今日は朝から寒い。

いつまでも布団の中から出られないという程の寒さではないけれど、

私に恐怖心を植え付けることが出来るほどの寒さだ。


ジャマイカは常夏の島だけど年中暖かいわけではないから、

12月から2月頃にかけては、肌寒い日もある。

それでも日本の冬を過ごした事のある私にとっては、なんてことのない寒さだ。

日本の10月下旬ぐらいの気候。

小学校の頃はこれぐらいの寒さなら半袖で学校へ通っていたし、

体操服は年中半袖だった。

人によってはこれぐらいが一番過ごしやすいと思うかもしれないし、

日本に住んでいれば私もそう思うだろう。


けれどここはジャマイカ。

私は毎日水シャワーを浴びている。

給湯システムは高いうえに、取り付けたら取り付けたで電気代などもかかるから、

私の家にはない。

お金持ちの家にだけある、高嶺の花だ。

日本なら真夏でもお湯シャワーなのに、

ここではこんな寒さの中を修行僧のように水に打たれなければならない。


「早く夏にならないかなあ、もう寒くて寒くて」

実情を知らない日本の友達は、私がそう言うと笑う。

「ジャマイカに住んでるくせに何言ってんの。こっちは雪降ってるよ」

でも、彼女は雪の中水風呂に入るわけじゃない。

あったかい湯舟に浸かって、体の芯からあったまることができるのだ。


私はお湯を沸かし、あったかいコーヒーでも飲むことにした。

それが、唯一体の芯からあったまれる方法だから。

そして体あったまったところで、さっとシャワーを浴びる。

これが寒い日の入浴法だ。

いつか心臓麻痺を起こすんじゃないかとヒヤヒヤしているのだけど…

日本人がまた空港で捕まった。

スーツケースの中に大麻が入っていたからだ。

本人は大麻をスーツケースに入れているとは気づいてなかったのかもしれない。

なぜなら、見かけはただの缶詰だったから。


ジャマイカには観光客を餌にしてるピンプとかジゴロとか呼ばれる人がいる。

親しげに話しかけてきては、ただで案内してあげるなどとうまい話をもちかけてくる。

「好きだ」

「愛してる」

「結婚しよう」

なんていうのも彼らの常套句で、目的を達成するためには手段は選ばない。


彼らの目的は大きく分けて3つある。

1. 滞在期間中に最大限お金を吸い尽くす

2. 大麻を運ばせる

3. 恋愛関係になり、相手の国に呼び寄せてもらう

今回捕まった人もピンプ達といる所を目撃されていたから、2番の目的で利用されたのだろう。


「僕日本に友達がいるんだけど、このコーヒーを渡してくれないかなあ」と言われると、

見た目はただの缶に入ったコーヒーにしか見えない品物だから、みんな簡単にOKしてしまう。

いい人だったし自分に好意を持ってくれてた人だから、まさか罠に陥れるようなことはしないだろうと。

ジャマイカでは色々お世話になったし、なんて気持ちも働いて。

そして、空港の荷物検査で現実を知ることになる。


私はいつも、日本人が空港で捕まったと聞くたびに胸が痛い。

知ってて運ぼうとした人はともかく、知らない間に運び屋にされてた人は気の毒だ。

誰を見ても疑ってかかるという技術を日本人は身につけていないから、

人情に厚いところが裏目に出てしまうのだ。


ジャマイカを楽しい思い出にしたいなら、

くれぐれも、預かり物は持って帰らないように。







先週ジュアンに貸したヘアードライヤーを返してもらってない事に気づいたのは、

娘リーシャにストレートパーマのクリームをつけた後だった。

「すぐに持ってくるから」

と言ったくせに、それから何の音沙汰もない。

私は毎日ドライヤーを使うわけではないから、今日まで気づかなかった。


ジャマイカ人の女の子は小学校の高学年ぐらいになると、ストレートパーマをあてる。

リーシャも小学校5年の時からあて始めたのだけど、いつも私が即席美容師になっている。

美容院に連れて行くとお金がかかるというのもあるけれど、

