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 1997年の船井総研の経営セミナー講演集。経営について船井総研の実例が豊富に語られていて分かりやすい。
 

【ハーバード流の経営学に欠けているもの】
 ハーバード流のビジネス学というのは3Sといい、ストラテジー、ストラクチャー、システム(戦略論、組織論、運用論とでも訳すのでしょうか)の3つを1つのベースにして論理を展開しています。 (p.69)
 バーバードで学んできたN君に、船井会長が、船井流の経営学との違いは何かと尋ねたところ、
 ハーバードでは3Sで全てだといわれてきたのですが、どうもそれですべてのようには思えなくなったのです。伸びている会社には、ほかの要素があるように思います。どうも何か東洋的な考え方が必要なのではないかと思い、船井会長や小山さんの本を読みました。・・(中略)・・。
 最後に彼はこう言いました。「経営は “気” で決まると思います」 と。・・(中略)・・。もっとわかりやすくいうと、「社員がワクワク、イキイキ仕事をしている会社には勝てない」 というのです。 (p.70)
  《参考事例》  『惚れて通えば千里も一里』 木村皓一 ミキハウス
                【 社員の調和が素晴らしい 】

 

 

【一生懸命働くのは・・・】
 小山さんが就職先として船井総研を訪問したとき、船井さんはこう言ったのだという。
 「一生懸命働くのは何のためだ」
 一生懸命働くかどうか決めていないなんていえませんから、また黙っておりました。
 「人の2倍働けば2分の1の時間で自分の役割を発見できるかもしれないだろう。人の3倍働けば3分の1の時間で自分の役割に到達することができるだろう。人の倍働くのは、一日でも早く自分の役割に気付くためだ。人の3倍働くのは、人の3分の1の時間で自分の役割に到達するためなんだ。早く役割に到達できたら幸せじゃないか」  (p.123)

 

 

【お客様は、自分たちが共鳴共感できる企業を選択する】
 お客様が求めているのは企業との共鳴感です。価格以上にお客様は自分たちが共鳴共感できる企業を選択するのです。共鳴感が何から生まれるかといえば、トップの確固たる信念です。 (p.146)
 あきたこまちの生産者協会の経営者(涌井さん)は、上下する市場価格に係わらず、一定価格を貫いたのだという。つまり、不作で市場価格が高かったとき販売価格を上げず、豊作で市場価格が下がっても販売価格を一定に保ったのだという。
 マーケティングの原則にのっとって計算して、私(佐藤芳直)はお客様が33%離れるとはじき出しました。しかし、涌井さんは値を下げずに、2年間販売し続けました。その結果は驚くべきものでした。減ったお客さんは7%以下だったのです。 (p.145)
 涌井さんは、不作で市場価格が高かった時、価格を上げないという企業理念をお客様にメッセージとしてきちんと伝えていた。このようなトップの確固たる信念がお客様に伝わっていたことと日本人の国民性が、欧米流のマーケティング理論の枠外だったということだろう。
 モニター募集に関しても、かつては15%程度だったものが、近年では9%という数字になっているのだという。
 お客様の声を聴けば聞くほど、利益が出る。お客様の声を採用すれば採用するほど集客力が高まる。お客様の声を全面的に採用している企業だという人気が、お客様のいちばんの口コミになる。 (p.148)

 

 

【慎み深い日本人】
 日本での返品率の実例を挙げてみます。岡崎のジャスコが95年から1年間実験的に返品制度を導入しました。返品率は0.05%です。・・(中略)・・。ウォルマートの返品率が3%で返品ロスが0.3%ぐらいです。ノードストロームでは返品率が20%あって、返品ロスが5%もあります。・・(中略)・・。日本ではだいたいアメリカの返品ロス率のなんと100分の1です。やはり個人主義であるアメリカに比べれば、日本人はいかに慎み深い国民であるかと感じます。
 日本人は慎み深いからこそ、消費者である日本人を一度でも裏切った企業は、確実に信用を失墜する。

 

 

【良心を曲げれば企業は滅びる】
 イタリアのミラノ郊外に、バルサミコで有名なピッピリという1750年創業の会社がある。現在7代目である。
 「自分たちピッピリは、創業者からいわれてきた理念をひとときも曲げずに守り続けてきました。だから、こうやって存在しているんです」
 「では、その理念というのはなんですか」
 「全力をあげて企業の良心を守ることです。いかなるときも企業の良心を曲げてはならない。これが理念です」 (p.127) 

 

 

【責任者にと任命される人間は・・・】
 「何でお前が夢を語っても彼らはそういう(遅刻するような)態度をとるのか。それは、お前の夢とか指示が、聞いている人間にとって力相応の指示や話しになっていないんだ。俺にはとてもできないと思われるような指示を出すから、前向きにやろうとしないんだ。責任者にと任命される人間は、『部下一人ひとりに対して力相応の指示を出せる力を持った』 と上の人が考えたからだ。だから個別に指示を出しなさい」  (p.196)
 小山さんが、船井さんに言われた言葉だという。   

 

 

【一体化】
 いいときはみんなで利益を分け合い、悪いときはボーナスゼロでも我慢するのが会社だと思います。やはり総帥の船井がいっている以上は、私はつべこべいわずに2002年に昇格を目指し、社員達のリーダーとして頑張っていきたいと思っています。これを一体化というわけです。 (p.84)
 近年、急激に増えている契約社員では、いかんせんこのような一体化に加わることができない。仕事を生きがいとして働くことを欲するのであるなら、正社員の道を選ぶべきだろう。
 
<了>