イメージ 1

 2010年も終わろうとする今、黄金時代なんてとても言えない感じだけれど、この様な予測をした根拠と考え方から、いろいろ学ぶことはできる。2007年9月初版。

 

 

【中国特需を予測したポイント】
 それまでは中国の本国に住んでいる親族がアメリカにいる自分の家族にお金を送っていました。貿易収支が黒字でも、稼いだお金がおメリカに流出していたわけです。「将来、アメリカに亡命する時に、そのお金を使わせてくれ」 という理由で送金していたのです。
 しかし、2001年ごろになると、この流れが逆転しはじめました。アメリカに住んでいる中国人が、逆に中国に投資し始めたのです。(p.44)
 その原因は、朱鎔基による国有地を自治体のものにするという憲法改正や、税制などの優遇された経済特区の創設だという。
 同じ時期に流れを変えて還流していたのは、お金と人の両方だった。
   《参照》   『ザッツ・ア・グッド・クエッション!』 譚璐美 (日本経済新聞社)
             【中国人留学生減少の訳】

 

 

【日本の経済予測には外国人を使う】
 日本の経済予測をする場合なら、日本に詳しい外国人を使うのです。 ・・・(中略)・・・ 外国人なら、日本社会の常識やタブーにとらわれずに、物事を見ることができるし、独自の情報も持っています。(p.66)
 日本人が自覚できない日本文化の良さも悪さも、外国人の客観的な外からの視点によって、はじめて自覚できるようになる。

 

 

【イギリス人の投資における経験知】
 彼らは自力で産業革命を起こし、世界の海を支配しています。日本人とは比較にならない経験知を持っているわけです
 例えば投資顧問業というのは、今では当たり前の産業ですが、イギリスが発祥です。(p.70)
 スコットランドの中心にあるグラスゴーという港町は、アメリカへと向かう大西洋航路の拠点であり、日露戦争で戦ったロシアの軍艦も日本の軍艦もここで作られたという。そのような経緯から、造船成金が続々と誕生し、このお金を預かって資産運用の仕事を始めたのが世界で初めての投資顧問業なのだという。アダム・スミスもグラスゴー大学にいた。
 著者が提携しているイギリス人の投資顧問が、日本企業の中からいいと言ったものは半年ぐらいすると、実際に上がるという。
 「自分は話に聞いているだけの歴史だが、それでもイギリスの歴史を勉強していれば、どういう時期にどういう産業が伸びたかが分かる。その通りの順番で日本の企業を買っていくだけだから、実に簡単なんだ」(p.73)
 今日でも、イギリス人の投資顧問は、世界をまたにかけて大活躍中である。
   《参照》   『世界を知る力』 寺島実郎 (PHP新書) 《前編》
            【ユニオンジャックの矢】
              ~【シンガポール~シドニー】
 イルミナティ・メーソン(フリー・メーソン)の中で、光の側を司るメンフィス・ライトに対し、闇の側を司るのはスコティッシュ・ライトといわれているけれど、グラスゴーの資金力こそが「闇の支配者」の財政を支えていたのだろう。本書の出版元である幸福の科学も、「闇の支配者=DS:ディープステート」側の宗教団体である。
   《参照》  『3・11人工地震でなぜ日本は狙われたか〔3〕』 泉パウロ・高山長房 (ヒカルランド) 《後編》
           【日本のフリーメーソンたち】
           【メイソンの黒い教皇 : アルバート・パイク】
           【「やつら」その3】
 

 

【松下飛躍の最大の秘密】
 松下電器は家電専用のモーターを新しくつくろうとした上に、東芝や日立の工場を足したものより大きな工場を作ったのです。これなら東芝や日立が束になって、いくら安売りをしても、びくともしません。(p.77)
 松下幸之助さんがアメリカへ行ったとき、観光予定を断って、アメリカ人の普通の家庭の暮らしぶりを見て回ったという。そこで、自分の会社で家電用のモーターを生産するというところまで発想したことが大きいと書かれている。用途が多い基幹部品としてのモーターは、経営の基幹をも支え松下電器を飛躍させたということである。
 時代は新しくなるけれど、超小型モーターを開発して大躍進し、中国など海外にも進出しているシコー技研のような会社もある。
   《参照》   『誰もやらない。だからやる』 白木学 (祥伝社)

 

 

【イールドスプレッド】
 グリーンスパン氏からは、もう一つ重要な指標を教わりました。
 イールドというのは利回りという意味で、スプレッドは差とか格差という意味です。 ・・・(中略)・・・ 「世界のファンドマネージャーはこれで判断している」 と聞いて私も使うようになりました。
 実は私が80年代末に株価が3万8000円で下がると弱気論を言ったのも、このイールドスプレッドが根拠です。 (p.86)
 イールドスプレッド = 〈10年ものの国債の利回り〉 - 〈益回り〉
 という式になる。
 まず、10年ものの長期国債の利回りを取ります。今日本だと1.6%ほどです。
 次に株式の益回りを取ります。益回りという言葉は耳慣れないかもしれませんが、一株当たりの利益を分子にして、分母は日経平均でも個別の銘柄でも何でも構いません。すると益回りが何%という数字が出せるはずです。2008年3月期決算の一株当たりの利益予想が930円、日経平均が1万6500円(2007年9月1日現在)で計算すると、5.6%くらいになります。
 この長期金利の1.6%から益回りの5.6%を引くと、マイナス4%になります。これがイールドスプレッドです。マイナス4%というのは、実はかなり低い数字です。経済理論では、イールドスプレッドは経済成長率と一緒ということになっています。現在の日本の成長率はだいたい2%ほどですから、本来イールドスプレッドも2%でなければなりません。なのにマイナス4%ですから、6%もズレがあるわけです。それだけ日本株は割安ということです。(p.87-88)
 日本株が割安なのか、何らかの理由で長期金利が異常に低く抑えられているのか、そこらへんは政治的な要因もあるから、あとは自分の頭で考えよう。
 経済指標として耳にすることのあるイールドスプレッドの中身を知ってないと、ニュースや記事自体が単なる雑音になってしまう。

