Red Army's Night③ 最終夜…「中間って何?」で自己批判する | 昭和80年代クロニクル

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古き良き昭和が続いてれば現在(ブログ開始当時)80年代。昭和テイストが地味に放つサブカル、ラーメン、温泉、事件その他日々の出来事を綴るE級ジャーナルブログ。表現ミリシアの厭世エンタ-テイメント少数派主義ロスジェネ随筆集。

続き。

 

トーク内容も深くなるにつれて酒もどんどん進み3杯目くらいになった時、

「これ、他ではあまり食べられないと思うんだけど、どうぞ」

といって植垣さんがこれを持って来てくれた。

サクラエビ。

 

 

一口食べてみたら、たしかに他の店で食べるサクラエビと歯ごたえも舌触りも

違って美味い。なんだこの食感は!

いや、これはほんとうに美味かった。

 

そして、トークは続く。

 

――「ああ、上祐とは2,3回話したよ!」

 

連合赤軍とオウムは日本を騒がした2大事件の団体として比較されることが多い。

オレが、

「赤軍とオウムはなにかと比較されますけど、実は違いますよね?」

と訊くと、植垣さんは

「うん!違う違う! そりゃ、通じる部分も多少はあるけど違う」

と答え、さらにこう続けた。

「何が違うってオウムは普通の人を殺したけど、赤軍は普通の人は殺さない」

 

あさま山荘の時に射殺した民間人は警察と思われたこともあるからまあ別として、

この発言に関して疑問を持つ人もいるかもしれないが、そこは極限で生きてきた

人間ならではの考えがあるのだろうと、じっくり聞いた。

 

同じ日本史に残る事件の貴重な語り部として、組織のことをテレビなどで語れる

元オウムの上祐氏についてきいてみたら、

 

「ああ、上祐とも2,3回かなあ!あって話したりしたよ!」

との答えが返ってきた。

「トークショーとかイベントとかでですか?」と訊くと、

そうだという。

 

やはりメディアやイベント企画者はそういった‘ふたり’を対面させて語らせるのが

好きなようである。

ちなみにそのイベントでは植垣さんと同じ元赤軍の塩見孝也氏も参加していて、

けっこうアクのある発言を強くいっていたらしく、それをきいた上祐氏が、

 

「今の時代、こんな麻原彰晃みたいなこという人がいるなんて思いませんでしたよ!」」

 

と言い放ち、会場は大爆笑だったらしい。

 

 

――「あさま山荘の真実」

 

植垣さんはあさま山荘へ向かう途中、急きょ下山して買い物にゆくメンバーのひとりに

なったため、山荘にはいなかった。

だけど、当時の山荘におけるエピソードなどはやはりいろいろ聞いてしっているようだ。

 

植垣さんは教えてくれた。

 

「これは表にでてない話だけど――…………」

 

読者のみなさま申し訳ない。

これは前ふりでもなんでもなく、‘本当にここでは書けない話’なので、これだけにさせて

いただく(汗)

 

メディアがやけに警察を称賛するような報道をしていた理由がわかった。

知りたい人は是非お店に足を運んで、ご本人から聴いていただきたい(笑)

たいした話かそうでないかは人の感じ方によるだろうが、オレにとってはわざわざ静岡

まで足を運んだことによる特典的な情報だった。

 

最後のほうは赤軍の件をまじえての社会論トーク。

 

どうすれば人びとが良く暮らせる社会になるか。

どうすれば格差や貧困がなくなるか。

 

植垣さんは赤軍の行動が間違った方向へいったことを認めている。

それをふまえたうえで、

「なんでも武装すればいいってもんじゃないんだよね」

といった。

それについて、オレが

「そうですよね。武装はだめ。だからといって今の大人みたいに『しょうがない』っていって

世の中をよくすることをなにもしようとしないのもだめ。その中間くらいがいいんですよね」

と答えたら、植垣さんは間髪入れずオレにこういう質問を突きつけてきた。

 

「じゃあ、その‘中間’って何 !?」

 

……

オレは何も答えられなかった。

植垣さんのそのつっこみはまさに的確で、オレにわかっているようでわかってないことを

自覚させた。

 

そうなのだ。ではなにが中間なのか具体的にいえといわれたら言葉がでてこない。

思考停止する発言を嫌っていたオレだが、そんなオレも‘中間’という不透明でかつ

無難な答えを着地点として設定していたことに気づかされる。

 

甘い発言だった。

こんな発言、連合赤軍の会議の中でいえばそれこそ「自己批判しろ!」といわれていた

のだろうなと思った。今の時代に生きててよかった(笑)

 

教員試験に受かっただけの教師がいうよりも、極限で命を懸けて生きてきた人がいうのと

ではやはり説得力の大きさが違った。

 

