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 学生時代に何冊か読んだ現代書館のこのシリーズ。古書店にあったから読んでみたけれど、この本は以前に読んでいる気がする。であれば再読。占星術をダシにしてかなり派生的な読書記録を書いてしまった。1995年9月初版。

 

【『テトラビブロス』】
 当時の天文学の最新知識を統合して、占星術史上最大のテキスト『テトラビブロス』を書きあげたのが2世紀の天文学者、クラウディオス・プトレマイオス(AD100頃~170頃)である。(p.23)
 『テトラビブロス』はテトラ(4部の)ビブロス(書物)という名のとおり、4部からなる占星術書で、2000年近く経った現在でも占星術テキストの最高峰にあると書かれている。
 横道に逸れるけれど、ビブロスは聖書の語源でもある。
    《参照》   『本の歴史』 ブリュノ・ブラセル (創元社)
              【バイブルの語源】

 プトレマイオスは、『アルマゲスト』という天文学書も著しているけれど、この本の宇宙観は天動説なのでコペルニクスの地動説によって権威を失ったという。
 プトレマイオスの2書のその後のことは、何かしら象徴的な気がする。客観的な物質世界の視点で言うならば「地動説」になるけれど、占星術的視点では、人間が主体なのだから「天動説」でいいのである。人類がもう少し進化したら「天動説」が再評価されるはずである。シュタイナーもそういうことを書いていた。

 

 

【カトリックの誤算】
 教会が恐れたのは、占星術や魔術の流行が民衆の心の奥底に眠るキリスト教以前の異教的陶酔をよびさますのではないかということだった。東方へのキリスト教布教を目的としたのちの十字軍(11~13世紀末)が、逆に東方の文化をヨーロッパに大量にもたらし、ひいては古代の叡智を再評価するルネッサンスを引き起こすキッカケのひとつになったのは、カトリックにとって皮肉なことだったに違いない。(p.27)
 学校の世界史では、「ルネッサンス=人間復興」という解釈で終わっているけれど、「人間復興」の元は、ここにあるように「古代の叡智」だったはず。
    《参照》   『ピーター・パンはセックス・シンボルだった』 松田義幸 (クレスト) 《後編》
              【半獣神の復活】

 カトリックにとって「古代の叡智を再評価」は皮肉な誤算だったかもしれないけれど、キリスト教以前の異教的宗教の流れは、今日の国際社会にまで重大な影響をもたらしている。
    《参照》   『これが闇の権力イルミナティの内部告発だ!』 ベンジャミン・フルフォード (青志社) 《前編》
              【バチカンに入ったミトラ教】 【テンプル騎士団】

 

 

【新プラトン主義】
 ルネサンス期のオカルティズムの根底に流れていたのは、プラトン主義を神秘的に再解釈した新プラトン主義である。新プラトン主義では、あらゆるものを超越した究極的存在からエネルギーが「流出」すると考える。そして、そのエネルギーの源から離れるほどに精神の完全性は低下するとした。この源と完全に合一することが人間精神の真の目標だというのがその主張である。占星術はこの考え方を取り入れ、天体の力が「流出」し、人間に「流入」するのだとして、理論化をはかろうと試みた。(p.33)
 プラトンは、「現実の世界は、真の世界(イデア)が投影されたものである」というような考え方をしていた。「投影」という言葉で終わってしまうと連携が難しい。新プラトン主義は、哲学的であったり文学的であったりする言葉遊びで終わらせたくない人々が考えたのだろう。こっちの方が遥かに科学的だと思うけれど、人文的には神秘主義とかオカルティズムなんて言われてしまうのである。
 仏教の場合も、大乗仏教という言葉による教えだけの宗教が大勢を占めた後に、その空白を埋めるべく密教(後期大乗に分類されている)が勃興したのである。そしてその流れは、恵果から空海に伝授され日本にまで来ている。本家にまで還流したのである。
    《参照》   『地球一切を救うヴィジョン』 白峰 (徳間書店) 《前編》
              【空海が恵果から教えられた秘密】

 

 

【ケプラー(1571-1630)の言葉】
 「天文学は賢い母、占星術は愚かな娘。しかし、母は娘が身売りをするおかげで生活できる」という彼の有名な言葉は、生活のために星を占う天文学者を皮肉ったものだといわれているが、ケプラー本人は占星術に真剣に取り組んでいた。(p.38)
 プトレマイオスのアスペクト法〈惑星間の角度による吉凶判断法〉をより高度なものにしたのもケプラーだったと書かれている。
 高校の理科で習う「ケプラーの法則」で有名なケプラーも、科学者としての研究に没頭していただけではない。同様に、ニュートンもピッカピカの錬金術師だった。

 

 

【オカルティストのニュートン】
 アイザック・ニュートンは万有引力の発見等で近代物理学の最高峰に位置する人物だが、意外にもその素顔はオカルティストであったことが知られている。・・・中略・・・。彼の弟子で、ハレー彗星の軌道を計算したことで名高いエドマンド・ハレー(1656-1742)は占星術を全く信じていなかったが、ニュートンに「私は占星術を研究したが、君はしてないではないか」とたしなめられたというエピソードは有名だ。(p.41)
    《参照》   『ニュートン・コード』 塚原一成 (角川学芸出版) 《前編》
              【ニュートンが錬金術で目指していたもの】

 

 

【神秘学から大衆文化へ】
 占星術は18世紀まで不遇の時代を過ごし、一部の好事家の間で細々とその命脈を保っているにすぎなかった。しかし、1820年、1822年にあいついで『テトラビブロス』の英語訳がイギリスで世に出ると、再び日の目を見るようになる。火付け役となったのは、ロシア出身の霊能者ヘレナ・ブラバッキー(1831-1891)率いる神智学協会である。
 神智学は新プラトン主義と東洋的汎神論を根幹とする神秘思想の一派で、人間に本来、与えられた霊力によって直接、神を見、真理を得ることをその教義としている。かの著名なオーストリアの思想家 ルドルフ・シュタイナー(1862-1925) も当初はメンバーの一人であった。(p.42)
 現代に関わる神智学のアウトラインに関しては
    《参照》   『太陽の暗号』 エハン・デラヴィ (三五館)
              【太陽のロゴス】

 ただし、日本神霊界に籍のある日本人として、神智学や人智学を相対的に評価すると、下記リンクのようになるそうですから、ご注意ください。
    《参照》   『神の仕組みから宇宙の仕組みへ』 佐田靖治 (光泉堂)
              【神の仕組みを見るときの落とし穴】

 

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