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 ピヨピヨパコパコピンピロリンノリン。2006年3月初版。

 

 

【日本への期待】
 私が世界各国を訪れて思うのは、中東でも、南アメリカでも、アジアでも、日本が何かしてくれるのを望んでいるということです。こうした国では、日本は米国の手下になっているという見方が強い一方、日本への期待も高いのです。
 これは幻想でも、理想でもありません。難しいことですが、世界から専門家の助けを借りればできることです。そうすれば、日本は世界の英雄になれるでしょう。(p.82)

 日本は西洋と東洋の両方のよい点を併せ持つ国だから、人類の未来の鍵を握っているのではないかと思って日本にやってきた。
 アメリカがだんだんとおかしくなっているが、それを正す力は日本が持っているし、またそうする道義的な義務があるのだ。なぜなら、日本には、海外で塩漬けになっている日本では使えない巨額のマネーがある。この海外で貯めた60年間分のお金を日本の意思で動かすだけで、世界を貧困から救える。世界のウルトラマンになれるんです! (p.135)
 この本が出版された頃は、この記述に心が躍った日本人も多かっただろうけれど、その後、リーマン・ショックと東日本大震災を仕掛けられた現時点の日本では、ちょっと空想じみたことに思えてしまう。しかし、日本が世界の英雄になる可能性はゼロになったわけじゃない。

 

 

【失われ続ける日本マネー】
 上記の書き出し中に在る “海外で塩漬けになっている日本では使えない巨額のマネー” とは、日本が買い支えているアメリカ国債のことばかりではない。
 1995年以降、日本は経常収支の黒字があります。
 問題は、これをすでに米国に移してしまっていることです。累積で約270兆円もの資金輸出が、企業買収のコストとして、行われたわけですから、日本は膨大な資金を失いました。これが、日本の預貯金の「強盗」の姿です。
 ・・・(中略)・・・。日本の企業は米国に製品を輸出し、米国はその代金をドルで支払います。本来なら、米国はドルを失い、取引はここで終了するはずです。しかし、米国はドルを手元に残しました。ドルは米国に戻り、米国経済の成長を支えました。1995年以降の米国経済の成長は、ルービン氏と旧大蔵省との合意に起因するものです。旧大蔵省は日本人の預貯金を元手に「強いドル」を維持したのです。(p.228-229)
 1995年は超円高の演出によって日本が脅迫された年だった。輸出企業で外貨を稼いでいる日本経済にとって円高は都合が悪い。旧大蔵省は、輸出で稼いでいる大企業を守るために、日本人の270兆円もの預貯金をアメリカに差し出すことで、表向きの日本経済を整えていたということになる。みごとな属国ぶりである。
 財務省に関して、もうひとつ重大な点は、財務省の米国の財務省と直接的なルートがあるということです、官僚は、外務省や首相を飛び越して、直接米国の財務省と話ができるのです。(p.229)
 官僚が日本の国益のために頑張ってくれているのならいいけれど、実際はアメリカに尻尾を振るポチ君になり果てているから、日本はこれほどまでに格差の進んだ酷い社会になっているのである。世界が認める優秀な企業が揃っていながらこれほどまでに景気が長いこと上向かない状態が続いているのは、アメリカに隷属する官僚達によって日本人の預貯金が米国に横流しされ、制度的にも屈服され続けているからなのである。
 まあこのような状況は、日本に限らず世界中同時進行である。諸国民が稼ぎ出した富は、政治的圧力やら偽装恐慌やらによって国際金融を支配する連中によってカツアゲされ、それによって生じた諸国家財政の不足分は、結局のところ徴税という手法で国民に穴埋めさせるのである。
 そして、このような構造の中枢に巣食っている日本の官僚たちは、自らの裏金作りと天下り先の確保に熱心であり、そのためにも国民から徴税することをさらに熱心に画策するのである。結局のところ、官僚側の公務員は守られて、天下り官僚が居座っていない民間企業人(殆どの国民)だけが徹底的に食い物にされるのである。
 日本丸の舵を正しい方向に切ろうとした初期の民主党政権は、このような官僚達によって、崩壊させられたのである。
   《参照》   『新たなる金融危機に向かう世界』 副島隆彦 (徳間書店) 《後編》
             【日本の将来を潰した者達】
   《参照》   『日本国増税倒産』 森木亮 (光文社) 《後編》
             【退職手当債】

 

 

