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// TimeLine:220717
// NOTE:トレンチを使うバイトを探してはいかがでしょうか。
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TITLE:
できればきれいな背景として。
SUBTITLE:
~ Cinematics. ~
Written by BlueCat
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220717
行きつけのバーで「バーテンダーになりませんか」と声を掛けられたことがある。
当時は家も近所にあったし、時々、手伝いに呼ばれることもあった。
けれど、僕は本能的にそれを断った。
2日ほど飲食店のフロアで働いていて、そのことをつと思い出した。
接客業について、昨今の流れを詳しく知っているわけではない。
若年層人口が減少し、一般的な庶民の文化レベルが少しずつ低下し続けている昨今にあって、まともな接客サービスがあるまともな飲食店はほとんどなくなったように思う。
だから会社などによくいる、中年/壮年の中途半端な管理職が「昔はこうだったんだよぉ」という自慢にも聞こえかねないような話をこれから書く。興味のない人は読まない方がいいだろう。
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飲食店(レストラン/カフェ/居酒屋等々を含む)のウェイタというのは、店の主役でもなければ脇役でもない。背景である。
時代はジェンダーがどうこうなどと、めんどくせえことで騒いだりするのだが、ウェイタはウェイタであり、ウェイトレスはウェイトレスである。
僕はかなり有能な上司に恵まれる傾向があり、ウェイタとしてもかなり優秀な教育を受けたように思う。
なぜといって、どの店で働いてもおよそ問題がないからだ。
むしろホスピタリティが過剰なため、「それを業務としてしないでほしい」と制止されることがあるほどだ。
テーブル番号を覚え、スタッフのドレスコードを満たしてしまえば、今の時代はフードやドリンクの名前をろくに覚えていなくてもどうにかなるシステムが出来上がっている。
手書きオーダの店は少ないし、POSジャーナル(オーダ情報が印字された感熱紙のビラ)に収まらない商品名も多くはない。
制服をもらって店に行って、テーブル番号を覚えれば、あとは何とかなる。
潰しが効くというと少々意味は違うが、接客業につけても、トップクラスの教育を受けるのは大切なことだといえる。
それならバーテンダーをしたって良さそうなものだ。どうせあなたは酒が好きだろう、と思う読者もいるかもしれない(そもそも誰も読んでいないかもしれないが「青猫様が書いたものなら何でも読んじゃうワン」というタイプのキュートなガールがまったく存在しないとも限らないので書き続ける)。
その通り、僕はお酒が好きだし、まったく知らない人よりほんの少し、お酒の知識もある。
身長が高いから指も長いし、スーツも似合うから、バーテンダーの所作ができるようになればそれだけで見栄えはするだろう。
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ちなみにバーテンダーは醜男であっても遜色なく格好良く見える職業のひとつだと思う。
立ち居振る舞い、とくに手の表情が豊かで美しければ、顔なんかどうでも良くなってしまう、ギタリストのような職業ではないだろうか。勝手なことを書いているとギタリストとバーテンダーの両方から訴えられそうな気もするが。
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言葉遣いは丁寧で、物腰も柔らかく、ゲストの機微をそれとなく察してサービスを提供できる ── どこかで「ちょっとエアコンが寒いね」と聞こえれば、呼ばれる前にそのエリアの空調を少し調整して膝掛けを持って行くくらいのことはする。
自覚できる適性もあるのにバーテンダーを断ったのは、つまるところ、僕は背景でいたいからだ。
僕の中ではどうやら接客における哲学があって「お客様が主役」というのを崩したくないのだ。
バーを始めとする酒類提供店においても同様で、お客様が主役でいてほしい ── 主役としての体裁風格資質の如何を問わず、店に足を踏み込むとき、その程度の自覚を持っていてほしい。そうでない場合が往々にしてあるものの。
バーテンダーは背景であることももちろんだが、独りの酔客に対してはお酒のお供としてお話しに付き合うこともある、そして何よりお酒(ことカクテル)を作っている最中は、主役になってしまう。
どれだけ背景に徹しようとしても、あるいは徹底して背景になれるほどの自然な所作ができるとしても、カクテルという非日常の飲み物を、バーという非日常の空間で作ってしまうとき、少なくとも最初は目立ってしまう。
