「病死」の意味 (シュタイナー人智学) | 瑞霊に倣いて

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  『霊界物語』が一組あれば、これを 種 にしてミロクの世は実現できる。 
                            (出口王仁三郎)  

 “人間はなぜ病気になるのだろうか。病気になるということに、なにか意味があるのだろうか。

 病気になるかどうかは本人の養生しだいだという側面があるけれど、それでも病気にかかりやすい人とそうでない人がいる。

 「前世における性格が、現世で病気にかかりやすいかどうかを決定するのだ」という見解がある。それは、たしかにそうなのだろう。しかし、そういってしまうと、病気になるのは前世の報いというか、「自業自得なんだから、嘆かずに、あきらめなさいよ」と諭すべき状態でしかなくなる。

 だれもが一度は病気になるのだから、病気になることになにか積極的な意味はないのだろうか。「来世に目を向けると、闘病は無意味とはいえなくなる」と、いわれる。現在の闘病の結果、来世では立派な身体を得られるというのだ。「たしかに、そうなるといい、でも来世ではなく、現世において病気の意義とでもいうべきものを見出せないものか」と、思われる。

 まず、病気になるのは過去の自分のありようの結果だ、と認識する、そうすると、「病気になり、闘病することによって、わたしは過去の業を清算しているのだ」と、理解できるようになる。病気になるのは、過去の業を清算するチャンスなのだ。

 借金取りが来たら、うれしくない。でも、返済しなければ、借金をかかえたままだ。返済すれば、すっきりする。

 「病気にならなければ、業を溜め込んだまま」という事態であることもあるのだ。病気は苦しいものだけれど、「高い視点に立つ自己が自分の業を解消し、運命を好転させる機会として病気を引き寄せたのだ」と、認識することができるのである。

 闘病をとおして、わたしたちは運命を切り拓く。闘病を経て、わたしたちは新たな心境で日々を送ることができる。

 「そんなことをいっても、死ぬまで苦しみどおしだったり、あえなく死んでしまったりした場合、どう考えればいいのか」といわれるかもしれない。実際に病気で呻吟している人には、「苦痛をとおして人間は深まる」と通り一遍のことをいっても、薄情に聞こえるだけだろう。

 しかし、ふだんの利己的な意識ではなく、高次の自己は自分を高めるための機会として病気をとらえている

 「病気を克服して、すがすがしい気持ちで生きる人もいるけれど、病気に勝てなくて死んでしまう人はどうなのか」という問題があるかと思う。

 結論からいえば、すべての病気は克服されるのである。病死した場合、死というプロセスをとおして、病気は克服されたのだ。病気が直らなくて死んだのではない。死ぬことによって、病気は克服されたのである。だから、来世では立派な身体に生まれつくのだ。

 日本では、ある病気で死んだ人が、その病気を癒やす霊神として信仰を集めていることがある。その霊魂が実際に病気を直す力を持っているのかどうかは別として、死をとおしてその病気を克服したということはいえるのだと思う。

 直るか死ぬかは、病状の進行具合や医療のあり方のみによって決まるのだろうか。たしかに、そういう面はある。しかし、それだけでなく、運命ということも、そこには介在している。運命というのは、たびたび述べてきたように、より高い視点から自己が意思したものである。

 病気を克服して新たな人生の段階が開けると自己が判断した場合、病気は直る。もはや、新たな人生の局面を開くことが難しく、むしろ来世で新たな地平を開いた方が自分にとって有益であると自己が判断した場合は、病気は死にいたる。ふだんの自我には意識されないところで活動している自己が、回復か死かを選ぶのだ。

 

(西川隆範「死後の宇宙生へ 生命の永遠を生きる」(廣済堂出版)より)

 

*人智学の考え方では、病死は病気に対する敗北ではなく、むしろ勝利であるということですが、やはりできることなら、病死ではなく治癒によって勝利する方がはるかに望ましいはずです。自分の体といえど、神さまからの大事な借り物なので、常日頃から健康維持に務めるべきですし、病気になったら適切な治療を受けるべきであることは言うまでもありません。

 

*高齢者は一般的に病気に罹りやすく、お亡くなりになる方々の死因としてはガンや心疾患、肺炎などが多くあげられています。人智学では、これらは老化によって体の抵抗力が落ちただけでなく、人生の最後にさらなる霊的進化を遂げようとして、無意識のうちに病気を呼び込んだ結果であるということのようです。病気に罹って死ぬことが、死後に、より高次の世界へと上昇するために必要なプロセスだったのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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