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 ミキハウスという子ども服を専門に扱うこの会社、独身のチャンちゃんには消費者としては縁のない会社なので、オリンピック3連覇の野村選手や、卓球の愛ちゃんの所属会社という程度にしか知りませんでした。


【 子ども文化を創造するため 】
 この書籍の最初の数ページには、ミキハウス所属の選手たちがズラーっと写真で紹介されています。アテネ・オリンピックに出場した選手など、すごい人数です。スポーツの振興を通じて、子供たちに夢と目標を与え続けたいという創業社長である著者の意向に沿った会社創りのようです。
 ミキハウスの本筋は「子ども文化を創造する」ことです。(p.142) 

 とあるように、この会社が支援している対象は、匿名のものを含めると、スポーツ以外にもかなりあるようです。
 富裕層をターゲットにした高級子供服の製造販売会社などという括りは、この会社に対して不当ですし、余りにも失礼すぎる解釈であると、読後に認識を改めました。
 


【阪神大震災で・・・】
 予期せぬ大災害であった阪神大震災の直後、社員が徹夜で手書きのメッセージを一つ一つの服に付けて用意したものを、被災地の子ども達に配ったのだそうです。困っている人々に対して即座に救援の手を差し伸べた人々や企業は、ミキハウスの他にも、ヘリコプターでおにぎりを空輸したセブン・イレブンなど、多くあったことを知っています。
 被災者を即座に支援するという行為は、企業や団体の場合は、経営者や主催者の判断次第です。食料に事欠く被災者に、価格を吊り上げて販売した地元の商店などがあった中で、被災者に対する惜しみない支援を即座に決断し実行した経営者の下で働く社員は、きっと誇らしく思えることでしょう。
 このような救援活動の記述されていた箇所のみならず、感動できる箇所は、この書籍の中にいくつもありました。


【 社員の調和が素晴らしい 】
 通読して、気持ちが良いと感じる書籍でした。それは、おそらく著者である社長さんやこの会社の社員の意識、全てが調和する状態であるからのように思いました。
 船井幸雄さんが、著書の中で 「近年、東京全体の磁場エネルギーが急速に低下している。しかし、そんな中にあっても、業績の良い会社のエネルギーは高くなっている。結局、風水的な対策以上に、そこに働いている社員の心のエネルギーが、磁場エネルギーを高めも低めもする」 という意味のことを書いていました。
 ミキハウス社員の心のエネルギーは相乗的に会社の業績を高めているに違いありません。著者自らが、自社の社員の仲の良さに驚いているような記述があったくらいですから。


【 トータル・ファッションという視点 】
 ミキハウスは創業の頃から、子どもの靴から帽子までトータルでコーディネイトし、販売したかったようです。顧客支払単価が上昇してきた近年、この企画意図は十分に成果を上げているようです。
 トータル・ファッションという視点は、子供服ばかりではなく、あまり洋服売り場をうろつきたくない男性のカジュアルについてもいえることのように、私には思えるのです。特に、小型電子機器の携帯を視野に入れた旅行用カジュアルなど、トータルで服装を組合せて販売する旅行会社があってもよさそうに思えるのですが、そのような企画を見たことはありません。


【 子ども文化は日本のお株 】
 技術立国・日本と文化立国・フランスの貿易状況を見ると、現時点では日本の輸入超過状態なのだそうです。大人の女性物の化粧品・香水などの金額が多いそうです。
 世界の文化の担い手は、次第に若年層に移行しています。子供がお年玉などで年間に数万円も手にする国は、世界広しといえども、日本しかありません。このような国である日本に、子ども文化が育まれない訳がないのです。マンガ、PCゲームなどについで、ミキハウスやサンリオのような、『子ども文化を創造している日本企業』が、日本文化を世界に広める、第2陣になるのは間違いないように思います。

 

<了>



    《 子どもの文化を創造しているもう一つの会社の読書記録 》
         『サンリオ物語』 西沢正史 サンリオ