たとえばカラオケで、上手すぎてBGMになってしまう人がいるが、ああいうくらい自然になれれば問題はない。
しかしカラオケボックスは日常感が満載だが、バーは ── 慣れない人には ── 非日常である(何より、ああいう場所が日常にならない、つまりは非日常として捉えていられるままの人生を送る方がいいと思うが)。
もちろんウェイタだって目立つ。
所作が綺麗で立ち居振る舞いに不快を感じさせず、普段は目立たないのに明確な存在感を発揮する ── ボトルワインや大皿料理をトレンチ(西洋丸盆)ひとつで運ぶときは、移動中の事故を防ぎ、テーブルのお客様を(少し)目立たせるため、いつもより2割くらい、目立つように振る舞う ── こともある。
トレンチさばき一つとっても、お皿をうずたかく積み重ね、身体の横、腰の位置から正面、肩の上へと、テーブル間の狭い通路を機敏に通りながら動かすバランスは見る者にとって珍しくもあり、美しくもあるだろう(「主役はイヤだ」という感覚に矛盾しているが、だいたいあれはショーマンシップでしている)
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とはいえそういう由緒正しい(つまりはおそらく時代遅れの)ウェイタ/ウェイトレスがいて、リーズナブルな飲食店というものがなくなってしまった。
僕が教育を受けた店は、都会の高級レストランなどではない。
お客様のドレスコードもないし、客単価も千円から(酔客で)3000円程度の ── 少なくともお高くはない ── 店である。
群馬という辺鄙な土地で、例によって大盛りのパスタ ── 群馬のパスタは基本的に量が大盛りなのが主流である ── を提供するような、ファミレスに近い店舗である。
一般的なスパゲティ(1人前 ── 2人前に近い量である)を800円前後で提供していたから、客層はファミリィを中心に学生も多く、アイドルタイム(ランチ終わりからディナー始まりまでの休憩時間)がないので、ティータイムに利用するマダムたちも存在した。
「正しい接客はお客様を育てる」というのが、僕の上司のポリシィだったように思う。
事実、品の悪いお客様を何度かつまみ出していたけれど、それも含めて接客である。
疫病の流行っている昨今にあっては、機械でオーダするのもやむを得ないと思うし、機械が運んでくるのも仕方ないとは思う。
それでも自分がお客様の立場のとき、どこかに必ず人がいて、その人が自分のためにサービスをしてくれているという事実を忘れてしまっている人もときにいるようだ。
そうした人たちが、ちやほやされたことがなかったためにそうなったのか、ちやほやされてばかりいてそうなったのかは分からない。
サービスを機械任せにするうちに、人間が機械になっているようで、だからそういう「人間の居ない店」に僕は行かない。
アナクロかもしれないのだが、人間にしかできないサービス(ホスピタリティ)があって、そこには(たとえば先のエアコンのような心配りには)値段が付いていないのだ。
お子様のお誕生日に、機械でオーダして機械的に運ばれるディナでお祝いするのが悪いことだとは思わない。
(大人になるまで、満足にお祝いされたことのない子供だって居るのだ)
しかし見ず知らずの誰かにまでお祝いしてもらえるような経験をする人は、もはや稀有ではないだろうか。
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僕のしたい接客というのはそういうもので、効率化が進んだ現代においてそれを提供する店も少なく、また求められてもいないのだろう。
トレンチに ── びっしりというほどでもなく ── 並べたジョッキの重さにさえ悲鳴を上げながら(昔はこうじゃなかったなぁ)と己の体幹の衰えを思い知らされる。
ビジネスである以上、効率も大事だ。
しかし節電警報でもないのに、やたらと空調や照明で節約しようとしたり、果てには食洗機の設定温度や洗剤流量、水道の使い方まで「ご指導」くださるタイプの店もあって、経営姿勢を疑う。
こと食洗機は「人間がラクをするため」の道具である。
人間がラクをすると、人間には時間ができるのだ。
下洗いをしたり、水道をこまめに締めたりするのが悪いとは言わないが、食洗機に放り込むだけで食器がきちんと洗われるようにすれば「お皿と食洗機にサービスする時間」を「お客様にサービスする時間」に変えられる。
まぁ僕は飲食店経営者ではないから偉そうなことはいえないが、人間の値段が本来はいちばん高く設定されていてしかるべきはずで、そうではない店を見るにつけ、お客様を人ではなく財布として見ているのだろうと微苦笑してしまう。
安いモノを買ってばかりいると自身を安く見積もる結果に繋がるのと同じ理屈で、結局、人のカタチをした別物が増えてしまうのではないだろうか。
せめてたまには「ちょっと特別な外食」のできる店が、もう少し増えてもいいのではないかと思う。
<在りし日の4匹。なぜお尻を合わせていたのか不明>
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