 

 

【土地の購買層】
 土地というのは37歳から40歳という家を買う年齢層の人口が多いと上がっていくというデータがあって、人口の多い第二次ベビーブーマー世代がこの年齢になる2010年代には相当上がるはずだという予測が立ちます。ということは、土地の問題もいずれ解決すると読んで、私は強気に転じたわけです。(p.96)
 タイトルにある黄金時代の主要な2つの根拠は、中国特需と、この住宅購入年齢層のピーク化なのだろう。
 前者に関しては、輸出で利益をあげている製造業関連の人口比は5%。20人に1人。この比率でも海外への輸出が堅調であれば、繁栄は徐々にすそ野にも広がるだろうという見通し。
 しかし、格差社会の最大要因となっている、雇用形態についての言及は一切ない。輸出産業が潤っても、契約社員とか期間工のような雇用形態によって、かつての高度成長期のように、その利益がすそ野に広がっていない。であれば、住宅購入年齢層も、その総数を割り引いて考えざるを得ない。総数が大きくならないのだから、土地もそんなに上がらない。巡って企業の含み資産も増えず、好況には至らない。そんな現状だろう。
 一億総期間工化を目指して小泉改革をバックアップした外需依存型大企業からなる経団連は、結局のところ大多数の国民の幸せ実現を放棄することによって、自らの繁栄を制限したと同時に、公器として社徳を積むことも放棄したようなものだろう。
   《参照》   『トヨタの正体』 横田一・佐高信 (金曜日)
             【一億総期間工化】

 

 

【幕末以来、日本はツイていた】
 マレーシア前首相のマハティールさんは、「日本はすごくツイている」 と話していたという。
 幕末。当時中国はアヘン戦争の後、上海などを列強にとられてしまって、政府がガタガタになってしまった時に、日本は横浜も神戸も外国に占領されなくて済みました。
 明治維新もあれだけの革命なのに無血に近い状況で成し遂げました。 ・・・(中略)・・・ 。
その後、イギリスと同盟を組んだことも重要でした。たまたまイギリスはアジアで仲間が欲しいと思っていたタイミングだったので同盟を組めたわけです。 ・・・(中略)・・・ 。
 戦後日本は焼け野原になったため、もう一度ゼロから工業化を始めました。そのため、世界で最新鋭の技術を導入することができました。他の国は古い工場を使わざるをえませんでした。 ・・・(中略)・・・ 。
 その上、原油も非常に安かったし、鉄鉱石も安かったので工業化が安いコストでできました。 ・・・(中略)・・・ 当時は日本だけが工業化していたので競争も少なくて済みました。だから非常にツイていたというのです。(p.152-153)
 「運やツキも実力のうち」 とは言うけれど、運やツキだけで事が成るわけではない。運やツキを活かせる国民的な資質があったことが、日本経済発展の最大の要因である。
   《参照》   日本が経済成長したその理由は?

 

 

【ナノテク半導体を呼び込んだツキ?】
 ツキについては、まだあります。
 エレクトロニクス分野では、日本はかつて半導体の技術で世界一でした。ところがクリントン政権の時代に、随分日本はいじわるをされて、「日本の半導体は世界最大のマーケットなのだから5分の1は海外のメーカーに譲れ」 などと圧力をかけられ、韓国のサムスンや台湾の会社が躍進するようになりました。当然アメリカも入っていて、「半導体のノウハウを講習しろ」 などとひどいことを言って、日本の半導体メーカーをトップから引きずり下ろしたのです。(p.156)
 クリントン政権時代の日本恫喝状況は、副島隆彦さんの著作にも具体的に書かれていた。その一部をかつて書き出してもあるけれど、この本にも具体的にたくさん書かれている。しかし、日本のメディアはアメリカに隷属しているから、そんな悪しき事実は決して報道してこなかったのである。2008年の大統領選挙で、オバマではなくヒラリー・クリントンになっていたら、それこそ “悪夢再び” になっていたことだろう。
 横道にそれたけれど、アメリカの恫喝によって、半導体製造を制限された日本は、ナノテク半導体へとシフトし、これを完成させたのである。
 今日、デジカメに使われているCCD、そしてDVDレコーダーに使うシステムLSI。いずれもナノテク半導体なのだという。CCDはソニーが開発し、システムLSIを製造できるのは松下と東芝だけだという。
 それにしても、これってツキ?
 そんなんじゃないだろう。
 1970年代のオイルショックをばねにエコ技術を開発した時もそうだったけれど、日本人は傲慢じゃないし、日本には下向きで優れた研究者が多いのである。これは 「ツキ」 ではなく日本の 「実力」 である。
 

 

<了>