あの秀作がリメイクされたと聞いたので…2000年「リメンバー・ミー(原題:同感)」をフレッシュな若手でリメイク、オリジナルが素晴らしかったのでちょっとドキドキの…「同感 (2000年「リメンバー・ミー」のリメイク版)」

 

2022年。韓国大学社会学科学生キム・ムニは両親が渡米して不在の家で古いアマチュア無線機を見つけ出す。解説本を買い、スイッチを入れる。20数年ぶりに電気が通った機械の中では怪しい火花が走り回る…1999年。韓国大学機械工科学生キム・ヨンは、友人から17人もの女子新入生が入ると聞いて驚く。しかも首席入学も女子だと言う。まだ理系女子が珍しい時代の話だ。新入生歓迎コンパが準備され、ヨンは公衆電話から、その首席女子ソ・ハンソルにコンパ確認の電話メッセージを吹き込む。やがてハンソルから電話が入り、コンパの前にキャンパスを案内して欲しいと言われる。生徒会館の前で二人は会うが、ヨンは一瞬にしてハンソルに惚れてしまう。ユンとハンソルは様々なクラブ活動を見学して回るが、ハンソルはアマチュア無線に興味を示す。ヨンは彼女の気を引くため、足を骨折中の親友キム・ウンソンからアマチュア無線機を借りることにする。まもなく皆既日食を迎えるのだが、ムニもヨンも、この無線機を通して20数年の時を超えた不思議な縁で結ばれることをまだ知らない…

 

【1999年】韓国大学機械工学科キム・ヨンに、2005年「サッド・ムービー」8歳の頃から見てるので他人とは思えないヨ・ジング、ヨンの初恋相手で同じく機械工学科への新入生ソ・ハンソルに、「殺人鬼から逃げる夜」でヒロインの妹を演じた美形キム・ヘユン、ヨンの親友で同じく機械工学科のキム・ウンソンに、映画デビューのペ・インヒョク。【2022年】韓国大学社会学科キム・ムニに、「メタモルフォーゼ/変身」でベラボーにキュートなチョ・イヒョン、ムニが思いを寄せる先輩韓文科オ・ヨンジに、彼も映画デビューの二枚目ナ・インウ。特別主演では、両時代に登場する勤続20年を超える大学警備員に、あの名優ユ・ジェミョン、ムニの指導教授に、本作の女流監督ソ・ウニョン前作五つ星「告白」で主演美形パク・ハソン。

 

第一感は、オリジナルに比べて、今回のキャストが若い、大人の雰囲気に乏しい、というものでしたが、良く考えるとオリジナル当時のキム・ハヌル、ハ・ジウォンは共に22歳で、今回と同じか若いくらいで、昔の印象のあやふやさを深く反省しています。20世紀最後の年には「イルマーレ(原題:時越愛)」と「リメンバー・ミー(原題:同感)」という韓国タイム・ファンタジーの傑作が揃って公開されましたが、その発想の見事さは韓国映画の沼に引きずり込まれるきっかけの一つだったといってよいでしょう。そのリメイクなのでハラハラ・ドキドキだったわけですが、思いのほか優れた出来だと思います。オリジナルは1979年と2000年、本作では1999年と2022年、とほぼ20年新しい設定(余談ですが、2000年も2022年も韓国で皆既月食が観察される年です)にしていますが、基本的にはオリジナルの切ない抒情性をきちんと引き継いでいると思います。キム・ハヌルとユ・ジテの役柄をヨ・ジングとチョ・イヒョンが性別を変えて引き継いでいますが、二人とも見事な名演だと思います。物語を彩る、黄色い傘、モンマン(목만)と名付けられた亀、公衆電話ボックス内の落書き、1995年には発売されていた”プリクラ”ステッカー、などの小道具たちも見事にその威力を発揮していると思います。やはり女流監督ソ・ウニョンの腕前は確かだと再認識します。

 

やはりオリジナルの絶大な魅力の上に成り立っていることは否定できないので五つ星というわけにはいきませんが、オリジナルにきちんと敬意を払い、その20年後にストーリーを再構築した映画人の心意気が感じられる、好感度満点のリメイクだと思います。

 

楽曲については数が多いので、古い引用曲を中心に…ヨンのデート前のドキドキシーンを彩るのは、イ・ヘリン(이예린)1996年「いつも今のように(늘 지금처럼)」、デートシーンは、キム・ジョンソ(김종서)1999年「Loving You(러빙 유)」、ヨンの切ないシーンは、キム・グァンジン(김광진)2000年「手紙(편지)」。尚、エンディングはオリジナルと思われますが、これまた事務所と揉め事を抱える<今月の少女(LOONA)>メンバーのチュウがキュートに歌う「告白(고백)」。

 

また劇中使われた映画では、二人が部活巡りで見せられるのは、奇才キム・ギヨン監督1978年「殺人蝶を追う女」でナイフを振り下ろすのはナムグン・ウォンでしょう。二人がデートで観るのは、1999年の大傑作「アタック・ザ・ガス・ステーション!」でオリジナル「リメンバー・ミー」主演のユ・ジテが登場するシーンという楽屋落ちになってたりします。