活字恐怖症。
昨年12月くらいからずっと何かしら翻訳のしごとをしてて、ようやく少し余裕が出たのがここ1週間ほどです。翻訳のしごとがある時は時間が本当に足りなくて、それでも「月曜はしごとをしない日」と決めてあちこち外出したり(まあ、コロナ禍なので制限はありつつも)、なるべく音楽や映画から離れないようにしたりしていたのですが、いかんせん、本がまったく読めない。翻訳の原書を読み、ネットや書籍で膨大な資料を読み、自分の訳文を読み、校正ゲラを読み……と、ずっと何かしらを読んでるので、もう活字自体がお腹いっぱいになっちゃうんですよね。まあ、時間もあまり取れないですし。でも、しごととは無関係に読みたい本、というのはあって(ありすぎて)、それを「月曜はしごとをしない日」に書店(新刊書店やら新古書店やら古書店やら)に行ってごっそり買ってきちゃうものだから、どんどん「積ん読」が進んでしまう。30代までのわたしは「買った本は必ず読む!」「積ん読はしない!」をモットーとし、一部友人から賞賛を受けていたのですが、あのドヤ顔で鼻高々だったわたしはもう見る影もありません。で、しごとをしながら頭の片隅のほうでずっと、「よし、これが終わったら積ん読してるあいつとあいつとあいつとあいつを一気読みするぞ!」と固く誓っているのですが、いざこうして余裕が出てくると、あーら、不思議、風船がしぼむようにすべての意欲が消え失せてしまいます。この1週間、読もうと思えば2、3冊の本は読めたはずなのですが、頭もからだも活字を断固として拒否。いえ、心は読みたがってるんですよー。熱いコーヒーでも飲みながら、時間を忘れ、暑さ寒さを忘れ、空腹を忘れ、世の中のあらゆる憂鬱な出来事を忘れ、無我夢中になってページをめくりつづけるあの至福。ああ、あの至福。あれをぜひとも再び味わいたいものだ、と。ところが、頭とからだのやつらときたら、「いやいや、勘弁してよ~。ちょっとしばらく活字とかって見たくもないんだけど~。そんなもんより、ぼーっと空や草木でも眺めてたほうがよくないっすか?」と、コンビニ前でしゃがみこんでる若者風な口調でほとほとうんざりした顔つきで言ってくるので、「まあ、確かに。ちょっと疲れたかもね」と心も渋々同意。しかしこの突然の空白時間、そして自分が急に怠惰な人間になりさがったかのような罪悪感&背徳感にさいなまれ、このままずるずると怠惰の谷底へ落ちていったらどうしよう……と、ひとりぶるぶると震えているのです。それにしても頭とからだのやつらときたら、本は読みたがらないくせに、ツイッターのタイムラインだけはぼーーーっと眺めてやがる……(しかもたまに自分の訳書をエゴサしたり)。で、心はまたしても時間を無駄にしたという罪悪感と背徳感と劣等感と屈辱とに頭をかきむしりながら苦しむのです。ああ、かつての活字中毒者はどこへ行ったのでしょう。これではまるで活字恐怖症です。うう、情けない。というわけで、このブログは活字に慣れるために、リハビリの一環として書いています。ブログもずっとご無沙汰してましたからね。さあ、これを書き終えたら、昨夜から取りかかったこの本から、まずは手始めに。わりとクセのある文章を書かれる方(音楽家で文筆家)ですが、面白いです。……と言いつつ、リハビリ中なので、心に活字が染みとおっていく感覚はまだ味わってませんが(本ではなくわたし自身の問題です、あくまでも)。最後に宣伝。6月末に出た訳書です。アマゾンで買う「バカ」の研究 | ダニエル・カーネマン, ダン・アリエリー, アントニオ・ダマシオ, ライアン・ホリデイ, ジャン゠クロード・カリエール, アリソン・ゴプニック, トビ・ナタン, セルジュ・シコッティ, イヴ゠アレクサンドル・タルマン, ブリジット・アクセルラッド, アーロン・ジェームズ, エヴァ・ドロツダ゠サンコウスカ, ニコラ・ゴーヴリ, パトリック・モロー, ジャン・コトロー, フランソワ・ジョスト, ハワード・ガードナー, セバスチャン・ディエゲス, クローディ・ベール, ローラン・ベーグ, デルフィーヌ・ウディエット, ステイシー・キャラハン, ジャン=フランソワ・マルミオン, 田中 裕子 |本 | 通販 | AmazonAmazonでダニエル・カーネマン, ダン・アリエリー, アントニオ・ダマシオ, ライアン・ホリデイ, ジャン゠クロード・カリエール, アリソン・ゴプニック, トビ・ナタン, セルジュ・シコッティ, イヴ゠アレクサンドル・タルマン, ブリジット・アクセルラッド, アーロン・ジェームズ, エヴァ・ドロツダ゠サンコウスカ, ニコラ・ゴーヴリ, パトリック・モロー, ジャン・コトロー, フランソワ・ジョスト, ハワード・ガードナー, セバスチャン・ディエゲス, クローディ・ベール, ローラン・ベーグ, デルフィーヌ・ウディエット, ステイシー・キャラハン, ジャン=フランソワ・マルミオン, 田中 裕子の「バカ」の研究。アマゾンならポイント還元本が多数。ダニエル・カーネマン, ダン・アリエリー, アントニオ・ダマシオ,www.amazon.co.jpわりと評判がよいようで、noteのCXOのかたに好意的な批評を書いていただいたりとかして、とりあえずホッとしてます(今のところ)。深津貴之氏の読書日記読書日記 「バカの研究」|深津 貴之 (fladdict)|note noteの「良いサービスを考える会」で、「バカの研究」という本をオススメいただき読了。 「バカ」の研究amzn.to 1,760円(2020年07月07日 22:34時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する 本書は、あきれるほどおバカな本だ。なぜなら「バカとは何か」という問いを、ノーベル賞受賞者(ダニエル・カーネマン)ら世界最高峰の頭脳達にぶつけた、インタビュー集だからだ。 世界の英知を結集して、エベレスト級のバカを定義するという、あまりにもリソースを無駄遣いした本といっても過言ではない。とてもフランスっぽいエスプリのきいたバカである。note.comあ、翻訳家として初めてラジオに出ることにもなりました(全国ネット!)、が、恥ずかしいのでこれ以上は内緒。ではでは。ビジネスマンの知的好奇心を誘うような装丁ですねー。裏面はこんな感じ。個人的には帯をとった時のこのシンプルな装丁が好きです。