大脱走(The Great Escape) | CAHIER DE CHOCOLAT

大脱走(The Great Escape)

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テーマ曲はすごくよく知っていたけど、映画自体を観たのは初めてだった。脱走といえば、『トムとジェリー』の3つのお話のまん中に入っていた“逃げてはみたけど(CELLBOUND)”がすごく記憶に残っている。刑期500年を言い渡されたスパイク(犬)が20年かけて500mのトンネルを掘って、塀の外に出るというお話。スパイクは床石をはがしたところの土をスプーンで少しずつ掘り出してトンネルを作っていく。この映画でも、床石をはがして土を掘っていた。“逃げてはみたけど”の公開は1955年、『大脱走』は1963年。何か関係があったらおもしろいなーとか思う。ただ、『大脱走』のほうは刑務所ではなくて、ドイツ軍の捕虜収容所が舞台。収容されているのはイギリス軍中心の連合軍の兵士たち。その中には脱走の常習犯がたくさんいる(というか、この収容所は脱走常習犯を一ヶ所にまとめてみた、という場所)。アメリカ兵のヒルツ(スティーブ・マックイーン)が何度も懲りずに脱走しては連れ戻されて、独房に放り込まれるというくり返しがおかしい。これも、逃げても逃げても刑務所の所長のところに戻ってくることになる“逃げてはみたけど”と共通した部分かも。集団脱走計画の中心メンバーたちは、物資調達屋、機械製造屋、仕立て屋、書類偽造屋、計測屋、警備屋……とかなりのスペシャリスト揃い。彼らが収容所内にある限られたもので工夫を凝らして、着々と計画を進めていくという適材適所感がたまらない。じゃがいもを蒸留してウォッカを手作りしたりもする。すごすぎる。連合軍捕虜の兵士たちはみんなそれぞれ個性的で良いキャラ。かっこいいのは先任将校ラムゼイ大佐(ジェームズ・ドナルド)。落ち着いた大人な感じで、わいわいした兵士たちを影で応援する先生みたいに見える。でも、「脱走してもむだ」と所長に言われたら、「脱走して敵軍を混乱させるのは将兵の義務」とさらっと答えるという。素敵だ。テーマ曲から想像するにコメディ要素もあるんだろうなとは思っていたし、実際かなり楽しいところやすかっとするところがいっぱいあるけれど、せつなかったり、悲しかったり、考えてしまったり……という部分もある。戦闘シーンはないとはいえ、戦争映画なのだから、それはそうかとも思う。2時間30分を超える長い作品でも、長さは感じなかった。とてもおもしろかった。