大本の七夕祭 | 瑞霊に倣いて

瑞霊に倣いて

  
  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

大国 神集祭、七夕祭といっても同じですが、七夕といいますと昔から子供の祭りのように思っていますが、そんな意味ではありません。大本でいう『七夕』は筆先に出ていますように、『旧暦の七月七日は毎年天上にて神々のご集会があったが、世がかわりて地の高天原で明治二十五年から神々のご集会遊ばすように成りたぞよ』という意味です。

 七夕というと機織りのことですが、厳と瑞、経と緯とで錦の機を織る、大本神の経綸をいうわけです。真信と愛善が本当に一致する状態で、それは夏に相応します。クズを集めてハタを織るといいますが、クズは国栖で、国魂、国々の神を集められ、神議(かんはか)られる。そこで決定された神事を、瑞霊聖師が受け取って救いの経綸を遂行されるということになります。だからその意味において、七夕祭と瑞生祭は大きな結びつきを持っていると思います。

 そういう瑞霊としての聖師を、私たちが当時なかなか認識理解できなかったわけです。本当に聖師を理解し始めたのは、蒙古から帰国されてからです。その当時、大本は大変な状況におちいって借金やら何やらで追いまくられていた。そのときに聖師さまが帰国され、私たち全部を救って下さった。そんなことがありましたが、その時点から本当の瑞生祭が始まったんじゃないかと思いますね。

 

――神集祭の最終日に聖師さま、瑞霊がご降誕になっている。そこにおのずと聖師さまのご神格、救い主としてのご使命を、歴史的な裏付けをふまえながら、より一層明確に悟らなければなりませんね。

梅田 東北の三大祭りの一つといわれる仙台の七夕祭が、観光のブームに乗ってにぎわっています。また田舎では七夕祭の美しい風物詩がみられます。私たちも幼い頃、靑、赤、黄と色とりどりの美しい色紙に各自でいろんな素朴なお願いを書き、笹の小枝につるした懐かしい思い出があります。

 

――七夕祭といえば、懐かしい思い出がよみがえってきますね。

梅田 紙に願い事や望みを書いて七夕の日にお願いするということは、いわゆる瑞霊に救いを求めるという、一つの象徴が伝統的に残ったものではないでしょうか。瑞霊の救世のお働きをそうした古い昔の民衆の伝承のなかにも見い出さねばなりません。神の真理が秘められている伝承とも言えるでしょう。

出口栄二 私もそう思います。この七夕祭は中国から伝来したといわれています。七月七日の日、女子の手先が器用になり、技芸が上手になるようにと乞う、いわゆる乞巧奠(きっこうてん)に発したといわれています。日本にはすでに奈良時代に中国の星祭りが伝来し、宮廷でも盛んに行なわれていたようで、万葉の歌にも散見されるわけです。それが広く一般化されたものと言われ、今日なお永く地方の伝習として言い伝えられ、残されてきたようです。

 とくに『機の始まり丹波の綾部』という二代さまのお歌がありますように、古くから絹織物の産地でありました。綾部という地名も『あやはとり』『くれはとり』など部民(かきべ)の言葉から起こっているようです。また、民間の伝習としても七夕祭の歴史も長く、七夕に関する伝説も多く残っています。丹波風土記には、八人の天女が山で水浴をしておったところ、たまたまそこに一人の農夫がやってきて天女の羽衣を隠したことから、その農夫と天女が夫婦になったとか、夕鶴の話と同じ様な七夕姫の伝説がたくさんあります。

徳重 真名井の方にそういう伝説が残っています。丹後大呂のAさんの家は「七夕の家」と呼ばれ、毎年七月六日には家宝として伝わる毛皮の干筒一本と矢一本、それに天女の手を引く老翁の軸物(藤原俊成画と伝える)を飾って、今も七夕祭が続けられています。ですから、稚姫君命がこの丹波に顕現されたということにも一理があって、非常な親しみを感じます。

出口栄二 開祖さまは、そういう丹波の風土的伝説もたぶん多く耳にされていたことと思います。しかし、その伝説を大本的な神のご意志にそった普遍的な宗教的創造の精神によって、大本独特の七夕祭が生まれてきたのではないでしょうか。そこが土着性を重んずる主教であり、伝承を大事にする平和的な『民衆の宗教』である証明にもなるかと思います。大本独特の経綸が民間伝承を通して、新しく教えが創出されていくわけです。

 

――七夕祭と大本神のご経綸、ご内縁というものはどのように考えるべきでしょうか。

出口栄二 七夕というと、ワシ座のアルタイル・牽牛星と、コト座のベガ・織女星が、天ノ川をへだてて一年に一度逢うというロマンチックな伝承ですが、そこには何か宗教的な、大本的な深い意味合いがあるように思います。開祖さまといえば、稚姫君命、棚機姫(七夕姫)であり、機織りの糸紡ぎにすぐれた技術を持っておられたそうです。

