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 冷戦とは、戦争を想定した軍事力増強の時代を意味している。人民の幸福は一切かえりみることなく軍事力増強ばかりに狂奔する中国と、その過程を詳細に認知しているアメリカの対抗措置としての軍事力刷新。
 この本を読めば、日本が、「防衛庁」 を 「防衛省」 に格上げしなければならなかった理由がわかる。


【経済が成長しても雇用が増えない中国】
 期間    経済成長率   雇用増加率
1985-1990____ 8.8% ___ 2.6%
1991-1995___ 12.2% ___ 1.2%
1996-1999____ 8.7% ___ 0.9%  この数字は何を意味するのか?労働者の利益が図られていないということを意味する。地方の官僚や政治家たち、ビジネスマンが儲けをすべて自分達のポケットに入れているからだ。 (p.179)

 中国全体、即ち人民を豊かにするという目的は、中国政府にはない。集められた利益は、軍事力増強にこそ率先してつぎ込まれる。共産主義国家の唯一の目的とは、人民を豊かにすることではなく、軍事力によって世界を制覇することである。


【経済戦争の覇者】
 中国がドルを貯め込めば溜め込むほどアメリカの金融機関は、情報操作でいつでも損害を与えることができる。このことにきづいた中国政府は、ドル・システムからの脱却を考え、中国人民元を基軸通貨にしようと言い出しているが、こちらの方も難しい。(p.165)
 アメリカの金融機関はIT時代に入ってから、中国経済の拡大よりも早いペースで大きくなりつづけているのである。いま特に注目されているのは、ゴールドマンサックス、メリルリンチ、モルガンスタンレー・・・・といった巨大な金融機関である。 (p.166)
 アメリカのドルや、それにもとづくアメリカの対外債務を管理する巨大な金融機関の中身や活動の内容は殆ど明らかにされていない。まさにブラックボックスである。 (p.167)

 


【基軸通貨:ドルの不思議】
 第二次大戦後、アメリカの経済力が抜きん出て、金とのリンクが切り離され、ドルのみで決済が可能になって既に半世紀。日高さんの本を読んでいると、基軸通貨としてのドルの強さは、アメリカの軍事力には関係するものの、アメリカの実体経済力とは無関係であることが良く分かる。
 アメリカが工業国として製品を輸出する売り手であってはドルは世界に広まらない。買い手であることでドルが世界に流出し広まるのである。外国の政府や富裕層に保有されているドルを、利殖のための投資としてアメリカ国債に仕向けさせ、これをアメリカの金融機関が管理しさえすればアメリカは経済的な覇者たりうるのである。
 具体的にはこういうことだ。(下記)


【ドル還流のシステム】
 対米貿易で黒字となった国は、多額のドルを手に入れる。日本であり、台湾であり、中東の産油国であり、現在の中国である。日本や台湾の場合は、溜め込んだドルで、アメリカの軍需品やアメリカ国債を買うことで黒字分を吐き出してきた。しかし、長期国債に関して、数十年後の償還期限が来ても、日本が買ったアメリカ国債は、人質ならぬ債権質状態だという。証書が持ち出せないので国債を換金できないのである。台湾の場合も日本と同じことになるだろう。
 産油国の中東に貯まってしまう多量のオイル・ダラーは、王族の通常の贅沢程度で消費できる額ではないから、戦争の危機を煽って武器を買わせ、戦争を起こし武器を消費させ、ついでに都市と建物を破壊する。そうしておいて戦後、復興ということで、軍需産業とリンクするベクテルなどの土建屋が都市を再建する。こうして中東に貯まったオイル・ダラーを二重に還流させてきたのである。


【中国が経済崩壊することなしに冷戦終結はありえない】
 現在の中国に貯まりつつあるドルを還流させるために、アメリカが取る方法は、日本や台湾の方式にならないことは確実である。そうであれば、基軸通貨ドルに従順ならざる中国が、軍事力を増強しつつある現実は、アメリカにとって最もストレス発散の好材料ということになってしまう。
 中国が、この本に具体的に記述されているように、軍事力を増強し続ける共産主義覇権国家である限り、どうしたって、米中の間に挟まれた日本が有事に備えない訳にはいかない。


【日本はアメリカと組まざるを得ないが・・・】
 中国とは違った意味で、アメリカも勝手な国である。だがアメリカは少なくとも、日米の相互関係を大事にし、アメリカと日本の双方がより豊かに、より強くなることを基本にしてきたことは確かである。 (p.187)

 著者の見解に反論する日本人はいないだろう。
 これに対して、上海の日本大使館に石を投げつけて、しかも「日本が悪い」とのたまわった中国人を、日本人はホトホト嫌いになった。尖閣諸島問題と竹島問題は、同日にニュースとなる。韓国は中国の属国であることを選択している。
 日本人は絶対に戦争を望んでいないが、中国がアメリカに対抗して覇権意欲を持ち続ける限り、日本人の望みは叶わないことになる。

 

<了>

 

  日高義樹・著の読書記録

     『アメリカの新国家戦略が日本を襲う』

     『いまアメリカで起きている本当のこと』

     『アメリカの日本潰しが始まった』

     『アメリカの新国家戦略が日本を襲う』

     『ブッシュのあとの世界』

     『米中冷戦の始まりを知らない日本人』