【政治資金作りの一例】
 CIAの報告によれば、日本から北朝鮮に支援されたコメは、タイ米だった。8分の1の値段で買えるタイ米にすり替えて船に乗せ、輸出したのだ。そうすることで作った膨大な裏金は野中広務や加藤紘一などにばら撒かれていたとされる。
 似たような話では、ODAの2割から3割は自民党の政治家に還流されている。FBIの元日本代表が私に教えてくれたことである。(p.87)
 同和にもからんでいた経世会のドンといわれた野中広務は、今は失脚しているけれど、こんな風にして裏金をつくっていたのである。
   《参照》   『同和利権の真相』 寺園敦史・一ノ宮美成 (宝島社) 《後編》
             【同和に絡む政治家:鈴木宗男 そして 野中広務 】

 「政治にはどうしても金がかかる。汚いことに手を染めない政治家なんて大物ではない」とかって年配の皆さんは考えるんだろうけれど、そういう腐りきった政治常識がまかり通っているから、国民が報われない国になってしまうのである。

 

 

【小泉改革に乗じたトヨタ】
 トヨタが買収したミサワホームの場合、銀行が帳簿をいじり、200億円あった利益を2億円に書き換えてしまった。さらに4万件もの特許権の評価もゼロ、不動産の価格も市場価格よりも大幅に低い数値で評価したのです。これにより、産業再生機構の支配下に入ることになってしまったミサワホームを、トヨタは実際の価格より、かなり低い価格で買い上げたのです。(p.160)
 小泉改革に乗じて、長銀を冗談みたいな安値で買収したリップルウッドのことは、多くのビジネス書に書かれていたけれど、ミサワホームを買収したトヨタのことを書いていたのは、下記リンクもあるけれど少ないだろう。
 アメリカの狡猾さばかり喧伝されている陰で、日本国内にも結構狡猾な連中が立派に巣食っているのである。もちろんその親玉は、高級官僚たちである。
   《参照》   『トヨタの正体』 横田一・佐高信 (金曜日)
              【ミサワホームとトヨタ自動車】

 

 

【検察の権力】
 刑事事件ですが、先ほどフルフォードさんは、起訴された人が有罪になる割合は99%とおっしゃいましたが、これは間違いで、実際は99.8%です。これは、法律というより、検察の絶大な権力のたまものでしょう。(p.164)
 検察は勝てると思わなければ起訴しません。だから勝つのです。すべては裁判になる前に、決まっています。(p.167)
   《参照》   『売国者たちの末路』 副島隆彦・植草一秀 (祥伝社)
             【警察や検察庁の実態】

 逮捕しておきながら起訴しないということは、勝てるだけの証拠がないということである。検察側が証拠をねつ造していたことがたまたま発覚した厚生省関連の事例が昨年あったけれど、この件から、絶大な権力を持つ検察という公設暴力団は、狙った人間を刑務所にぶち込むためには、出鱈目な狂言で調書を作成するくらいのことは平気でする連中だということがよく分かるだろう。
 冤罪の事例などいくらでもあるけれど、警察や検察の不正を訴えようにも、裁判にお金がかかるから黙っているだけという人々は、それこそ枚挙にいとまがないほど存在するのである。
 多くの日本人にとって、検察官はきわめて神に近い存在だ。検察の活動が政治家に狙いを定めると、多くの人は大喜びする、新聞もまず非難はしない。検察がこのようなまぶしい御光(オーラ)を纏うことは、残念だ。偽のリアリティの最たるものだからだ。検察庁は法務省の統制下にあるから、結局は官僚制度全体の下僕ということになる。官僚達は強力な政治家たちに脅威を感じはじめたら、検察が面倒を見るのだ。田中角栄にこれが起こり、金丸信にも起きた。(p.274)
 そして現在は、小沢一郎に対して起こされている。現在は みんなの党代表の渡辺喜美が官僚国家日本の行く末を憂えて正論を語っているけれど、日本人全体が官僚たちの恣意を放置するなら、小沢一郎の次は渡辺喜美が標的にされることだろう。

 

 

【日本発の文化は世界を変えている】
 ウンザリするようなことばかり書いてしまったから、最後にひとつ、光が感じられる記述を。
 オランダでは、ポケモンのおもちゃを学校に持って行こうものなら、ポケモンの国から来た生徒ということで、一躍学校の人気者になることでしょう。
 世界各国の若い世代にとって、日本は存在感のある国になりました。(p.94)
 日本を世界に押し上げるのは、なにも政治や経済だけじゃない。世界の若者は、既に日本を新しい時代のトレンドの発信源として認識している。
 西欧のみならず、アジアでもアメリカでも同時進行してきたのである。
   《参照》   『日本人て、なんですか?』 呉善花・竹田恒泰 (李白社) 《後編》
             【日本マンガの世界伝播】

 

 

<了>