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 先週、銀座関連の、『男と女 ウソのつき方見抜き方』  ますい志保・さくら著 を読んだから、同系統の著者の本を手にしてしまった。
 原利栄・著のこの本の方が、圧倒的に学びが多い。ますいママのお店は、ITバブル的な六本木族の企業人を顧客とし、原ママのお店は、堅実経営の息の長い企業人が顧客なのだろう。

 

 

【覚悟を決めて】
 働くとなったら、よけいなことは切り捨て、覚悟を決めてのぞみました。
 ・・・中略・・・。
 それに、あるときから結婚もしないと決め、ホステスひと筋でいくことにしました。だから仕事にとことん専念できますし、よけいな悩みもありません。(p.4)
 ホステスという職業ゆえに相手の親族に受け入れられず結婚に至らなかった体験以来、プロフェッショナル・ホステスという “覚悟を決めて” いるらしい。乱れた人間関係をよしとせず、硬派なホステスを貫いているのだという。お酒も飲めないとか。門外漢の邪推には、まるで当て嵌まらないホステスさんらしい。
 私は基本的に、スキンシップは必要ないと思っています。(p54)
 私自身は、一切お客さまと(男女の)おつきあいすることなしに、ここまでやってきましたし、だからこそ、続いてきたのだと思っています。 (p.92)
 お客さまとは恋愛をしません。
 昼と夜との境目をはっきりつけ、水商売とお客さまの関係を超えない。
 今では男女関係より信頼しあえる関係です。(p.99)
 と書かれているくらいである。

 

 

【日本的経営】
 どういうお客さまを集め、どういう方を大切にするか -------- つまりお店の 「客層」 は、各店の経営ポリシーにつながります。
 お金をたくさん使ってくださるお客様より、長く付き合ってくださるお客さま。また、そのお客さまに喜んでいただけるような、接客。
 それが私の考えるクラブの基本です。過剰な派手さや無駄な見栄は必要ないのです。(p.24)
 この、経営を実践しながら、ホステス、雇われママ、オーナーママへとステップアップしていったのだから、銀座クラブ業界にあっては、日本的経営の鑑なのだろう。

 

 

【禁止ファッション:ミュール】
 店の禁止ファッションとして、ミュールと書かれている (p.45) のだけれど、ミュールの意味が分からない。ネットで調べた。
 ミュールとは、履物の種類の一つ。女性用のサンダルの一種で、華奢で装飾性の高いデザインで作られた物を指す事が多い。日本では2000年頃から流行している。オードリー・ヘップバーンが映画『ローマの休日』で履いていたことから、日本ではヘップサンダル(ヘップ)とも呼ばれる。ハイヒール(ピンヒール)で、かかと部分は開いているか簡易なベルトを回すようになっているデザインが多い。

 

 

【クラブ利用者の暗黙のお約束】
 私たち銀座の店では、お客さま一組あたりの基本は1時間半です。普通に飲んでだいたいひとりが3万5千円くらいですが、その料金で満足ゆくサービスを差し上げられるのが、1時間半で、それ以上長いのは困りますよ、という暗黙のお約束があるのです。(p.84)
 ガストのようなファミリーレストランなら、1000円程度で3品注文できるし、深夜ならそれで1時間半くらい十分いられるし、ゆっくり読書もできる。
 クラブに行く人々の目的って分からないではないけれど、チャンちゃんのような人間にとっては、クラブって亜空間より異空間である。

 

 

【斬り返し】
 冗談、セクハラ、ストーカーは日常ごと。いちいち傷ついてはいられません。落ち込む必要もありません。さらりと斬り返す余裕を持ってのぞみます。 (p.87)
 斬り返しの具体例。
 ある店のママは、不細工だと言われたら、「そうなのよ。大リーグの松井に似てるって言われるの」 と言っていました。
「胸がないなあ」 といわれたら、「隠してるだけですよ」と私は言いますし、
「顔が大きいな」 といわれたホステスは、「目立つからいいでしょう」 と斬り返していました。(p.90)
 こういうのを 『(美しく)、強く、生きるワザ』 というのだろう。

 

 

【売れるか売れないかの分かれ目】
 ぱっと見はすごく美しくて、この子は売れるかなと思っても、まったくだめな場合もあるし、もちろんその逆もあります。何が二者を分けるかというと、それは働き始めてわかる、本人の 「やる気」。 これに尽きます。(p.137)
 やる気(情熱)、覚悟、仕事との一体化。
 一般のビジネスでも全く同様である。
             【仕事との一体化】
              

 

【六本木と銀座】
 たとえば六本木のクラブなどは指名によって歩合給が大きくつくので、ホステスは指名をしてもらおうと必死にサービスをします。けれど、銀座のクラブは固定給が大きいので、そこまで必死さはないのです。(p.138)
 なるほど、やはり地域特性と経営方針は符合するのだろう。
 おそらく、銀座は80年代末のバブル崩壊で痛みを経験している。
 六本木は、ITバブルの痛みをそれほどダイレクトには経験していない。

 

 

【諦観】
 経営は判断の連続です。
 そしてもつべくは謙虚さ。
 誇りはなくしたくないけれど、でも所詮ホステス。
 それが 「銀座で生きていく」 ということ。  (p.149)
 仏陀の “四聖諦“ に準ずるような、この業界のプロとしての “諦観” なのだろう。
 
 
<了>