美容師が素人の私と同じぐらいの技術しかもっていないからという理由の方が大きい。

パーマ液だってそのへんのスーパーに売ってる市販の物を使っているし、

はさみだって、裁断用の裁ちばさみだ。

だから、私が家にある道具を使ってやったところで、何の変わりもない。


それでも、ドライヤーがないと困る。

パーマ液を流した後に、カーラーを巻きドライヤーで乾かさなければいけないからだ。

そうしないと、ちゃんと真っ直ぐにならない。

私はカーラーを巻き終わった後、ドライヤーを取り返しに行くことにした。


「ドライヤー返して」

私が言うと、

「友達の家に忘れてきたから、明日取りに行ってくる」

と言う。

今必要なんだと言っても、その一点張り。

らちがあかないので家に帰ることにしたけど、その途中に思い出した。


そういえば去年ジュアンにおろし金を貸したのに、

取り返しに言ったらそんなもの借りてないって言われた。

ハンマー、お皿、かばん、ペンキ用の刷毛…

他にも色々と貸したのに、何も戻ってきていない。

いつも私が貸した事を忘れた頃に、次の物を借りに来るからだ。


今度からは何があっても絶対にジュアンに物は貸さない。

でもまた忘れて貸してしまうんだろうな。

日本人って、本当にお人よしだから。


家に帰ってリーシャの髪を扇風機で乾かし、その後炎天下に1時間ほど座らせておいたのだけれど、

出来上がりはドリフの雷様みたいだった。




NY からジャマイカに里帰りしてる旦那の甥っ子がうちに遊びに来た。

前回会ったときはまだ中学生だったのだけど、もう18歳になったという。

ぽっちゃりしてた昔の面影は残っているものの、歯に金の差し歯なんかしていっぱしのピンプ気取り。

NYには自分のサウンドシステムもあるらしく、今回はダブ作りもかねてやってきたという。


それにしても、どうして海外から里帰りしてくるジャマイカ人はみんな、必要以上にドレスアップしてくるのだろう。

この甥っ子にしたって、ミュージックアワードにでもノミネートされたのかって格好をしている。

家中にあるジュエリーをかき集めてきたのかキンキラキン。

スニーカーはおろしたてでシミ一つなし。

ラップのCDジャケットから飛び出してきたような服。

そこまで気合入れなくても…って私は思う。


旦那はやはりジャマイカ人で、私とは違う意見を持っているようだ。

「アメリカに住んでるのに普通のジャマイカ人みたいな格好はしてられない」という。

外国から里帰りしてきたジャマイカ人は、セレブのように振舞わないといけないらしい。

1.昔の友達にはおごったり、現金もしくはプレゼントをあげる。

2.最新流行のファッション、髪型にする。

3.家族にはドラム缶3個分ほどの服や食料をあげる。

というのが三原則のようだ。


海外に住んでる=金持ち

と勘違いしてるジャマイカ人が多いので、少しでもケチケチしようものなら、

「あいつアメリカに住んでるくせに、友達にビールも奢れないなんて最低だ」

「金もないのに何しにジャマイカに戻ってきたんだ」

などの陰口を言われる。

大変だなあ。私は日本人でよかった。


今夜甥っ子はダウンタウンでフリーダンスをやるらしい。

招待されたので私もちょこっと顔をだし、NY仕込みのレコードさばき(CDかも)を見せてもらわねば。


今日からお正月休みも終わり、すべての店が営業開始ということで町に活気がある。

道の脇にずらりと並ぶ物売りや、手押し車の行商人、街角にたむろして客を待つブラックマーケットの両替人たちも、みんな今日から営業開始だ。

そして私の大好きなキャッシュポットも、今日からまた再開された。


キャッシュポットというのは4年ぐらい前に始まった新しいギャンブルなのだけれど、誕生1年足らずでジャマイカ人の心を鷲掴みにしてしまった。

1~36の中から1つだけ好きな番号を選ぶという超簡単なルールと高い当選率、最低掛け金一口10ドル(日本円にして約20円)~というリーズナブルなところがジャマイカ人のツボにはまったのだ。

