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 アメリカは良くなるのか悪くなるのか、明確な記述はない。本質的な景気回復に至っていない現状と、アメリカがそうやすやすと衰退することなどありえない、という根拠が書かれている。2011年4月1日初版。

 

 

【アメリカのエネルギー革命】
 アメリカは最近、地下深くのオイルシェールを天然ガス化する技術の開発に成功したためエネルギー事情が大きく変わり、アメリカ政府は、原子力発電所を援助するかどうか迷っている。このため日本企業がアメリカで建設しようとしている原子力発電所の建設計画が予定通り進まなくなっている。(p.57)
 地球温暖化を追い風に、発電コストが最も安いのは原発であるという理由を大きな柱として、世界的な原発推進の動きがあったけれど、今回の地震による福島原発の事故で、これらは一挙に縮小するだろう。大いに良いことである。原発製造技術を持つ東芝など日本企業の利益が上がるとハシャイデいたマスコミは、世界の本当のあるべき姿など考えてはいない。原発製造に関わる日本の国益より、原発を使わないという世界益の方がはるかに重要である。
 オバマ政権が打ち出したエネルギー政策はほとんど失敗していたことが、下記の本に書かれていたけれど、
   《参照》   『アメリカの日本潰しが始まった』 日高義樹 (徳間書店) 《前編》
             【クリーンエネルギー政策】

 オイルシェールは、アメリカを再浮上させるかもしれない非常に大きなエネルギー技術なのかもしれない。就任当初から原発推進に後ろ向きだったオバマ大統領が、日本の震災直後に、日本人に対してメッセージを送っているテレビ画面を見ながら、大統領がやけに嬉しそうな表情をしていたように見えたけれど勘違いではないだろう。福島原発の事故によって、オイルシェールのエネルギー化を推進する強力な後押しが出来たのである。
 2010年の暮れ、全米商工会議所でエネルギー問題会議があったあと、ガイス前次官補は私にこう言った。
「アメリカエネルギー省は、地下2000メートルのところにある数千メートルにわたって分布して存在しているオイルシェールを天然ガス化し、地上で採取する技術を完成した。この技術が一般化すれば、天然ガスの値段は原子力発電のコストより安くなる。しかも、向こう数十年間、アメリカはエネルギー問題で悩まなくてよくなる」 (p.200)
 参考文献によると、オイルシェールの埋蔵量は、原油の埋蔵量の2倍から3倍にのぼると見られている。確認されているだけでも3兆数千億バレルもある。スウェーデンやブラジルなど、石炭が埋蔵されている地域では多量に見つかっている。(p.201-202)
 このオイルシェールによるエネルギー革命は、今後のアメリカと世界に対してどの程度の影響力を発揮するのだろうか。
 オイルシェールの天然ガス化技術に見られるように、アメリカ人のインジェニュイティー(創意)は顕在である。アメリカでは技術革新によって、突然のように新しい動きが始まり、新しい政策が作られ、社会が一挙に走り出す。最近ではデジタルによるIT革命だった。 ・・・(中略)・・・ 。アメリカのエネルギー政策を見ただけでも、アメリカ衰退論というのが、アメリカのいまの現実とかけ離れていることがはっきりと見てとれる。(p.217-218)
 オイルシェールが、ニューエコノミー派の根拠となっていたIT革命に匹敵するか、あるいはそれ以上のものであるなら、急速なアメリカの衰退は決して起こらないだろうし、長期的な国家盛衰のサイクルを根拠として語られた数々のアメリカ衰退論も、いやまてよ・・・という感じになってくる。
 しかし、世界中にばらまかれて過剰流動しているドルが、致命的なマイナス行動を起こす前に、それらを吸収しコントロールできるほどにアメリカ経済が強くなるかどうか・・・、そこまで楽観はできない。

 

 

