《中編》 より

 

【絶滅危惧種】
 ここまで書いてきたこと以外にも、上とぶつかったことは多々ある。決して公務員制度改革がその始まりではない。
 通産省に入省してから、いつの間にか31年の歳月が過ぎていた。同期の大半はすでに退官しているのに、われながらよくこれまで追放されなかったなあ、と不思議に思う。
 しかし考えてみると、上とぶつかったときも、必ず省内に良識のある人たちの勢力があり、私をかばってくれていたように思う。そうでなければ、とっくに私は経産省からいなくなっていただろう。
 ただ、寂しいのは、現在は、幹部に良識派といえる人がほとんどいなくなってしまったことだ。ちなみに私は、官僚の良識派を「絶滅危惧種」と呼んでいる。(p.272)
 ノーパンしゃぶしゃぶ事件以後、「絶滅危惧種」は激減し、3・11以降はほぼ絶滅しているだろう。
 残っている希少な「絶滅危惧種」が、日本の未来のためではなく、アメリカのために改革をするようになったら、それこそ本当に終わりである。
    《参照》   『日米「振り込め詐欺」大恐慌』 副島隆彦 (徳間書店) 《前編》
               【大蔵落城】
    《参照》   『3・11人工地震でなぜ日本は狙われたか〔3〕』 泉パウロ・高山長房 (ヒカルランド) 《中編》
               【邪魔者は殺害される】

 

 

【官僚の辞書に「過ち」の文字はない】
 官僚の特性の一つに「過ちを認めない」というのがある。秀才の特性といってもいい。常に褒められていた秀才は、怒られることと批判されることを極度に嫌う。だから、批判のもととなる「過ち」は、絶対に認めたくないのだ。
 自分たちは優秀だから間違えるはずはないという驕り。仮にそれに気づいたとしても、なんとか糊塗するだけの知恵を有している彼らは、官僚特有の「レトリック」を駆使して決して過ちを認めない。
 これが官僚の「無謬性神話」である。
 福島原発の事故でも、事故を「事象」と言い続け、想定外の津波のせいにしようとしたり、「すべて東電が悪い」といった説明に終始した。(p.276-277)
 福島原発のやや南にある東海村では、電源の補強工事を行っていたという。
 官僚は「過ち」を求めず、レトリックを使って言い逃れを続ける。そして、公務員改革法が俎上に上がれば、公設暴力団連合の権力を使って政治家など関連する人物を脅迫し、これを葬り去る。こういう連中を官僚というのである。

 

 

【パッケージ型インフラ整備】
 最後に、パッケージ型インフラ整備が大失敗に終わる可能性を高める最大の要因について指摘しよう。これまで述べたところから概ね推測がつくと思うが、役人が「パッケージ型インフラセールス」に執心するのは、おいしい汁が吸える可能性があるからだ。大型プロジェクトには、政治家も役人も企業家も蜜に集まる蟻のように寄ってくる。
 たとえば、原発を世界に売り込むに当たって、官民出資の投資ファンド、すなわち産業革新機構が出資して、国際原子力発電なる新会社を設立した。いまはさすがに天下りは行っていないが、そのうち、この会社は役人の天下り機関になる可能性がある。(p.289)
 そう、きっと天下り機関になることだろう。
 エネルギー問題に関しては、天下り問題どころの話ではない。今やフリーエネルギー開発に全精力をつぎ込むべき時代なのに、第2次安倍政権は、原発を海外に売り込んでいる。出口のないトイレを世界各国に売りたがっているのである。世界各国に対しても、地球に対しても、こんなに恥しらずなことをよく平気でできるものだと感心してしまう。
 原発輸出は、日本の評価を著しく末永く毀損することになるだろう。日本が先頭に立って地球にとどめを刺すつもりらしい。極限的にバカげている。そもそも原子力エネルギーは、星ごと潰してしまった種族が地球に持ち込んだエネルギー技術である。高次の進化を遂げていない地球にとって、原発維持は、終わりの時を率先して招き寄せるだけである。
     《参照》   『目覚めよ!宇宙人。』 山本耕一 (ヒカルランド) 《後編》
               【原子力が生むカルマ】
     《参照》   『日本よ!今地球運命の最低値からこう脱出せよ』 高島康司&ウイリアム・スティックエバーズ (ヒカルランド)
               【日本はヘタをすると、中国の後塵を拝することになる】

 

 

