宮沢りえ主演映画「月」。彼女が演じているのは重度障害者施設に働く女性。その施設で働く仲間には作家志望の陽子(二階堂ふみ)とさとくん(磯村勇斗)がいて和気藹々と仕事をしている。
しかし、施設の理不尽な状況に、さとくんが納得いなくなり、暴走を始める。
「月」★★★★☆
監督は「舟を編む」の石井裕也。同じようなテーマでは長澤まさみ、松山ケンイチ共演の「ロストケア」が今年公開されている。どちらも相模原の施設で起こった事件にインスパイアされた物語。
磯村勇斗は「ロストケア」で松山ケンイチが演じた役に重なる青年。磯村は22年と23年のわずか2年間で11本の映画に出演している。「さかなのこ」「波紋」「渇水」「最後まで行く」「PLAN75」などなど、どれも主役でなくても重要な役柄で佳作揃い。毎回違う顔の磯村勇斗を見せてくれる。
この映画の主演は宮沢りえだけど、磯村は主演と同格の存在感。宮沢りえ、オダギリジョー、二階堂ふみという演技達者な俳優の中でも際立っている。
「ロストケア」を観たとき松ケンは間違いなく主演賞候補だと思ったけど、この映画での磯村も間違いなく助演賞最有力候補。
人間の価値はどこにあるのか。そもそも価値のない人間などいるのか?という問いかけは重くて、深い。
この映画で磯村のさとくんのセリフ。「(命あるものが大切っていうけど)ゴキブリ殺しても心は痛まないでしょ」。確かにボクらは、どこかで、自分に都合よく、選択、選別をしている。そして、それに疑問を持たないようにしている。そんな誰しもが抱える罪を問われた気がする。果たして、自分は?と自問しながら映画館を出た。