【続編】なぜ「紛い物」の成功が溢れるのか?マズローの欲求5段階から見る町工場の現在地
前回はリーマンショック以降の技術や財務が伴わないまま
「社会的評価」
だけが先行する中小製造業が増えているとお話ししました。
では、なぜ彼らは本質的な「技術」や「財務」を差し置いて、
露出やストーリー作りに走るのでしょうか?
(この露出ではありません / このポーズは本文とは無関係です)
この現象を、心理学者アブラハム・マズローの「欲求5段階説」に当てはめると、
その歪な構造が浮き彫りになります。

1. 飛ばされた「安全の欲求」:財務という土台の欠如
マズローの法則では、ピラミッドの下から順に欲求を満たしていくのが自然な流れです。
第1段階:生理的欲求(企業で言えば、日々の操業・売上の確保)
第2段階:安全の欲求(企業で言えば、財務的成功・自己資本の蓄積)
かつての岡野工業さんや樹研工業さんは、
圧倒的な技術(自己実現)を武器に、
まずはこの「安全の欲求(財務的健全性)」を盤石なものにしていました。
土台がコンクリートでしっかりと固められていたのです。
しかし、現代の「露出先行型」企業は、
この第2段階である「財務の安全」を、
”低金利融資”や”補助金”という「外部からの補強」で誤魔化しています。
自力で立てない不安定な土台のまま、上の階層へ飛び級しようとしているのです。
土台が不安定な企業が次に手を出すのが、
第3段階「社会的欲求(帰属)」と
第4段階「承認欲求」(他者から認められたい、名声を得たい)です。
本来、製造業における「承認」とは、顧客からの
「この精度や品質は君のところにしか出せない」
というものづくり技術への評価(技術的成功)から生まれるものでした。
しかし、技術を磨くには時間がかかります。
そこで彼らは、「メディア露出」や「行政との繋がり」というショートカットを選びます。
財務(安全)がスカスカな不安を埋めるために、
手っ取り早く得られる「いいね」や「メディア掲載」という承認の麻薬に依存してしまうのです。
3. 「自己実現」という名の中身のないストーリー
最上位の「自己実現の欲求」
かつての名工たちは誰も成し遂げられなかった加工を成功させることで、
この頂点に達していました。
一方で、現代の紛い物の成功は、
「技術なき自己実現」
を演じます。
「地域を再生する」
「子供たちに夢を」
といった、耳障りの良いストーリーを掲げますが、
それを支える利益(財務)も裏付けとなる独自の工作精度(加工技術)もありません。
これは、ピラミッドの頂上だけをアドバルーンのように浮かせている状態です。
風が吹けば(景気動向が変われば)一気にどこかへ飛んでいってしまう危うい構造です。
【結論】私たちが目指すべき「ピラミッド」の形
私が目指す
「三拍子揃った町工場」
とはマズローのピラミッドを正攻法で積み上げることです。
まず、他社に真似できない「技術」で顧客の信頼を勝ち取る。
その対価として適正な利益を得て、盤石な「財務」を築く(安全の確保)。
その結果として、自ずと周囲から信頼され、
「社会的評価」
が後からついてくる。
この順番こそがリーマン前の成功企業が体現していた
「本物の王道」
です。
「露出が多いから成功している」
のではなく、
「成功している(中身がある)から、結果として知れ渡っている」
流行りのストーリーに逃げることなく、
まずは目の前の機械と向き合い数字を固め積み上げる。
地味で泥臭い道ですが、
それこそが「本物の成功」への唯一のルートだと信じています。
そしてこの黄金のピラミッドを一つずつ積み上げていきます。
自分も頑張ります♪
リーマンショック以降の中小製造業の「社会的成功のみが注目される」問題
かつて日本の中小製造業は、
技術力・財務力・社会的評価の三拍子揃った
「本物の成功企業」
として評価されていました。
言い換えると、
①技術的成功
②財務的成功
③社会的成功
この三つの成功です。
リーマンショック前の代表例としては、
岡野工業さん
樹研工業さん
エーワン精密さん
といった企業があります。
これらは 上記を全て兼ね備えていた企業 です。
しかし、リーマンショック後の状況は大きく変わりました。
社会的評価ばかりが目立つ傾向が強くなっています。
技術的にもまた財務的にも大して見るべき点が無いにも関わらず、
業界に無関係な一般人にわかりやすいストーリーで人の心を掴む。
その後はマスコミや行政へのウケの良い目立つ何かを繰り返し、
社会的な舞台での露出という実績を重ねる。
人と企業が何で評価されているのかわからないうちにいつの間にか名前だけは知られる存在になる。
つまりはものづくり屋でありながら
「露出が多い」
という本業とは無関係な部分で社会的評価を作り上げます。

なぜこんな風潮になったのか?
それは①金融環境の変化。
超低金利で、もともと利益率が低い企業でも延命可能になった。
そして、②メディアの価値観の変化。
「ストーリー性」や「社会的意義」のある話は注目されやすく、
財務の脆弱さは報じられない。
さらに、③構造的な現象。
発信力はあるが価格決定権が弱く利益が出ない企業。
赤字や低自己資本(債務超過から10%程度まで)でも飛び抜けた話題性で「成功企業」として露出される。

現状では、マスコミに露出する中小製造業の多くは、
財務的に見るべき点のない「紛い物」の社会的成功評価が中心です。
●財務健全性が不十分
●利益を生み出せていない
●しかしイベントや行政との繋がりや地域貢献などで社会的評価が先行
これは、企業の本来の成功基準が曖昧になっている状態です。
繰り返しますが、
本当に「成功している中小製造業」と呼べるのは次の三つを兼ね備えている企業です。
技術的成功:他社に真似できない独自技術を持つ
財務的成功:利益が安定し、自己資本も健全
社会的成功:地域や業界で高い評価を受ける
リーマン前の岡野工業さんや樹研工業さんやエーワン精密さんは、
この三拍子揃った典型例でした。
その三拍子揃った零細町工場を私は目指しています。
自分も頑張ります♪
サイバー感のあるはしごから飯盛中山へ