【日本経済の凋落ぶり】
 景気が悪く、学生の就職口がないといっても、大方の日本人は日々の暮らしには困っていない。生活のレベルも、悲惨というほどではない。
 しかし、現状がそこそこであっても、日本が急激に衰退への道を辿っているのは紛れもない事実だ。
 ・・・中略・・・
 先進国の集まりであるOECD30カ国の比較では、購買力平価で見て、1993年の2位をピークに、ここ数年急落してきた。1998年には6位まで落ち、・・・中略・・・、2007年にはシンガポールにも抜かれ、23位まで下降、国民一人当たりのGDPでも、アジア・ナンバーワンとは言えなくなった。(p.298)
 30カ国中23位ということは、下から数えた方が早い。ビリから8番目ということである。
 政官財が結託して「天に唾する」ような恥知らずなことを続けてきたことの当然の報いである。しかし、なぜその報いを民間人が受けて、なぜ官僚をはじめとする公務員はのうのうと高給を食んでいるのか。

 

 

【日中間の米の価格差】
 日本のコメは778%の異常な高関税で保護されている。この関税がゼロになれば、輸入米の価格が大幅下がるのは確かだ。その結果、日本の米作農業は滅んでしまうというのが農水省の言い分だ。
 しかし、その根拠が曖昧だ。コメの内外価格差が4倍だというときに使っているデータが、日中間の10年ほど前のものだという。しかし、現実には、中国では農産物価格が高騰していうのに対し、日本では米価が下落。その結果、2009年の輸入価格で見る限り、日中間の価格差は、60キロあたり中国が1万500円で、日本が1万4000円と、その差はわずか4割弱になっているという。(p.325-326)
 この価格差は現在より一層縮まっているだろう。であるなら、日本米は海外の富裕層にとってはより一層大量購入したくなる米になるのだから、むしろTPPに参加した方がメリットはあるとすら言えるだろう。
 しかし、TPPの本質は経済問題ではない。農産物問題に絡むTPPの本質的な危機は、日本民族のDNAに関わるモンサント社がらみの遺伝子組換え食品が、多量に日本市場に流入することなのである。
     《参照》   『2015年に来る真の危機から脱出せよ!』 中丸薫 (青志社) 《後編》
               【TPPとモンサント社】

 今日本全国に展開しているイオングループは、その商標にプロビデンスの目が描かれているように、人工削減計画に組み込まれている企業である。泉パウロさんの著作 の中にそのことは写真付きで書かれている。イオングループ傘下のマックスヴァリューのいくつかは、現在、サ・ビッグと名称を変えて更なる安売りで日本市場におけるシェアを獲得しようとしている。日本がTPPに加入すれば、イオングループは安価に供給できるモンサント社製の遺伝子組換え食品を混ぜ込んで日本人のDNAを改変させることに一役買うだろう。
     《参照》   遺伝子組み換え使用ワースト1 明治HD おやつの「カール」など

 

 

【隣の家にアジア人】
 おりしも、中国映画「非誠勿擾」(邦題「狙った恋の落とし方」)が中国国内で大ヒットし、その影響で北海道への中国人観光客の数が急拡大した。北海道の美しさは、・・・中略・・・広く中国人一般の心をつかんだのだ。(p.347)
 10年ほど前は、岩井俊二原作の 『ラヴレター』 が映画化されて韓国でヒットして、韓国人が大挙して北海道に行っていた。
 今、北海道を訪れている主な外国人は(3・11で下火になったけれど)中国人である。函館の朝市も、今は中国人や台湾人頼みである。日本中の多くの観光地がそうだろう。日本は観光立国としての戦略を立てないと、特に地方は老衰死寸前である。
 安全保障という面の話は別途考えなければならないが、基本的には、われわれは、隣の家にアジアの人が住むという時代を想定しなければならない。好きとか嫌いとか言っている場合ではない。来てもらって、ありがたいと思うべきなのである。
 日本が再生できるとすれば、そういう社会を厭わない、それを前提とした社会作りをしなければならない。もし、それを嫌がっているようだと、日本の将来はない、ということを覚悟すべきだろう。(p.347)
 一般の日本人には感覚的に違和感がある記述だろうけれど、日本に投資されている海外からの資金の流れを見ている人たちは、この趨勢に沿って、上記書き出しのような社会になるだろうと予測している。
 そもそも日本人のDNAは、日本語によって作られていると考えていいらしい。
    《参照》   『言霊設計学』 七沢賢治  (ヒカルランド)  《前編》
                【言霊によるDNAへの関与】

 いきなり中国人が燐家に住むようになっても、二世が生え抜きの日本語を話すようになれば、その人は日本人のDNAを持てるのであり、日本人としての感性を持っているのである。そんなに忌避する必要はないだろう。
 逆に、現在の日本には、若者でも就職口がないのだから、若者たちは率先して海外に出て行けばいいのである。どうしたって世界中の、ヒト・モノ・カネは混ざり合ってゆく。立ち止まっていたら時流に遅れるだけである。

 

 

<了>