#かんぺ大賞2023 | CAHIER DE CHOCOLAT

#かんぺ大賞2023


昨年に続いて「かんぺ大賞」に参加してみました。

作品賞:
フィッシャー・キング
テリーG監督作としてはだいぶスウィートな作品で、幸福感にあふれたシーンもいくつもある。監督ご本人はお気に入りシーンのひとつとしてダンスシーンを「a positive, peaceful 2024 filled with creativity & magical moments」というコメントとともに元旦にポストしていた。ちなみに、私のお気に入りは中華料理店のシーン。


『ウイークエンド』
これはゴダールが亡くなったときに書いた記事でも、好きな作品3つのうちのひとつに選んだ。わけがわからなくて大好き。素敵な車がずらずら出てくる渋滞のシーンと人々の渋滞の過ごし方もかなり良い。

ママと娼婦
長い映画になっていることが納得できる映画のひとつ。こういう作品をじっくりと観ることがもはやラグジュアリーみたいになっている、そんな気がする。

監督賞:
テリー・ギリアム(『フィッシャー・キング』)
とにかく次回作が観たい。昨年のインタビューでは構想はあるとのことだったので、どうかどうか実現しますように……(こういう時は、ああ、大金持ちだったらなあと思う)

ジャン=リュック・ゴダール(“追悼 ジャン=リュック・ゴダール映画祭”)
次回作はもう出ない監督(未発表の何かがこれから公開される可能性はなくはない)。亡くなってもう1年以上経つのに、いまだにもやもやした気持ちが残っている。そういう論点みたいなものを投げかけて、自分はさっといなくなってしまうところもゴダールらしいとはいえ。どんな事情や思いがあるかはくわしいことはわからないけれど、レオに調子悪くなるほどのショックを与えた(当たり前)ことだけは許せないと思ってしまう。ところで、フランスでは安楽死の合法化が検討されていると報じられています。

主演男優賞:
ジャン=ピエール・レオ(『ママと娼婦』,『サンタクロースの眼は青い』, 『ゴダールの探偵』)
影のあるような、ないような、絶対抗えないであろう魅力を持ったアレクサンドルと、サンタのかっこうでモテて喜ぶ、ダッフルコートが欲しいダニエル。ユスターシュ作品でまったく違うふたりを演じるレオ。『ゴダールの探偵』では、大人なのに落ち着きのない探偵のイシドール。レオはいつもレオで大好きです。

主演女優賞:チェン・シャンチー(『エドワード・ヤンの恋愛時代』)
映画やドラマには、みんなに好かれてしまうというキャラクターが出てくることがある。チチはそれも納得なくらい魅力的で可愛らしかった。

助演男優賞:
ジェームズ・ドナルド(『大脱走』)
個性的な登場人物だらけの中で、私はだんぜんラムゼイ大佐が好き。落ち着いた大人でありつつ、エッジのきいたユーモアのセンスも持ち合わせている。素敵すぎる。ヴィジュアルもふつうに好みだったりする。

ジャン=ピエール・レオ(『ウィークエンド』)
電話ボックスの青年とサン=ジュスト、どっちも強烈な印象、かつ、素敵。かっこよすぎるレオ。歌声が聴けるのも貴重。

助演女優賞:原節子(『東京物語』)
ここ数年、色々な作品を鑑賞していく中で、血縁でない者同士のある種擬似家族的な関係性、あいまいさとその寛容、といったものが私自身の中にずっとあるテーマのようなものなのかもしれないと認識してきている。この映画もそのうちのひとつ。


特集賞:
“ジャン・ユスターシュ映画祭”
2021年には『ママと娼婦』(1973年の審査員特別グランプリ受賞作品)の4K復元版がカンヌ映画祭で上映されていた。日本でも映画祭が開催されて嬉しい。たった50分なのに二部構成で、その第⼆部のドキュメンタリーに入るといつも途中で寝てしまう『不愉快な話』を映画館で観たらどうなるのだろう、と思ったりした(第一部はマイケル・ロンズデールなので寝ない)。

“ピエール・エテックス レトロスペクティブ”
『健康でさえあれば』の“シネマトグラフ”が一番好き。フライヤーとHPに載っている映画人のコメント(フランソワ・トリュフォー、イザベル・ユペール、ジェリー・ルイス、オタール・イオセリアーニ、ロベール・ブレッソン、テリー・ギリアム)と「エテックス作品の権利復活のための署名活動に協力した映画人たち」、すごいなと思った。パンフレットには掲載されていなくてちょっとがっかりだった。

「エテックス作品の権利復活のための署名活動に協力した映画人たち(一部)ウディ・アレン / クレール・ドゥニ / ジャック・リヴェット / シャーロット・ランプリング / ジャン=ポール・ラプノー / ジャン=リュック・ゴダール / ジュリー・ドパルデュー / デヴィッド・リンチ / テリー・ギリアム / テリー・ジョーンズ / パスカル・フェラン / ベルトラン・タヴェルニエ / ポール・トーマス・アンダーソン / ミシェル・ゴンドリー / ミシェル・ピコリ / ヨランド・モロー / レオス・カラックス ※敬称略・五十音順」

…すごい面々。むしろこんな小さい文字でいいのだろうかと思ったくらいなんだけど。

“没後60年 ジャン・コクトー映画祭”
観たのは『美女と野獣』、『オルフェ』、『詩人の血』の3作品。どれも美しくて、奇妙で、これが没後60年の特集上映だとは信じられないくらい斬新な映像の連続。『詩人の血』のシュールな画がかなり好き。

衣装デザイン賞:
ウィークエンド
ミレーユ・ダルクが演じるコリーヌの服装が、リッチなマダムっぽいファションからどんどん変化していくのを見るのがすごく楽しい。しかも、行き当たりばったりでぐちゃぐちゃなのにとっても素敵という不思議。ゴダールの圧倒的センスよ……!

エドワード・ヤンの恋愛時代
ザ・90sのファッション。中心人物のふたり、モーリーとチチの服装が見事なほど対照的なのがおもしろい。チチは魅力的だけど、もちろんモーリーにもチチとは違った魅力がある。

ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23
デルフィーヌ・セイリグ演じるジャンヌが身につけているのは、おそらく当時のごくふつうの、むしろ地味なくらいの服。でも、人々の服装が全体的にカジュアル寄りになっている今見ると、きちんとした着こなしというのがとても素敵なものに見える。