「色男 ホ・セク」の冒頭とエンディングでキュートなチョ・イヒョンの出演作から、180万人を集めたのでホラーとしては大ヒットといって良いでしょう、久しぶりに思い切り怖がってしまった、エクソシズム・ホラー…「メタモルフォーゼ/変身」

 

少女がベッドに縛り付けられているが、その形相は悪魔のそれだ。そばに立つのは神父パク・チュンスで、必死で駆魔(悪魔祓い)の祈りを唱える。やがて少女の口から黒い煙が吐き出され、駆魔が成功しかけたと見えたが、部屋の外で祈りを唱えていた母親が部屋に飛び込み、神父の祈りが中断する。その隙に少女は窓に駆け寄り飛び降りようとする。神父は必死で少女を引きずり上げようとするが、やがて力尽き、「必ずお前の家族に厄災をもたらす」と言い残し少女は落ちていく。その背後では、母親の姿がない…乗用車が、引っ越しトラックを引き連れ走っている。運転しているのは、パク・チュンス神父の兄カングで、同乗しているのは、妻ミョンジュ、長女ソヌ、次女ヒョンジュ、弟ウジョンだ。叔父パク・チュンスの駆魔が失敗し少女を殺した、との噂が広まり、職場や学校にいづらくなり引っ越しするのだ…その頃、教会ではパク・チュンス神父が畑の白菜の収穫に忙しい。神父は駆魔の失敗に責任を感じ、海外布教に出るつもりだ…引っ越しの夜、隣の家から不快な物音が聞こえてきて、カング一家はなかなか寝つけない。そして、それは恐ろしい出来事の始まりに過ぎない…

 

パク・チュンス神父に、演技派ペ・ソンウ、チュンスの兄カングに、『パリ恋』以来ずっとファンのソン・ドンイル、その妻ミョンジュに、これまた巧いチャン・ヨンナム、沈着冷静な長女ソヌに、「未成年」での演技が印象的なキム・ヘジュン、いまどきの次女ヒョンジュに、「色男 ホ・セク」でお茶目なチョ・イヒョン、弟ウジョンに、出演作あまたのベテラン子役キム・ガンフン。特別出演では、パク・チュンス神父の師匠バルタザール神父に、韓国映画界屈指の二枚目怪優ペク・ユンシク。友情出演では、隣家の謎の男に、やくざがお得意のオ・デファン。

 

何にでも変身できる悪魔が、次々と、父ソン・ドンイルとして、母チャン・ヨンナムとして、可愛い娘チョ・イヒョンとして…形相を変えて家族を襲う、という設定ですが、それがめちゃめちゃ怖いわけです。そういうホラーもありますが、どちらかといえば、ジョン・カーペンター「惑星からの物体X」を観た時を如実に思い出させます。この監督キム・ホンソンは、あわや五つ星「共謀者」完璧五つ星「技術者たち」を作ってますが、その語り口の巧さは、今回も活きているでしょう。しかも、二役をこなさなければならない役者たちが巧いので、観客はエラい疑心暗鬼の中に放りこまれるという仕掛けです。

 

監督作品としては、凝ったシナリオという感じが多少薄いので五つ星は見送りますが、身近な家族が襲ってくる、というシチュエーションをあくどく使いこなした秀作めちゃめちゃ怖いホラーだと思います。観るなら一定の覚悟が必要でしょう。