘲笑い方がすごかったです。花束を投げつけた挙句、王子の頬をひっぱたいて退場しました。ひっぱたくのは初めて観たかも。後を追う王子がやけくそに見えたのは気のせいでしょうか?(笑)

 

続けて4幕。幕開けの群舞が美しかった!スモークがたかれた中、白鳥たちが円になってポーズをとる姿はまさに夢の世界でした。王子があとを追ってきた後は、さながらブルメイステル版のように白鳥たちが退場する中、ひとり残ったオデットと王子のパドドゥ。ここは2人の絶望と愛が感じられ。ドラマチックでした。

ここからラストになるのですが…衝撃的でした。悪魔が2人を引き離そうとする中、王子は悪魔に翻弄されます。まさにオデットが引き離されるかと思った矢先、オデットが王子をかばい、悪魔の力が弱まったところで、オデットは退場。王子が悪魔を倒してハッピーエンド!と思ったのですが。そして、オデットは現在人間の衣装に早着替え中と思い込んでいたのですが!なんと、次に登場したオデットは白鳥の姿のまま去っていくではありませんか!えええ!マジで!呪いは解けなかったの!王子の間違いは取り返しがつかなかったパターンね…。衝撃的でした。終曲も通常より悲しげな演奏で、観客もしばし茫然。(地元の人たち、この結末見慣れてるんじゃないんでしょうか?)まあ、解釈としてはありなんだろうけど、なんだかショック…。

 

気を取り直してカーテンコール写真。

 

予想よりもはるかにハイレベルな舞台を堪能できて、幸せでした。下手したら、最近迷走気味なロイヤルバレエなんかより断然綺麗なのではないでしょうか?(ロイヤルファンに怒られそうですが…。)チャイコフスキーの曲が頭を巡る中、夢心地で帰宅したのでした。2回目も楽しみです!

 

 
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