ちなみに当選すれば10ドルが260ドルになる。

はじめは昼・晩2回の抽選だったのに、あまりの人気に味をしめた中国人オーナーは、昼・夕・晩の3回の抽選にしてしまった。


私も虜になったひとりなのだけど、もう一日の全ての出来事をキャッシュポットの番号に置き換えてしまう。

なぜなら、1~36の番号にはすべて意味があるからだ。

例えば1は幽霊、歯、牛乳、氷、髪の毛、死人にキスをする…

    2は電球、お尻、小さい火、キャベツ、自転車…

といった風に。

幽霊を見たり、夢に見た人は1番を買う。

電球が切れたら2番を買う。

車の事故にあえば15番か10番。

ちょっとしたハプニングや、おもしろい出来事があると、みんなキャッシュポット虎の巻を開いて番号を調べる。


今日は初夢の番号を買うつもりだ。

縁起のいい夢としては、1富士、2鷹、3なすび。

31、22、4

初キャッシュポットの番号は、これで決まりだ。


今日はとうとう買い込んでいた食糧が尽きてしまった。

スーパーが閉店の2日分の食料さえ買っておけばいいやと思っていたのだけど、

底なしの胃袋を持つ継子2人の食欲は予想をはるかに上回り、

おまけに従兄弟や近所の子供も入り浸っていたから、

すごい速さで消費されていったのだ。

「お腹すいた、お腹すいた」

暇さえあれば口癖のように言い、おかげで私は正月の半分をキッチンで過ごした。

お正月だけじゃなくて、冬休みになってからというもの、私はほとんどキッチンに入り浸りだ。


そんな時に現れてほしいのが主婦の救世主、おせち料理。

お正月ぐらいは家事から解放されますようにってコンセプト。

粋な計らいですよね。

ジャマイカにはあいにくそんな粋なシステムはなくて、

おめでたい料理っていうのは、日持ちしないものばかり。

ココナッツミルクで炊いた日本の赤飯みたいな御飯とか、カレー味のヤギとか…

家事から解放されるには、散財して外食するしかない。

エンゲル係数がデンジャーゾーンに達しているうちの家計にとっては、かなりのダメージだ。


しょうがないから我が家御用達のケンタッキーフライドチキンに行ったのだけれど、閉店だった。

私の好きなチャイニーズの店も閉店だった。

唯一開いていたのはバーガーキングだったけど、長蛇の列。

それでも他に開いてる店はないので、1時間かけてハンバーガーを買うはめになった。


来年はジャマイカ風おせち料理を発案して、自ら救世主を作り出そう。

ハンバーガーをかじりながら、私は心に決めた。



ババババンッ

裏庭からの銃声のような音で目が覚めた。

窓を細く開けて覗いてみると、息子のキートが友達と爆竹で遊んでいる。

ニューイヤーのカウントダウンに使った爆竹がまだ残っていたのだろう。

火遊びの大好きなキートが、それを見逃すはずがない。

「キート!人がまだ寝てるのに朝から爆竹なんかで遊ばないでよ!」

私が怒鳴ってもお構いなしで、キートはさらに爆竹に火をつける。

バン、バン、バン、バンッ

また爆音が轟く。

ほんとにこいつは、私の言うことを聞いたためしがない。

仕方がないので、こんな騒音の中でものんきに寝ている旦那をたたき起こして密告する。

睡眠を中断されるのが嫌いな旦那は、爆竹にというより、くだらないことで起こされたことに腹を立て怒鳴る。

「キート!!」

その一言で、キートと友達の顔色がサッと変わり、残りの爆竹とライターを抱えて一目散に逃げていった。

してやったりと思う反面、その態度の豹変振りに余計腹が立つ。


祝日や休日、学校のない日はいつも、うちは近所の子供達の溜まり場になっている。

それは私にジャマイカの肝っ玉母さん達のような迫力がないからだとみている。

本気で怒鳴っても、私のパトワ語では恐くないのだろう。

私だってジャマイカ人に日本語で怒鳴られたとしたら、おもしろくはあっても恐くない。


今年こそは、子供達を震え上がらせるスキルを手に入れよう。

これが私の新年の抱負だ。





明けましておめでとうございます


何か新しいことに挑戦してみようと思いたち、ブログをはじめることにしました。

ジャマイカの日常生活を綴っていきますので、よろしくお願いします。