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 経営コンサルタント会社・船井総研の社長さんの著書。大局的な未来予測は経営者にとっては重要なポイントである。この著書の前半には、近未来の日本経済の予測が書かれている。

 

 

【日本が世界経済の中心となる2つの根拠】
 《1つ目の根拠》 : 文明史学的なサイクルから、2012~2015年頃、日本が世界経済の中心になる。
 予測するには科学的な根拠が必要だ。科学的な文明史学が必要である。
 さまざまな文明史学があるが、私は次のような史学に立ちたいと思う。
 どういう文明史学かといえば、村山節(みさお)氏(1911~2002)の文明法則史学である。 (p.25)
 この村山さんの文明法則史学を最初に紹介していた人は、馬野周二さんだろう。
 馬野さんには、『文明・社会・国家・産業・企業 衰亡の法則』、『栄枯盛衰の科学』 という著書(いずれもPHP)があるし、神国・日本のルーツをも視野に入れた 『人類文明の秘法 日本』 (徳間書店) という本の中でも言及していたと記憶している。
 《2つ目の根拠》 : 経済大国・日本が過去から積み上げてきた債権の総額。
 近未来的に見て、日本が経済的覇権を握るだろうという根拠の一つは、アメリカの国債も含めて世界の金融資産の約半分を所有している事実だ。
 日本の2005年の対外資産残高は422兆円で、14年連続で世界第1位の債権大国の座を維持した。第2位のスイスが50.8兆円だから、いかにダントツであるかがわかる。それが2015年には世界全体の70%を超える可能性がある。
 こうなるとアメリカといえども日本の資金力を無視できない。表向きは勿論、アメリカは軍事大国としてこれからも何十年と存在し続けるだろう。世界第2位から第10位の各国軍事力を合計したものよりもアメリカ1国のほうが大きい。こういう軍事大国は簡単には参らない。 (p.36)
 これと同じことは、増田さんも書いている。 
  《参照》   『そして、日は昇った!』 増田俊男 PHP
             【 「 基軸通貨“円”」 は夢物語か?】

 

【躾】
 自分の会社のことを例にあげて恐縮だが、船井総研の社員で、世間でいう頭の良い社員で物になった者は一人もいない。中ぐらいの頭脳でも、現場に立たせると見事なほどに能力を発揮する。それが人柄である。お客さんに好意を持たれるその人柄は、要するに親の育て方が素直で自然であったからだ。無理に塾に通わせて、高望みをするような学校へ行かせなかった親御さんのおかげである。 (p.78)
 大前研一さんのルーツであったマッキンゼーと、船井幸雄さんの創業した船井総研、この2つのコンサルタント会社の根本的な手法の違いは、かねがね興味深く読み比べてきたのであるけれど、日本には、そして日本人には、船井総研方式が、圧倒的に合っていそうである。
  “ 『質問する力』 ・ 『考える技術』 ” のマッキンゼー方式、に対して、“人間力 (躾)” の船井総研方式と対比できるのであろうか。
 そもそも躾とは着物の仕付け糸に由来する。着物が仕付け糸によって美しく着られるように、子供にも礼儀作法をきちんと教えることで、身のこなしや対応の姿が美しくなるという意味が込められている。 (p.141)
 船井幸雄さんの著書に、『躾』 というタイトルの本があったはずだ。
 教員は学校の帰りにパチンコしている時間があったら、経営コンサルタント会社の皆さんが書いた本を読んでみてはどうだろうか。パチンコ屋に止めておいた車中からPCが盗まれるようなこともないだろうし・・・・・。

 

 

【ロハス】
 1999年に、アメリカのボルダーから始まった。LOHAS(ロハス)は、ライフスタイル・オブ・ヘルス・アンド・サスティナビリティの頭文字をとったもので、日本では、・・(中略)・・、「環境と人間の健康を最優先し、持続可能な社会のあり方を志向するライフスタイル」 である。 (p.94)
 アメリカでこのような動きが起こってきたけれど、国民全体が意識的に取り組んでいるような本当の動向ではないらしい。ベトナム戦争の頃、カウンター・カルチャーがブームとなりながら、結局下火となっていったような経緯をとるのではないだろうか。
 日本では、江戸時代の生活が、完全なエコロジー生活だったことは、既に多くの人々が語っている。高度な技術力に裏打ちされた日本式のロハスが、世界各国にとっても参考となる有意義なロハスのはずである。

 

 

【衣料品革命】
 平安貴族が涼を求めて薄手の生地で夏の装いをしたように、我々現代の日本人にも「平成の和服」があってしかるべきである。「平成の和服」とは、平成の気候にあった天然素材の衣料であり、今、そのような衣料品革命が起ころうとしているのではないか。 (p.102)
 著者は具体的な素材名称を書いてないが、これは “麻” であろう。衣料素材だけでなく住宅素材としても圧倒的に優れた素材であることは科学的に実証済みである。ドラッグとして使用した場合の刑罰を現在の法律よりはるかに厳しくして、大麻の素材としての有用性を活かすよう、法整備をすべきである。
   《参照》  『地球維新 vol.1 』 窪塚洋介・中山康直 明窓出版

 

 

【色偏差】
 地球の地軸は傾いているから、緯度によって太陽光の入り具合が違う。・・(中略)・・。それによって見える色が変化する。それを色偏差という。 (p.116-117)
 この色偏差、具体的には高緯度地方では青が強くなり、赤道付近では赤が強くなるという特徴を示す。
 富士フイルムは、色偏差を取り込んで日本人が好む微妙な色彩を実現することで、赤と青を基調として日本に進出してきたコダックを駆逐したのだという。ここでも、日本人の繊細な感性と精緻な技術力がアメリカのグローバル企業に勝ったことを示している。
 ところで、フイルム時代のカメラに詳しい人々は、富士フイルム製のデジタルカメラの性能を高く評価している。色が綺麗なのである。富士フイルム製のASA機能付小型デジカメに買い換えたい。

 

 

【惻隠の情】
 (『国家の品格』 の著者である)藤原正彦氏はこの中で、“惻隠の情” を「他人の不幸への敏感さ」 と表現し、『平家物語』 の中の熊谷直実が平敦盛の最後に見せる情けの気持ちを例にあげている。これは新渡戸稲造の 『武士道』 にも登場する有名な場面だから知っている人も多いだろう。非常に日本人的な、つまり日本人が共感しやすい場面、心の動きといえよう。 (p.132)
 日本人の “惻隠の情” は、世界でも稀な、非常に繊細な心模様であるといえる。 (p.133)
 大前研一さんが、数多ある著書の中で “惻隠の情” に言及していたことは、ついぞないと思う。
 流石は船井総研の社長という感じだ。

 

 

【もったいない】
 「もったいない」 は単に 「Never Waste(無駄にすることなかれ)」 の意味にとどまらず、愛(いと)おしんでモノを使うこと、大事にすること等を意味し、日本人のモノを大切に使う習慣を表した深い言葉である。
 
2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアの環境副大臣ワンガリ・マータイさんが、この 「もったいない(MOTTAINAI)」 を世界に通じる環境標準語にしようと運動を続けているのもうなずける。
 こうした日本人的な想いを世界の人々が理解すべき時期が近づいていると思う。 (p.143-144)
 日本が世界経済の中心となるとき、世界は日本の文化に熱い視線を注ぐようになるのである。
 著者は、表紙にあるように、「経済大変動の準備をすぐに始めよ」 と書いている。
 その時、日本人が日本文化を語れないとしたら・・・・・いかんともしがたい。
 
<了>