 一方、聖師さまは青年時代、毎日田んぼに出ては農耕に励まれ、また牛を飼われて牧畜にいそしまれたのです。まさに牽牛にあたるわけです。織姫、牽牛というのは、変性男子、変性女子であり、厳と瑞の出会いであるわけです。ここに大本独自の新しい解釈がなされ、その意義を大本的に展開しなければなりません。また七夕は大本出現を暗示する尊い伝承でもあるわけです。ですから七夕祭はすなわち大本出現を祝う祭典でもあるわけです。

大国 日は経(たて)、月は緯(よこ)とタテヨコが交差して機が織れるわけです。それが大本の棚機という機の仕組なのですね。”

 

(「おほもと」昭和52年8月号 『「万霊救済」ご誓約の証し』より)

 

(農作業中の出口王仁三郎聖師)

 

*ここには書いてありませんが、大本の七夕祭は旧暦で行なわれるため、毎年8月になります。

 

*出口ナオ開祖の御筆先に「大本は型の出るところ」とあるように、これまで皇道大本には様々な「型」が出現しました。現実の大本教団の歴史、出口王仁三郎聖師の言動、あるいは「霊界物語」の内容として、古事記にある天照大御神と須佐之男命の対立、黄泉比良坂(よもつひらさか)の戦いなどの神話の型だけでなく、龍宮の乙姫や七福神、桃太郎、花坂爺さん、猿蟹合戦など、日本の民間信仰、おとぎ話などが数多くの型、パフォーマンスとして実地に現されており、当然その中には七夕も含まれています。まるで日本人の深層意識、ユングの言う集合的無意識の中に存在するものが、丹波の大本教団で、リアルな存在となって噴き出してきたかのようです。「大本は日本の雛形」であれば、そのような現象が起こるのも当然といえば当然ですが、大本の核である「霊界物語」を拝読することによって、それら日本人の意識の深層にある集合的無意識、さらには神的な意識とコンタクトすることも可能となるかもしれません。

 

 

 

・トユケの神 (八人目の天女の正体)

 

 “昔、丹後国丹波郡の比治山の山頂に真奈井とよばれる泉があった。ある日、そこへ八人の天女が水浴をするため舞い降りた。そこに和奈佐という老夫婦があらわれて、一人の天女の羽衣を隠し、天に帰れなくなった天女を養女にして十年以上、一緒に生活した。その間、天女は自分の口で穀物を噛み砕いて唾液を交ぜて文字どおり醸(「嚙む」が語源)した、万病に効く酒をつくって老夫婦を富ませた。しかし、のちに家を追われ、竹野郡の船木の里の奈具の村に留まった。これが竹野郡の奈具社の豊宇賀能売(とようかのめ)命である。

 『止由気儀式帳』(八〇四)によれば、このトユケの神が、天照大神が伊勢の五十鈴川に鎮座してから四百八十二年後の雄略天皇二十二年(四七八)、丹波国比治真奈井原から伊勢の山田ヶ原に迎えられたのである。すなわち、雄略天皇の夢の中に天照大神が立たれて、「われは高天原にいた時、求めていた宮処に鎮まることができた。しかし、ひと所に居るのはまことに苦しい。大御食(おおみけ)を安らかに召し上がることができない。丹波国比治の真奈井からトユケの神を迎えてほしい」と告げたという。これが伊勢神宮の外宮(豊受大神宮)の始まりである。

 すなわち、豊受大神は、丹波の比治の真奈井に舞い降りた天女の一人だったのである。比較神話学によれば、こうした天女はいずれも星の精であったらしい。トユケ一人を地上に置いて天に帰ってしまった外の七人の天女たちは、とうぜん北斗七星を想起させる。そうだとすると、トユケは何に相当するのか。

 ところで、北斗七星の第六星の外側に、じつは輔星(ほせい)とよばれる小さな星がついている。和名をソヘボシというが、これを加えると八星になる。「北斗七星はこの星を入れると八個で、陰陽道ではこの星を重視し、金輪星といって信仰の対象としている」(吉野裕子著『隠された神々』)。この金輪星=ソヘボシが、八人の天女の一番下の妹のトユケだったのである。しかし、この説に従うと、トユケは北斗七星に附随する存在になってしまう。伊勢神道のように、トユケを最高神として捉えることはできなくなってしまう。

 ところが、このソヘボシは単なる輔星ではないのである。周知のように、地球の回転軸(地軸)は南北の公転面に対して約六六・五四度傾いているが、それが逆の方向に振れたとき、この輔星が未来の北極星になるらしい。未来の天帝=太一の座にトユケがすわるのである。

 つまり、トユケの大神は、釈尊の涅槃の五六億七千万年後に、兜率天からこの世に降臨するという未来仏としての、弥勒菩薩的存在だったのである。

 今日の宗教をみていると、自らはまったく意識していないけれど、紫微宮の、未来の天帝に座すトユケの降臨を願って祭っている教団が何カ所かあるような気がする。

 

(菅田正昭 『近代に復活した神々』 「別冊歴史読本 特別増刊 よみがえる異端の神々」(新人物往来社)より)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人気ブログランキング
人気ブログランキング