ジャンヌ・ディエルマン、ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地 | CAHIER DE CHOCOLAT

ジャンヌ・ディエルマン、ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地


『ジャンヌ・ディエルマン、ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地(Jeanne Dielman, 23, quai du Commerce, 1080 Bruxelles)』。粛々と日々の家事や仕事をこなすジャンヌの生活。まずはその動きのむだのなさに軽く驚きを覚える。迷うことなく次から次へと動き続け、さらにそれが何日もくり返される。劇的に何かが起こる映画に慣れていると、何か起こるのではないかと思いながら観てしまうけれども、何も起こらない。延々とくり返される日常。でも、その何も起こらない時間は必要な時間だったのだと、ほんの少しのずれに気づいたときにわかる。主人公のジャンヌを演じるのは、デルフィーヌ・セイリグ。終始淡々としていて、笑顔もなく、何かをあきらめたかのよう。ちょっと疲れたようでもある。でも、しゃべるとあの魅力的な声が響く。ディーンは息子のシルヴァン(明らかにティーンらしき年齢)の世話を過保護なほどにきっちりとする。息子のほうは当たり前のように世話をされている。シルヴァンも笑顔を見せることなどなく、ふたりの間で交わされる会話は多くはない。とはいえ、関係性が悪いふうでもない。そして、その少ない会話の中に重要なことばが含まれていたりする。クリームイエローとブルーを基調とした室内、台所用品とその使い方、ガウン(外にも着て出られそうなコート風)やエプロン(半袖のスモック型)など、1975年当時のふつうだったであろうもののどれもが素敵に見える。3時間22分は長いようで、長くはない時間だった。ただ個人的には、そうであってほしくないと思っていたとおりの結末になったので、そこだけが残念だった。