ママと娼婦(La maman et la putain) | CAHIER DE CHOCOLAT

ママと娼婦(La maman et la putain)

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ジャン・ユスターシュ監督のレオ出演(主演)作品は2本。『サンタクロースの眼は青い』のほうは何度も観ているけど、こっちはDVDを購入したときに1回観ただけだったかもしれない。3時間40分と長めの作品でもあるし。前に観たときよりずいぶんおもしろく感じた。こんなにおもしろかったっけ!っていうくらいに。そして、やっぱりとにかくレオがかっこいい(最近これしか言っていない気が)。この映画では、レオはレオでありつつも、いつものわたわたした感じは抑えめ。オリジナルな価値観とことばを持っていて、それでいて常にどこかとぼけたアレクサンドル。そりゃ彼の魅力には抗えないだろうよ、と思う。メインの登場人物は、アレクサンドル、彼の元・恋人のジルベルト、同棲(というか居候)相手でブティックを経営している年上の女性マリー、ナンパした若い看護婦(看護師)ヴェロニカという4人のみ。途中からの大半は、アレクサンドルとマリーとヴェロニカの3人の関係性だけになっていく。どちらが「ママ」でどちらが「娼婦」ということでもない。監督の「ふつうの人間が変化するところを映画に撮っている」、「ドラマティックになりそうなところはカットした」ということばからも、この映画の長さ、じわじわとしみ込んでくる痛さ、そこから感じる軽い快感とあきらめのようなものの理由がわかる。これは、監督が愛したひとりの女性とレオのために作られた映画。なるほどレオが魅力的に撮られているわけだ。カフェのテラス席で待ちぼうけたり、ルノー4(借り物)を運転したり、カフェオレボウルでコーヒー(ネスカフェ)飲んだり、可愛いかっこいいレオだらけなこの映画の中でも、ヴェロニカとパーティの手みやげを買いにスーパーマーケットに行くところはたまらない。レオがショッピングカートを押している姿とか貴重すぎる。ある意味浮世離れした彼らの関係性と日常生活に密着した場が交差する場面にちょっと不思議な感覚になる。ま、カートの中身は「アル中だと思われる」くらい全部お酒なんだけれども。