中条流・子孕(はら)みの灸 (不妊症の治療) | 瑞霊に倣いて

瑞霊に倣いて

  
  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

・深谷灸法 ・ 深谷伊三郎先生

 

 “……私の選んだのは中条流の取穴法であった。

 なぜこれを選んだかというと、この穴所には圧痛がある。硬結もある。そして医鑑の穴とほぼ同じだから、これを選ぶのが一番よいと思った。だから話は前にもどるが、施灸を求めてきた婦人に中条流の取穴法を施したのである。この婦人が、私の行なった中条流子孕みの灸施術第一号であったのである。

 それで、この婦人に施術したときのことは一番よく記憶に残っている。岡部先生の講演中にもあるように、古書には背部の穴が、述べられていないが、不妊症治療には中条流を取穴しても、最初は背部、ことに腰部の反応点も調べて取穴する必要がある。

 この婦人で経験したことは、腎愈大腸愈は按圧すると非常に気持ちよく感じ、次髎胞盲は飛び上がるような圧痛があった。それで、快い圧痛の穴所へ三壮、痛く感じる部位へ五壮というように半米粒大の小灸を施して、三日、一週間と継続施灸して変化を調べていると、この各経穴に何の反応もなくなって、小腸愈膀胱愈や、上髎へ移動するような変化が起こってくる。そこで反応の無くなった穴への施灸を中止して、反応の顕現した穴へ施灸をし、腰の穴で反応のある穴が無くなったところで腰部の施灸を中止して、腹部の中条流の灸穴のみに多壮で行なうようにして、二ヵ月目で月経の閉止する現象が起こった。

 この婦人は、中条流の灸を二か月施灸して懐妊したのであった。

 それから、このような方式で、幾人かの不妊症婦人に施灸して、二ヵ月から六ヵ月の範囲で懐妊する例を経験したので、この方式を詳述して灸による不妊症の治し方という本を書いたのであった。

 では中条流の灸は、百発百中施灸すれば必ず成功するかというと、そういうわけにはいかない。幾多の失敗例もあった。だが成功例に酔ってしまうと失敗例は考えなくなってしまう。だから世に問うという意気込みで、臆面もなく一書を著わしたようなわけであるが、だからといって、中条流の灸は不確実だとはいえない。相当に効果のあることは事実である。同書第三版を出したときは、それまで一生懸命に成功例の人から幼児の写真をもらい貯めたのを六十例、写真版にして巻末に附して増補版にして大いに実証することに努力したのであった。帝国鍼灸医報社の小林北洲氏は、薬屋の宣伝のようで下品だと評したが、実証するために写真をつけたことは、決して下品なことではないと思っている。戦争で紙型も焼失し、その旧著もまた焼失して手許に一部もなくなっているとき、国分先生が、その本を所持せられていると聞いて、非常に懐かしい念を禁じ得られなかった。

 ここで私のいわんとするところは、中条流の灸穴の壮数と、これを併用して腰部の穴を、反応の無くなるまで施灸する補助的方法を必要とすることである。

 このことについては、東洋医学社の故富永氏が編集していた鍼灸之治療誌第二巻五号に発表したことがあるが、同誌には戦後取り扱った治験例を発表し、失敗例も述べておいた。その失敗例はテーベ(結核菌による感染症)の病歴を持っていて、生殖腺結核にもなったことのある人の場合であった。(鍼灸之治療誌昭和二十八年創刊)

 成功しない場合、つまり中条流が効かないことは、次のようなことによって大体わかる。腹部の中条流の穴所で多壮灸をすると、初めの十壮ぐらいは熱いが、それ以上十五壮、二十壮とすえると熱さが感じられなくなって、三十壮ぐらいの壮数を平気ですえることができる。そして施灸穴下腹部に非常にこころよい暖感を生じてくるのを常とする。

