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 富裕層という庶民とは懸け離れた人々の人生に憧れはないけれど、そういった人々の発想と、それが根差す世界には興味がある。諸外国の異文化に興味を持つのと似たような動機である。

 

 

【所有せずレンタルが基本の富裕層】
 ビバリーヒルズには、賃貸物件がたくさん出ています。
 ビバリーヒルズは賃貸で成り立っており、買う人は意外に少ないのです。
 家の所有者は、家の中にいても退屈だから、自身は豪華客船に一年中乗って、持ち家は賃貸に出して家賃収入を得ているのです。(p.49)
 日本は土地本位制の発想だから、自分の家を立てます。
 ヨーロッパでは、土地を買っても、借地権の期限があるので100年後には返さないとなりません。
 永遠に買えるのではないのです。
 「100年間を買う」、つまり、借りているのと同じ発想です。
 「買うイコールモノを持つ」 という発想ではないのです。
 富裕層は常に 「買う」 ことより 「いかに使うか」 を重視しているのです。(p.50)
 これを読んで、富裕層云々より、中国の土地制度のことを思い出してしまった。不確かな記憶なのだけれど、中国には30とか40年単位で借地権の定めがあったのではなかっただろうか。であるならば、中国の経済成長が始まってそれくらいの期間が過ぎようとする近未来に、これによる大層な混乱が生ずることになるだろう。
   《参照》   『日本力』  伊藤洋一  講談社

            【中国における定期借地権という問題】

 

 

【ファーストクラスとビジネスジェット】
 ファーストクラスなら、空港に到着したら一番最初に降ろしてもらえるから、他のお客様より先に税関へは辿りつけますが、たかだか同じ飛行機を降りる順番の話です。 ・・・(中略)・・・ 。
 これに対し、ビジネスジェットは、到着次第、入国審査官が飛行機に上がってきて判子を押すだけなので、飛行機から降りてそのままリムジンに乗って、行きたいところへ行けます。(p.59-60)
 準富裕層(成金)はファーストクラス、真の富裕層はビジネスジェット。
 本当のお金持ちは、時間などいくらでもあるけれど、税関に並んで待つなどという庶民的なことはしない。
 空港で、ガルフストリーム社の小型ジェットを見つけたら、それが個人所有のビジネスジェットである。
 真の富裕層が買うのは、モノではなく時間でありストーリーである。
 
 
【ストーリーのために大負けもよし】
 真の富裕層に売るべきものは、モノではなくストーリーです。
「この商品にはこういう機能があります」 と機能をウリにしたり、「これだけお安くなります」 という情報をいくら提供しても、ストーリーにはなりません。
 ギャンブルで負けることは、ストーリーになります。
 そのストーリーを買うために、富裕層はフィーを払っているのです。(p.83)
 

【銀座のクラブのレゾンデトール】
 銀座のクラブに足繁く通ってお金を落とすことは、ただ遊びに行っているわけではありません。
 そこでお客様を次から次へと紹介してもらい、富裕層ビジネスを成功させている人が現実にいます。(p.128)
 なるほど、ビジネスを前面に出さずに、そのチャンスとなる人脈を作る場ということか。
 ビジネス・コラボレーションのために企業合同セミナーのようなものも行われているけれど、真の富裕層はそのような場所へは現れない。
 名刺の要らない人、そして名刺交換の嫌いな人が富裕層です。 ・・・(中略)・・・ 。本当に富裕層と友達になりたい人は、名刺を出しません。名刺を出した時点で、自分たちとつき合う相手ではないと判断されるからです。(p.146)
 ゆえに、クラブのような場所が仲介業として存在する意義がある。
 準富裕層(成金)は成金クラブへ、真の富裕層は、堅実クラブへという住み分けがありうるかも。
 前者が、六本木系 で、後者が 銀座系 なのかも。

【富裕層研究】

 150年ぐらい前、パリに世界初のデパートが生まれたときは、誰もがびっくりしたのです。
 今ではいたるところにショッピングモールができ、デパートやスーパーで、誰もが買い物を楽しめるようになりました。
 ショッピングという娯楽が、貴族階級から中間層にまで、広がったのです。
 すべての文化・経済活動は、富裕層のライフスタイルに追いつく作業です。
 富裕層を研究するのは、準富裕層ビジネスや一般の人相手のビジネスにおいても大切なことです。(p.112)

 “すべての文化・経済活動は、富裕層のライフスタイルに追いつく作業です” とあるけれど、贅を尽くした文化や、それを可能にする豊富な資金を供給するための経済活動を意味しているのだとしたら、それは西欧発のライフスタイルに追随するものではあっても、日本人本来のライフスタイルに当てはまるものではない。
   《参照》   『美的のルール』 加藤ゑみ子 DISCOVER
             【日本人の美意識】

 今日のように格差社会になれば、経済的な制限から選択せざるをえない一般人のライススタイルが、真の富裕層のそれに似てくる可能性があるとすれるなら、その場合のキーワードは “風流” だろう。
 既に日本人の若者の多くは、車の所有や持家を是とせずレンタルや賃貸で良しとしているし、お金より時間を優先している。時間を有効に使うのにお金が絶対に必要という発想もない。準富裕層(成金)とそれに憧れる中途半端な人々だけが、新時代の潮流を自覚できずに前世紀の延長戦をダラダラと続けながら勝ち組になろうとしているだけだろう。
   《参照》   『数年後に起きていること』  日下公人  PHP研究所

              【二極化】
   《参照》   『「質の経済」が始まった』  日下公人  PHP研究所

              【風流国の日本】
   《参照》   『すでに世界は恐慌に突入した』 船井幸雄・朝倉慶 ビジネス社

 


<了>