上の写真は本日の北総台地上空です。軽いうろこ雲状の雲がゆっくりと動いています。
地震の前には奇妙な雲が現れるという話があります。僕はこの説を信じたいのですが、これまで異常な雲を目撃しても地震発生にはつながっていません。
佃為成さんが書かれた「地震予知の最新科学 “サイエンス・アイ新書 ソフトバンククリエイティブ社刊”」(ISBN978-4-7973-4410-3)の《第5章 前兆現象にはどんなものが考えられるのか?174ページ異常気象現象を参照のこと》には、「もし存在するのであれば・・・」との前置きしながら以下のような理由が考えられるとしています。
以下に抜粋しましょう。
もともと前兆現象の発信源は地下にあるのですから、地下の異変とどのような関係があるのかが問題です。考えられる1つのことは深い高温水が亀裂群を通って上昇し、地表付近の岩盤を熱することがあったときです。ある地帯で大量の熱水上昇があればという条件です。
湿気を含んだ空気であれば、上昇して気温が低下する際、水蒸気の飽和が起こり、凝結し小さな水滴、すなわち雲ができるという筋書きが一応、成立ちます。
一方、気温が凝結温度まで下がっても、水滴にならない場合があります。このときは、空気中に浮遊しているイオンを種にして凝結し、雲ができます。
大量のラドンが地下からある場所に噴出するとしましょう。地下深部からやってきたラドンを含むガスは湿度が高いので、地表から飛び出すと、付近の空気に熱を供給し、ラドンガスを含む空気は上昇します。ラドンの放射線で、空気中のイオンが増加します。そのイオンを含む上昇ガスは、上空で冷却され雲を作ることになります。1995年兵庫県南部地震の前に現れた竜巻状の雲は、そのようなものかもしれません。
1993年北海道南西沖地震(M7.8)のとき、奥尻島の温泉の温度が地震の前に10℃以上も上昇しましたが、奥尻島を覆う雲もできていたことが衛星写真で確認されています(宇田進氏による)。
つまり、深い場所にある高温水が地震によるたくさんの亀裂を通過して地表へと上昇すると、地表付近の岩盤を温めます→地表付近の大気も暖められ、水蒸気化して上昇し、湿気を含んだ空気であれば凝固して雲となる→飽和上の水蒸気にイオンなどの核が空気中に浮遊。その核を種とした水滴が雲を作るということです。
この場合に、どのような形の雲となるかですが、上記の文章の中には「竜巻状の雲」「島を覆う雲」ということしか書いてありません。
地震雲についてwikipedia
は、断層型(雲と空がラインを境にくっきりと分かれるような雲)、筋状・帯状、洗濯板状(洗濯板の凹凸のように細長い雲が平行に多数並ぶもの)、肋骨状・波紋状、放射状、竜巻状・螺旋状(上記の95年の兵庫県南部地震前に現れた竜巻状の雲)、稲穂型・鞘豆型・レンズ状、朝焼けや夕焼けのときに空や雲の色、色彩やコントラストが異常なもの・・・と書いています。
日本地震学会ホームページのFAQ
の中でも地震予知や地震雲に関する質問に答えています。以下は地震雲に関する学会の答えです。
「地震研究者の間では一般に、雲と地震との関係はないと考えられている。地震の前兆としての雲に関する研究は、過去に何度か発表されたことがあるのは事実だが、雲と地震の関係が皆無であると断言はできない。過去の報告例はたまたま特異な雲の形態を見たことで、地震と特異な雲の形態を結び付けてしまうケースが多いのではないかと考えられている。その一方では地震が起きなかった場合には雲のことを忘れてしまう。雲はその場の大気の状態や付近の山岳の地形次第で、人の目には不気味な姿や謎めいた形となって、さまざまに現われる。それが地震前兆なのかどうかを疑う前に、低気圧が接近中だったり近くに存在していないか、前線はないか・・・などまず気象の面から十分に検証することが大切である」としています。