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 コンサルタント業界の人々にとって、この本は、基本が全て書かれている教科書のようなものだろう。仕事柄関係なくても、現実世界で優れた業績をあげているコンサルタントさんの著作には、いろいろ面白いことが書かれているからお値打ちである。2005年4月初版。

 

 

【使命感は成功へのエンジン】
 創業者やサラリーマントップの両方を数多く見聞きしているのだが、いずれの成功者にも共通しているのは、「使命感」に溢れているということだ。人間、小成に甘んじてしまう人と、大成する人に分けられるが、大成する人は強烈な使命感を感じさせる。
 使命感や人生観のない人というのは、経営理念がない会社のようなもので経営理念がない会社で成功事例を見たことはない。使命感は成功への最大のエンジンなのである。(p.20)
 お金に興味が無く儲けようが儲けまいが無頓着な人というのは確かに存在する。だとしても、使命感を持っている人は金銭欲だけの人の上をゆくはずである。
 信念で1億円企業は実現できても、そこに使命感が加わらなければ100億円企業にはならない。(p.21)
   《参照》   『人間の本質』 本山博・稲盛和夫 (PHP)
              【事業を始める時の思い】

 

 

【アマゾンの裾野】
 アマゾンという会社がある。書籍のネット販売によって世界を席巻しているというのが多くの人の認識だろう。 ・・・(中略)・・・ じつは、アマゾンは住宅販売も手掛けていて、年間ベースで2000軒程度販売しているという点だ。(p.37)
 一般人なら、「本のアマゾンが、何で住宅なんかを販売してんの?」 で終わってしまうのだろうけれど、ビジネスコンサルタントは、当然のごとく以下のように考える。
 顧客情報と購買履歴が毎日毎日データベース上に確実に蓄積しているアマゾンは、その購買履歴から個別のニーズを導き出し、それに応じた商品提案ができるということ。 ・・・(中略)・・・ 。
 このように考えると、アマゾンは本で世界を制覇するのが本来の目的でなく、本はあくまで世界制覇に向けての「入り口」にすぎないととらえることも可能 (p.38)
 近年のアマゾンは、ブックリーダーの「キンドル」を通じて、「アイパッド」の牙城を崩しつつある。ビジネス史上前例のないIT関連産業の伸展する過程は、あらゆる情報を有効活用しようと発想する人々にとっては、実にやりがいのある分野なのだろう。
   《参照》   『ネット帝国主義と日本の敗北』 岸博幸 (幻冬舎新書)
             【キンドル】

 

 

【ミニモニができた訳】
 じつは、矢口真理という女の子が「モーニング娘。」の他のメンバーと比較して、身長が低いことやスタイルを気にして、「自分は女っぽくない」と思いこんでいたという。そこでつんく♂は、身長の低い女の子たちを「モーニング娘。」から引っ張ってきて「ミニモニ。」を結成。メルヘンティックな衣装で、小さくて可愛らしい雰囲気を徹底的に協調することにした。(p.41-42)
 へぇ~。「ミニモニ」や「モー娘」のメンバーがどうのこうのって全然知らなかったけれど、ビジネスの視点では学びの多い記述である。
 著者は、つんく本人に、なぜユニットからメンバーを出したり戻したりするのか? と直接訊ねたという。
 知らないことは、知っている人に聞くのがいちばんはやい。迷う者は道を聞かず ―― なのである。わからなかったら聞けばよい、調べればよい! それが情報収集の極意である。(p.42)

 

 

【情報収集】
 経営者にも二通りのタイプがある。「自分がこの世で一番」と他人の声に耳を傾けないタイプと、「世の中のすべての人はわが師なり」と、誰に対しても耳を貸すタイプで、どちらが成功する確率が高いかといえば後者に軍配が上がることはいうまでもない。(p.48)
   《参照》   『ソニーな女たち』 多賀幹子 (柏書房)
               【盛田昭夫会長】
 情報収集のとっておきの手をひとつ ――。誰とでも「同じ目線で話す」ということにつきる。(p.48)
 「教えてやる」といわんばかりの上から目線の話し方では、大切な情報など決して聞き出せない。

 

 

【“ガングロ”のキーワード】
 かつて、若い女性の間で顔を真っ黒にして髪の毛を真っ白にする “ガングロ” が流行ったことがある。当時、そのファッズが何を意味するのか街に出かけ直接調べてみたら、キーワードは「ひとり遊び」ということがわかった。(p.52)
 当時、韓国の若者達が「ガングロは日本文化」と言っていたから、しきりに「違う! 社会人になったらしないんだから」と答えていた時期があったけれど・・・「なんだ! そんなことだったのか」 である。
 まさにトレンドではなく、「ひとり遊び」というファッズ(“小さな流行”とか“気まぐれ”の意)だったわけである。

 

 

【時流】
 重厚長大企業の経営者ならいざしらず、これから成功したい、儲けたいと願望する人が若い女性のトレンドに鈍感では成しえないし、安室奈美恵や浜崎あゆみの名前すら知らないようでは論外である。(p.53)

 当時の創業者である船井幸雄に「東京の百貨店を活性化する方法は?」と聞いたこともあったが、そのときはズバリ次のような答えが返ってきた。
「答えは簡単だよ。30歳以上の男性を全員リストラすればいい!」
 ・・・(中略)・・・ これだけ時流が変われば、過去の成功体験の9割は幻といっていいのに、そのことに気づいていないのだ。 (p.54)

 

 

【立看板の位置と色】
 立看板は、カーブ沿いがベストポジション。色は青でも緑でも赤でもなく、黄色基調のものがいちばん印象に残っているはずである。(p.134)
 事故が多いという運送会社の悩みを解決するために、車体をすべて黄色に変えたら事故が激減したという事例が昔から語られている。青色系は小さく見えるから目視を誤って追突されやすい。
 この本も黄色のカバーが付けられているけれど、黄色いカバーの本は、何故か余り多くない。

 

 

【自分を鼓舞する“憤”】
 なにくそ、やってやるぞ、いまにみていろ ――。
 人は自尊心を傷つけられたり、不遇な目にあわされたりしたとき、「何とか見返してやりたい」という感情がわき上がるものだ。そんな「悔しさ」をうまくコントロールすれば、ときとしてそれが大きな「発奮材料」となる、人生が大きく変わるきっかけになったりするものだ。
 「人は憤にて動く」ということだが、「悔しさ」つまりは「憤」は意外なパワーをもたらしてくれる。(p.198-199)
   《参照》   『何のために働くのか』 北尾吉孝 致知出版社
             【憤】

 そうなんだろうけれど、最近は草食系男子が増えているらしいから、慨して憤のパワーは落ちているのだろう。
 単に「英語がうまくなりたい」というよりも、「英語をマスターして同僚の鼻を明かそう」という人の方が、長続きする確率は高いはずである。(p.199)
   《参照》   『昨日までの自分に別れを告げる』 中谷彰宏 (ダイヤモンド社)
             【動機はできるだけ不純な方が、持続する】

 人間の根源的なバイタリティーは、清らから職業意識によって保たれるというよりは、卑近な感情をダイナモとして発現されると考えた方が真実に近いらしい。
 若い時は大いに “憤” を滾らせて進み、ある程度年齢を重ねるにつれて、徐々に “清らかな職業意識” に塗り替えられてゆく、というのが真実なのかもしれない。

 

           
<了>