 そしてこれをいきなり最初から二十壮というように多壮としないで、最初は七壮ぐらいにして腰部の灸とともにすえて、一週間ぐらい経てから倍数にして、腰部の灸穴が反応を示さなくなって、腰部の施灸をやめてから、中条流のみをすえるときに多壮にする、という方法をとっている。中条流の部位の灸は、十壮以上すえると、火傷によって皮膚が肥厚したり、加皮ができてくるから、二十壮でも三十壮でもラクラクと施灸できるのである。

 ところが、このように毎日すえていても熱さが一々応えて一向熱感が減ってこない人がいる。このような人は成功しない場合が多い。

 昨年九月にも婦人科医に発育不全と診断された二十八才の婦人に中条流を施灸したが、熱くて十壮すえるのが骨であって、幾日すえても熱感が減じない。こういう人には無理に多壮灸をしても無駄なことだということを経験している。

 だから子宮発育不全と診断されていても、中条流の灸が熱くなく施灸できる人には効を奏する。その反対だと効かない、という目安がつくのである。これは私が多年施術して得た経験の一つであって、なおこの灸をすえて、たとえ懐妊しなくても、その婦人の皮膚が非常に美しくなるという副産物がある。これは前に美容の灸として本誌(鍼灸治療雑誌のこと)に発表したことがある。田代博士のお灸療法の本にも「深谷法」として述べられている”

 

(深谷伊三郎「お灸で病気を治した話 灸堂臨床余録 第二集」(鍼灸之世界社)より)

 

 “安○房子さんに、どういう取穴をして施灸をしたか。それから話を進めてみる。

 カルテには腰部の取穴は腎愈大腸愈小腸愈、腹部は中条流灸穴としてある。腰部の腎愈、大腸愈、小腸愈は半米粒大のもぐさで、各三穴、これは左右で六穴となるが、これらの穴へ各五壮づつ、中条流灸穴には第一診では十壮とした。そして三日間の間隔をおいて施灸し、第二診では中条流灸穴を二十壮とし、最後まで多壮施灸とした。

 不妊症の灸については第二集に集録されているから、それらを参照していただくことにするが、新しい読者のために一応述べておく。

 中条流灸穴というのは患人の口巾を測るものであって、まず右口角から鼻中隔下際そして左口角へと紐の類で測り、それを一辺の長さとして正三角形を作る。その三角形の角頂を臍心に当て、底辺の底角左右二点を灸穴としたのが、この灸穴で、ここは三回以上つづけて施灸するとあつさを感じなくなるもので、二十壮から三十壮すえると、ようやくあつくなってくる。だから三十壮ぐらいすえるのは、その割に苦痛ではない。

 この三角形の底角両点を取穴施灸することについて、中条流の取灸ばかりでなく他にもいくつかある。今回はその三角形取穴についていささか述べてみたいと思っている。

 しかし、その問題は後から述べることにして、今ここでは、まず不妊症の灸治療の問題について片づけておかなければならない。

 とにかく安○房子さんは第五診のときには、腰部の腎愈、大腸愈、小腸愈の各穴の圧痛が消失し、灸がえぐられるように熱さを感じるというようになった。

 灸というものは、灸穴に圧痛があり、それがいろいろの症状の反応として現われである場合、もっと言葉を平たく、わかりよく言ったならば、からだのどこかに悪いところがあって、その反応として現われている穴所は圧痛が強く著明にでている。そういうところは灸をすえても熱さを感じ難いのを常とする。

 なかには、まったくあつさを感じなくなって五十壮以上の壮数を重ねることができるのもある。そして症状が消失し、穴所に圧痛がなくなってくると、あつさがひどく感じるようになる。いままで気持ちよく透るような快いあつさが一変する。そのときは施灸を中止する。快い感じがしているときは、からだが灸刺激を求めているのだが、いやな感じ、えぐられるようなあつさになったときは、からだが求めていないのだから施灸を中止すべきなのである。

 だから、腎愈や大腸愈、小腸愈は五診以後施灸は中止して、もっぱら臍下の中条流灸穴だけをすえつづけることにした。そして、たった二ヵ所であり、さのみ熱さを感じないから、毎日自宅ですえつづけたのであった。

