つながりに割り込みますが、最近『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』を見始めその魅力を実感しつつあり、恐らく見終えて6年ぶりのドラマ感想を残すことになりそうです。配役は地味ながら印象的なバイプレーヤーが並んでいて、その中でも”春の日差し(봄날의 햇살)”とあだ名されるウ・ヨンウの同期弁護士チェ・スヨンを演じるハ・ユンギョンに注目してたりします。そこで彼女のキャリアを見ていて見つけた作品を…99分という短尺ながら虐待・DV・いじめという暗澹たる問題をソ・ウニョン女流監督らしい視点で優れて映画的にまとめ上げた社会派ドラマの傑作…「告白」

 

早朝のソウル、ソウォン(書院:ソウル南部の町)。ソウォン交番勤務のキム・ジウォン巡警(=巡査)はジョギングに励む。するとバス停のベンチに座りうなだれる女を見かける。気になったキム巡警がベンチの隣に腰掛けると、女は「あなた警察の人でしょう」と声をかけてくる。交番で見かけたんだろうと思い「困っているなら相談して」と応えるが、「毎日ジョギングしてるなら、また会えるでしょう」と女は自転車を押して行く。キム巡警がジョギングに戻ろうとして振り返ると、女の傍らには小学生くらいの女の子が寄り添い、二人して去っていく…ソウォン交番では、ニュースが誘拐事件の発生を伝えている。「国民一人当り1,000ウォンずつ払え。一週間以内に1億ウォンにならなければ、誘拐した子供を殺す」という犯行声明が届き、被害者は不明、振込先は社会福祉団体だというのだ。すると交番の電話が一斉に鳴り始める。被害者が自分の子供ではないかと心配する親からだ。こうして、キム巡警の無慈悲な一週間が始まる…

 

ハヌリ児童福祉センター社会福祉士パク・オスンに、「音痴クリニック」のオバカ演技からは想像もつかない美形パク・ハソン、ソウォン(書院)交番キム・ジウォン巡警に、『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』”春の日差し”がキュートな実力派ハ・ユンギョン、虐待の被害小学生ボラに、ほぼデビュー作の美少女子役カム・ソヒョン、パク・オスンの先輩社会福祉士ソン・ミヨンに、ホン・サンス作品常連の演技派ソ・ヨンファ、キム・ジウォン巡警の上司イ警査に、いつもは笑えるチョン・ウンピョ。

 

テーマは実に重いものです。特に虐待・DV・いじめの“連鎖”に焦点が当たっていて、エピソードとして、父親から母親そして息子へ、或いは、父親から娘そして同級生へ、また、虐待される娘から社会福祉士そして父親へ、と描かれるのは極めて苦しいものとなっています。しかもこれらのエピソードが散在するのではなく99分全体の”序・破・急”のリズムにきちんと組み込まれ大きな絵柄を描いている所が優れものです。また役者も見事。主演女優パク・ハソンとハ・ユンギョンは、共に単に正義感に駆られるだけでなく過去の呪縛から自制心を失うかも…という危うい役柄を、そしてほぼデビュー作の美少女子役カム・ソヒョンは、単に被害者だけではない二面性を、静かに演じて圧巻です。さらに、二人を叱りながらも見守る上司ソ・ヨンファとチョン・ウンピョも良い仕事をしています。

 

ジョギング、ポスター撮影、習字道具といった何気ない事柄も99分の映画時空間にきちんと取り込まれて出来上がったのは、凄まじく重苦しいものではありながら、一方では論理的に整然と組み上げられたメッセージになっているという稀有な名作だと思います。迷いなく五つ星です。

 

全くの余談ですが、今年3月3日、5年ぶりにブログを再開してから本作で200本目の感想だったりします。5年のブランクは結構大きく、この5年に録り貯めてきた作品もまだまだ残ってますし、さらにNetflix、Unextなど配信で観る方法も現れて、全く在庫の尽きる気配が見られません。五つ星にぶつかることを楽しみにボツボツ続けていこうと思ってます…