《前編》 より

 

 

【中国のバブル化】
 「中国の人は家を買うとき借金をしない。したがって住宅ローンを払わなくてすむ」
 中国人と結婚した私の友人がこう言ったことがあるが、中国経済の大きな特徴は2000年代初め住宅バブルが始まったにもかかわらず、アメリカのようにはそのための月賦、モーゲージ、借金がまったく増えていないことである。
 もうひとつ注目すべきことは中国人が日本人と同じように貯蓄に励む傾向がある点で、バブルの中でも借金をせず、預金は順調に増え続けた。
  ・・・(中略)・・・ 。
 こうした基本的な状況の下で経済が拡大し、資本が増強され、安定した中国経済が世界的な不況の中でも続いたのである。(p.162-163)
 オバマ政権はゼロ金利政策を長く続け、安い金利の資金を提供して中国での株や土地不動産の購入ブームに火をつけたのであった。(p.159)
 大企業はロックフェラーの目指す長期的戦略から中国に向かうのだし、ジャブジャブのドルはアメリカの住宅バブルに再来はないと知っているから、やはり中国へと流れてゆく。
 オバマは中国に対して、強硬な姿勢など全くとれない。アメリカは中国をバブル化することによって延命しているのであり、1にも2にもアメリカ経済の終わりの時を中国に見透かされているからである。
 オバマ大統領は、中国のやっていることに一切批判的な態度を明らかにしておらず、2009年夏に中国を訪問する前に、チベットの精神的な指導者ダライ・ラマがワシントンにやってきたにもかかわらず、会おうともしなかった。(p.176)
 以下のようにも書かれている。
 オバマ大統領が現在始めている日本企業叩きは、大きい目で見れば中国市場をめぐっての日本とアメリカの経済戦争であり、日本企業をアメリカ政府の政治力を使って締め出そうという動きなのだ。オバマ大統領の行っているトヨタ叩きというのはまさに中国の市場をめぐって、オバマ大統領が日本に戦いを挑んできたと考えるべきである。(p.209)
 オバマの前の民主党政権であるクリントン大統領に時は、まさに日本恫喝政治だったし、共和党のブッシュにしても恫喝はしなかったけれど、小泉改革に乗じて日本の資産を根こそぎ持っていたのだから、それらの繰り返し的延長としてこのような解釈もありうるだろう。

 

 

【台湾への武器売却】
 台湾への武器売却に関しても、以下の様に記述されている。
 オバマ大統領の台湾に対する兵器売却の措置に対して、中国政府は憤慨しているという表現を使って厳しく批判した。 ・・・(中略)・・・ しかし、 ・・・(中略)・・・ いわば見せかけのだけの抗議であったのだが、中国政府が本気になって腹を立てていないのは、オバマ大統領が台湾政府が最も欲しがっていた新しい戦闘爆撃機F16Eの売却や音を出さない静かなディーゼル型潜水艦の設計図や部品を売り渡さなかったからである。(p.173)
 クリントン政権のとき、アメリカは中国へ、長距離弾道ミサイルや宇宙ロケットで必要となる姿勢制御技術を売却している。台湾に何を売るかに関して、アメリカが中国の意向にそむく時は、本気でアジアを戦場にするシナリオを実行する時なのであろうけれど、米中の経済がドルにリンクしている限りそれはない。
 しかし、アメリカの債権に仕組まれた2012年という償還期限は明らかな時限発火装置だから、現在、貿易相手の各国と 「元」 での決済を推進している中国が、それに先んじてアメリカに見切りをつけようとすれば、アメリカは台湾にすべてを売却してアジアに火の手が上がるということがあるのかもしれない。
   《参照》   『ドル亡き後の世界』 副島隆彦 (祥伝社) 《前編》
                 【償還期限】

 米中がどうであれ、このような世界中で起こりつつある国益がらみの競争(狂騒)的混乱に先んじて、地球環境はオカシナことになってゆくことだろう。人類が狂っているから地球環境もオカシナことになるのである。

 

 

【オバマの中国寄り姿勢は、負い目だけが原因?】
 オバマ大統領の中国寄りの姿勢は、アメリカが中国に借金しているからという負い目からだけで出ているわけではない。この点ではアメリカのジャナリストたちの見方は甘すぎるのではないかと思う。オバマ大統領の考え方や演説を聞いていると、資本主義そのものに対する批判が強い。資本家たちは金儲けだけを考えているひどい人種だと言ってみたり、金儲けだけがすべてではないと述べたりしている。このことは裏返せば、かつてソビエト共産党の実現を助けたレッズと呼ばれたアメリカの若者や、毛沢東に味方をし肩入れをしたアメリカの文化人と共通したところがあるように思われる。
 オバマ大統領は共産主義者ではないかもしれないが、アメリカ資本主義や日本を快く思っていない。思想的にはきわめて革新的で、共産主義を受け入れている政治家なのである。(p179)
 この解釈は確かにありうるだろう。但し、共産主義を受け入れているのではなく、グリーン・スパンの思想的先人であるアイン・ランド女史の思想に絡んでいるのかもしれない。共産主義も資本主義も、王政を倒し経済を牛耳るためにロスチャイルドやロックフェラーといった金融資本家達によって作られてきた形態である。
   《参照》   『連鎖する大暴落』 副島隆彦 (徳間書店)
               【アイン・ランド女史】

 

 
<了>