 その結果が懐妊し分娩ということになったわけで、このように簡単な取穴法で、また少穴で偉効を奏するのが灸の特長というべきなのだ。決してベタベタと、あちら、こちらに灸をしたからといって、下手な鉄砲も百撃てば当たるというものではないということにご留意をしてもらいたい。”

 

“次に婦人孕まず数々胎堕るを治す法というのがある。これは、なかなか妊娠しない。たまさか妊娠すると胎堕つ。つまり流産するというのや、しばしば流産する。妊娠はするが流産して胎の中に保たない。流産癖となるもの治す法というのであって、これも不妊症治療の灸穴となる。

 胞門に灸す。穴は開元の左辺二寸に在り。さらに子戸に灸す。穴は開元の右辺二寸に在り。灸各々五十壮屡々(しばしば)報ず。

 これも胞門、子戸の二穴という簡単な取穴であるが、五十壮という少穴多壮で効果がある良法である。”

(深谷伊三郎「お灸で病気を治した話 灸堂臨床余録 第八集」(鍼灸之世界社)より)

 

*深谷伊三郎先生について、以下はウィキペディアの説明です。

 

 “深谷伊三郎(ふかや いさぶろう、1900年 - 1974年)は、日本のきゅう師。

 来歴 東京生まれ、早稲田大学入学、日本大学法学科卒業。

 肺結核にて5年間病床に臥し、灸治療により劇的な回復を遂げる。その後、一念発起し、鍼灸界へ身を投じ、特に灸の研究には優れた業績を残している。深谷灸法の確立や灸に関する書物を著した。入江靖二をはじめとした多くの弟子がいる。鍼灸治療雑誌を20年間刊行、鍼灸之世界社の主宰を務めるなどした。代表作に名家灸選釈義があり、現在でも多くの鍼灸師が治療の際にこの名家灸選釈義を使用している。

 息子の新間英雄はミュージシャン、孫の立川志らくは落語立川流の真打ちである。”

 

*深谷伊三郎先生の著作は、「灸方臨床研究会」から購入できます(医道の日本社から購入できるものもあります)。どの本も内容が濃く、枕を使った子宮後屈の治し方、第一子の後に第二子がなかなかできないときの灸、さらに脳溢血後に半身不随となったときにすえる指先の灸、蓄膿症の灸など、灸による様々な病気の治し方が載っています。「深谷灸法」の勉強会も定期的に開催されています。

 

 

 

・沢田流鍼灸 ・ 田代儒穫先生

 

(子宮後屈・左屈)

 “子宮の位置異常の婦人は、鼻の下溝(人中)が曲がっている――と人相学でいわれていますが、人相学が出たついでにいうと、人相学は昔の望診から分かれたものだそうです。

 男女の生殖器の故障や病気は、私の研究によると、上額中央部にも視診(184ページ視診法参照)を現わします。脊柱も曲がっているとされます。これをなおす灸穴は、中脘左陽池で、ここに7壮ぐらいずつすえると、よく効きます。(第27図参照)

 子宮筋腫もまた、灸やはりの治療、あるいは漢方でなおる例が多いようです。これを子宮病の灸でなおしてあげた例も多々あります。友人の医師の経験にもたくさんあります。赤ちゃんの頭ぐらいになった筋腫でも、はりの治療と濃厚な中将湯でなおったという患者さんもいます。”

 

(不妊症)

 “これには、中脘左陽池と臍下2寸(6㌢)の正中線上の点、中極と、その左右2寸のところの大巨、腰部では腎愈小腸愈上髎次髎などを主として、腰および下腹、下肢のあたたまるように施灸するとよいのです。(第27図)

 以上の灸点に施灸することによって、子宝を恵まれた婦人は多数に上がり、なかには45歳で初産をし、「ほんとうに夢のようです」と喜んだ人もありました。”

 