あらためてだが、こんな植垣さんのお店にはたくさんの人がくる。

作家も思想家も学生も右翼も左翼も。

 

あさま山荘事件世代に若者だった人が親になり子供ができて、その子供に

「あの店にいって、植垣さんにいろいろ訊いて当時のことを勉強してこい!」

といったり、

大学教授が教え子を連れて課外授業のような感覚で来ることも多いようだ。

いってみれば、ちょっとヘヴィな「しくじり先生」といったところか。

 

やったことがいいか悪いかは別として、当時の植垣さんたち若者中心とする赤軍に

たいして、「よくあそこまで行動できましたね」という行動力を評価する学生客は多い。

その感覚はわかる。

対極に位置する右翼の鈴木邦男でさえ、若者だった赤軍メンバーを評価している。

 

若者だけではない。オレと同世代の大人だって無気力で、なんでも損得勘定でしか

計算して動かない人間は多い。

 

「ある講演にいった時だったかな。ひとりの学生が質問で『赤軍をやっててなんのメリットが

あるんですか?』っていってきて、いや~、メリットとかそういうんじゃないんだけどなって……」

 

この学生にたいするマイッタ感においては、植垣さんに完全に同調した。

連合赤軍の行動はだんだんズレて間違っていったほう結果いってしまったが、当初は

損得勘定抜きで人民のために無償で命を懸けて戦おうというものだったのだ。

 

この感覚の温度さもやはり時代のせいか。

いや、こうやってすぐ時代のせいとかいうのもまた自己批判の対象だな(-_-;)

 

そんな植垣さん、

話によると来年NHKの連合赤軍関連番組にでるらしい。(BSかもしれない)

本当はもうちょっと前に企画があったのだが、当時の某NHK会長が「そんなやつ出すな」的

なことをいって企画を‘モミ’消したという。

その後会長が代わり、「そういう企画は是非やるべきだ」と話が復活して放送の流れとなった

という裏話を聞けた。

興味ある人は是非ごらんになっていただきたい。

 

そんな話をしてる時、自分以外のお客さんが来店された。

どうやら植垣さんの大学時代の後輩?の方とかで紹介していただいた。

 

オレのことも

「こちら、東京から来ていただいた方」

と紹介してくれた。

 

 

「こんばんわ、はじめまして。このお店に来たくて仕事休んできました」

と挨拶したら、

「それはすごい!」

と驚いておられた。

 

「オレこの前、榛名山いってきたんだ!あさま山荘!」

と植垣さんがそのお客さんにいった。

 

するとお客さんが

「え、マスター、あさま山荘にたどり着けなかった人じゃん!」

と笑いながら返した。

そうなのだ。

ちょっとした運命のいたずらで、植垣さんはあの山荘にはいなかった。

一見、赤軍ジョークのように聞こえるが、内容は実話。

 

実に不思議な感覚だ。

店名に‘ふしぎな酒場’とあったのがわかるような気がした。

 

気がつくと3時間弱店にいた。

そろそろ撤収しよう。

 

(みなさんがもっとも関心あるだろう総括のことは突っ込んで聞けなかった。

申し訳ない)

 

席を立つと、植垣さんが「それもっていっていいよ」といって週刊ダイヤモンドを指さしたので

ありがたく手にとると、植垣さんの後輩のお客さんが「もらうとオルグされるよ!」と笑いながら

いったのでそれには純粋にウケた。

ちなみにオルグとは学生運動用語で「組織や集団に取り込む」ことである。

これは赤軍ジョーク(*'▽')

 

帰り際、植垣さんはエレベーターまで見送ってくれ、親子ほど年の離れたオレに深く頭を

さげてくれた。

 

その後、コンビニで氷結1本買ってホテルに戻り余韻に浸る。

 

今年1年でもっとも濃く、勉強になった夜だった気がする。

 

翌日も静岡は快晴だ。

 

 

せっかくだから、熱海に立ち寄り。

 

イカが軒先に干してあった。なんか不思議な光景だ。

 

 

温泉でも寄ろうかと思ったが荷物が多いのと、疲れていたのでそのまま普通列車で帰路へ。

 

東海道線のあとは小田急線なのだが、ちょうど路線上である相武台駅にあのクーラーボックス

殺人事件の現場となったアパートがある。

 

通り道ついでのジャーナリズムで、途中下車して歩いてその現場も見にゆこうかと思ったが

疲れがあったので断念。

 

ただ、線路沿いにありデザインもちょっと変わって目立つ建物だったので、電車内からも確認

できた。

 

以上で今回の静岡旅の記は終わり。

 

スナックバロンのトークについては、本当は録音とかしてノーカットで文字におこしたいくらいだった

けど、作業的にムリなのでスターウォーズの地上波並みに大幅編集してお届けしたことをお詫び

したい。