【金本位制への移行】
 いまアメリカで注目を集めているのが、 ・・・(中略)・・・ ウイリアム・グリーン博士の 「金本位制に戻るべきだ」 という主張である。 ・・・(中略)・・・ 。
 グリーン博士は進歩派の学者で、オバマ大統領のために政治ネットワークを作り上げたことで知られている。グリーン博士の進歩派勢力に対する影響力は強く、いまアメリカの大学でこの意見をめぐる議論が爆発的に拡大している。(p.67)
 金本位制は、今世紀初頭から密かに進められているNESARAの骨子でもあるから、アメリカの銀行はかなり前から下準備を始めて今日に至っているはずである。
   《参照》   『世界を変えるNESARAの謎』 ケイ・ミズモリ (明窓出版)
              【NESARA】

 

 

【現在のアメリカの経済状況】
 オバマ政権と連邦準備制度理事会がいくらドルを多量に刷っても、アメリカ経済は、構造的にはほとんど良くなっていない。その証拠として表面的には株の価格が上がったり、企業の利益が増えたりしているが、雇用が増えず、失業者が減っていない。
 アメリカ経済の重要な柱の一つが住宅産業だが、住宅の値段は依然として下がり続けている。(p.83)
 比較的安定しているワシントン郊外にある著者の住宅の評価価格も下がっており、中西部やフロリダあたりでは半額になっているところがたくさんあるとも書かれている。
 2011年に入ってからも、アメリカの住宅の値段は依然として下がり続けている。(p.108)
 「住宅産業が回復しないかぎり、アメリカの経済は回復したとは言えない」
あらゆる経済専門家がこう言うが、逆に言えば、失業者が減らなければ、住宅の売れ行きは伸びないのである。(p.174)
 これらの文章が記述されている第4章の見出しは、「アメリカ経済はもう一度悪くなる」 となっている。

 

 

【アメリカの経済基調をプラスに支える人口増】
 アメリカでは人口も増え続けている。クリントン時代、3億を超した人口はまもなく4億になろうとしている。このため、国内市場と消費が拡大を続けている。こうしたいわば、自然の成り行きによって、アメリカ経済は好転している。劇的な展開ではなかったものの、アメリカは不景気と決別し、心配された不況の影も遠のいている。(p.99)
 これを読むと、人口がどんどん減っている日本のことが心配になってくる。
 日本の国富を支えているのは、民間企業の優れた技術力なのだろうけれど、社会主義的官僚国家とでもいうべき構造によって、税金として集められた国富は働いている民間から、殆ど働いていない官僚に移送されるようになっているのである。そのような構造であるために、貧富の格差が放置されている日本である。
 1970年代頃までの日本には、良識に満ちて優秀な官僚や公務員が多かったから、非常に優れた均等な社会が実現できていた。しかし、現在の官僚や公務員の資質はかつての反対だから、民間が稼いだ国富を私的に収奪して平気なのである。
   《参照》   『中国バブル経済はアメリカに勝つ』 副島隆彦 (ビジネス社) 《後編》
             【中国が腐敗しているというなら、日本は清らかなのか?】

 

 

【アメリカの強さの秘密】
 中国共産党と国家が支配している中国の大学は、愛知県立大学よりもイデオロギー独善に固まっており、科学技術の革新とは全く関わりがないだろう。強い力で世界を動かしていくアメリカの最大の原動力は、教育機関である大学が、イデオロギー教育に没頭することなく、社会のネットワークの要素として活動していることである。アメリカの強さの秘密は、アメリカの大学にある。(p.213)
 国連の教育白書は、世界で最も優秀な20の大学のうち、17はアメリカの大学であると指摘しているそうである。残り3つの中に、東京大学が入っているという。それは、近年になって産学協同の研究が行われるようになってきているからだという。
 著者と同じように、アメリカの大学教育の強さを認めている人に大前研一さんがいる。
   《参照》   『さらばアメリカ』 大前研一 (小学館) 《後編》
            【So long, America! …. until you come back to yourself.】

 そして、上記と同様な、北京大学の唖然とする教育の実情も、日下さんの著作に記述されている。
   《参照》   『国家の正体』 日下公人 (KKベストセラーズ)
              【北京大学の学生】

 しかし、昨夜(4/4)のNHK衛星放送で、アメリカの大学ではセクハラ問題が取りざたされており、この様なことが事実であるなら大学は国家から予算を獲得できなくなる、という報道がされていた。取材されていたのは、クリントンやヒラリーが出たイェール大学だったけれど、潜在的に殆どの大学で共通する問題であるらしい。