「深谷式美容の灸」

 “この方法は、昔の中条流の「はらみの灸」というのを応用したものです。深谷氏はさらに変法を考案して実験していますが、効果はすこぶる顕著だということです。

 中条流の原法は、第30図のように口角と鼻の先端の長さを糸で測り、その長さを一辺とする正三角形を作って、正三角形の先端を臍にあて、三角形の底辺の両端が臍の下にあたる点が灸点です。そこにしるしをつけて小灸を30壮すえますが、これが不妊症によく効き、肌が奇麗にもなるのです。

 また、氏の変法は、口の幅をはかって、これを一辺として正三角形を作り、前回同様に点をつけて小灸7壮をなおるまで続けるのです。必要なツボは、臍の下両側を見ると貧血視診が灸点位に見えるものです。ニキビなどの吹き出物がなおり、皮膚のザラザラがなくなって、羽二番餅(はぶたえもち)のように奇麗になります。

 中条流の原法でも、皮膚だけの問題だったら7壮の小灸でよろしいのです。これは総腸骨動脈の刺激部、女性では卵巣刺激部となります。この灸によって下肢の血行もよくなります。”

 

(田代儒穫/田代重「新はり・灸治療法」(檸檬社)より)

 

*田代儒穫先生は沢田健先生の沢田流鍼灸(太極療法)を継承された方です。文中に視診法云々とありますが、訓練によって服の上からでも灸をすえる場所や経絡が診えるようになったということが書いてあります。荒木正胤先生の灸の師匠も、患者の体を視ただけで、灸をすえるべき箇所が見えたということですが、こうなるともはや霊能の世界です。熱心な大本信徒でもあられた御井敬三先生も同じく天眼をもっておられましたが、昭和の時代にはこのような異能を持った名医は全国各地に少なからずいらっしゃったようです。ちなみに、荒木正胤先生は、東洋医学の大家であられると同時に、長年、忽滑谷(ぬかりや)快天師に師事されて禅の修業をされた方で、『江戸時代の針灸・漢方が比類なく発達したのは、これを運用した医人に仏教的教養の裏付けがあったからで、仏教的の信仰と修養なくして、わが国の針灸・漢方の発達は考えられない』とも言っておられます。深谷伊三郎先生の著書の中には、観音信仰についてのものがあり、沢田健先生も宗教や霊魂についての研究をしておられましたし、今の多くの医師たちに欠けているのは、こういった神仏への信仰心だと思います。

 

*結婚後、子供ができないことで悩んでおられる方は多いですし、不妊治療はご夫婦にとって身体的、精神的のみならず、金銭的にもかなりの負担となっていると聞きますが、この中条流・子孕みの灸は大して費用もかからず、しかもかなりの効果が期待できるものです。深谷伊三郎先生が「灸による不妊症の治し方」を出版されたのはまだ戦前の話で、「お灸で病気を治した話」初版の出版は昭和42年であり、比較的歴史があるにもかかわらず、この「中条流・子孕みの灸」のことを御存じの方は少なかったと思います。しかし、最近になってだんだんと注目されつつあるようで、今やネット上で複数の方が紹介しておられますし、YouTubeにも動画がありますので、それらを参考にして自宅で行なうことも可能です。とはいえ、下手にやりすぎたり、間違ったやり方だと母体にとってダメージとなってしまいますし、何らかの問題が起こっても、こちらとしては責任は取れません。やはり、できればちゃんと資格を持った鍼灸医に施灸してもらうのがよいと思います。

 

*出口王仁三郎聖師は『鍼灸医術は火と水の御守護による療法、ゆえに万病を治すことができる』と言われており、出口すみ子二代苑主は、健康のため、信徒らに臍に『味噌灸』をすえることを勧めておられました。味噌灸とは、臍の上に味噌を塗って、その上にモグサを置いて火を点けるというもので、ピンポイントの灸に比べて効果はいくらか落ちるかもしれませんが、痕も残りませんし、簡単に手軽にできる灸です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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