日々感じたこと・読んだ本
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『スリー・カード・マーダー』(JLブラックハースト 三角和代訳)を読んで

読むのがつらくなるほど、日本語翻訳された文章がわかりずらかったのが哀しい。

え?っと思い、「これどういう意味なの?」と思い何度か読み直した部分もある。

それと、意味が通じないところがあった。誤訳なのではと思った。

たとえば文庫本のP241の8行目

「~彼女について調べるように頼んだ」とのくだりがあるが、

この「彼女」とは誰なのか?ここで調べる対象となるのはルカマンシーニで、男性なのだが。

100歩譲って、調べる上で関係性が出てくるはずである、セアラ(女性)のことかなと考えたのだが、

P253において、その「調べた結果」を報告するくだりがあって、そこには、はっきりと

「マンシーニは・・・」と書かれている。

 

いったいなんなんだろう。

これって、物語的には大事なところだし、そもそも手の込んだ密室殺人ものなので、読者は一字一句慎重に読んでいるはずなのに。編集者も翻訳者も多忙だからなのだろうか?

もしかしてAIを下準備で活用して、翻訳したのかな、と思うほどであった。

 

他にも、日本語として微妙におかしくなるところがあって( 「していた」を「しておった」的に九州弁になる箇所)びっくりした。

 

やっと読み終えてほっとしている。

 

『恐怖を失った男』 (M・W・クレイブン作/ハヤカワ文庫)を読んで

数か月前まで夢中で読んでいたワシントン・ポーシリーズの作者が別の男を主人公にして書いていたシリーズの作品のひとつが翻訳され出版されたのですぐに飛びつきました。

 

驚くことに、舞台はアメリカ。ポーシリーズはイギリスの地方の景観描写の美しさが持ち味のひとつとなっていたので、このイギリス生まれイギリス育ちの作家がアメリカを描くなんて、と思っていましたが、またもやアメリカの広大な地帯が物語の後半からの舞台となり、それが、ただの景観以上に物語の筋に関係していること、軽い驚きを覚えました。

 

ネタバレはしたくありませんので、以下簡潔に。

作者のクレイブンさん、なんだかリラックスして、書きたいことを書いている。そして、それがいい味わいとなって読者の興味とリアリティを醸し出しているなと思いました。

その時その時の銃など武器についての夥しい説明、それを使った者でしかわからないであろうそれら銃の使い勝手、そして、格闘シーンはプロセス顔負け(?)のリアリティ。これぞ、クレイブンさんが作家になる前に過ごしてきた世界なのだな、と感じました。

 

主人公はケーニグ。文字通り「恐怖を失ってしまった」男。他に彼の元上司、黄色いスーツの男、ロシアマフィアの幹部など、いずれも陰影がある男たち、そして、ケーニグの元部下、元上司の娘など、勇敢で知的な女たち。

彼らが繰り広げる、アメリカならではの圧倒的な景観の中で繰り広げられるラストシーンは映画を見ているようなスピード感が爽快で圧巻です。

『償いのフェルメール』(ダニエル・シルヴァ作)(ハーパーブックス)を読んで

本屋で海外の人気作品を探していて目にとまったのが、この『償いのフェルメール』。

平積みにされ、評判がいいとの謳い文句もあり、読みました。

まずまず面白かったです。

イタリア、イギリス、デンマーク、ロシア、イスラエル、フィンランドに、間接的ですがアメリカ合衆国や南アフリカまでが舞台になっていて、なんだか、ひとつの政治的犯罪が影響を与える範囲がここまで広いのかと思ってしまいました。

主人公もそうですが、物語ののっけから登場し、最後には主人公の指示を受けて現場に潜入大活躍するタフでスタイリッシュで美しい女性など、登場人物がみな魅力的で、ぜひ続編を読みたいなぁと思いました。

それにしても、ロシア対ウクライナの話が底流に流れているなんて、本当に最新作ならではの醍醐味を感じられます。

そして、ロシア国内の風景描写、まさに、この広大で荒涼とした凍てつく大地をもっている国の放つ陰鬱な土地柄だからこその陰鬱な政略なのだな、と感じてしまいます。

 

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