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 本書は、リッツ・カールトン東京の総支配人の著作だけれど、下記リンクも、リッツ・カールトンに関する学びの多い著作である。
    《参照》   『ホスピタリティ』 力石寛夫 (商業界)
 スピリチュアル系のことに興味を持っている人々は地球の周波数が上昇しつつあることを知っているし、自分自身の周波数を上げることの必要性についても理解しているはずだけれど、いざ、具体的に、どの様な心持で生きればいいのかについては、ワクワク一辺倒で、自己完結的な生き方に徹している人々が少なくないように思う。
 でも、実社会で働きながら、社会全体の周波数向上と共に自らの周波数向上を目指すのだという明確な意識があるのなら、この著作のような、ホテル業界で成功している人のビジネス書を読むのが案外いいかもしれない。
 宇宙がどうの、神社がどうの、夢見の世界がどうのなどと、様々なこの世離れした世界の知識ばかり求めていたって、自分自身の周波数は全然上がらない。2009年2月初版。

 

【人生や仕事の成功者】
 人生や仕事の成功者というのは、何も能力がずば抜けて高かったり、運が良かったり、環境に恵まれている人ではありません。ポジティブ要素を見つけ出して(たとえそれが一見すると不幸なことでも!)、それを心底楽しむことが出来る人です。
 だから、誰にでもチャンスはあるし、自分次第で成功者になれるはずなのです。
 必要なのは、自分の中に眠る情熱を引き出してあげることと、考え方をプラス方向にちょっとだけ転換してあげること。本書では、そのお手伝いができればと考えています。
 読み終えたときに思わず笑顔になっている。この一冊が、あなたにとってそんな存在になれば幸いです。 (p.3-4)
 まえがきに書かれていることだけれど、この本は、ビジネス書というよりは、実践に裏付けされた良質な自己啓発書といえる。

 

 

【目的を持つ】
 どんなことにも目的を持ちましょう。
 習慣だからする、というスタンスではつまらない。
 自分は何のためにそれをしているのか。
 そう意識することで、
 人生も仕事も充実します。 (p.26)
 ルーティーン・ワークをルーティーン・ワークと割り切ってしまうと、その時点で人生にも仕事にも向上は起こりえない。意味の付替え(リフレーミング)をすることで、単なる習慣や単なる仕事を、価値ある物にすることは可能。
    《参照》   『胎内記憶』 七田眞・つなぶちようじ
              【リフレーミングの大切さ】
 もし今あなたが、会社のルールだからサービスを提供しなければいけないという考えでやっているのであれば、それはサービスではありません。
 ゲストを喜ばせたいと心から願っている人々が提供するものが本当のサービスになるのです。(p.41)

 

 

【サステイナビリティーによる評価】
 ありがたいことに、リッツ・カールトンでは総支配人の任期がほかの外資系ホテルに比べて長いので、長期的な計画が立てやすい。
 また、総支配人の評価も、バランススコアカードといって「従業員満足」「顧客満足」「プロフィト」という3つの角度で見てもらえるのです。つまり、場当たり的な利益だけ上げていればいいというものではなく、サステイナビリティー(持続可能性)を判断されるのでしょう。(p.36)
 リッツ・カールトンは、近視眼的貪欲な株主に阿った経営はしていないということになる。
 だからこそ、このホテルの総支配人が著す内容から、日本人が学べることは多々あるはず。
 総支配人は、すべてのスタッフのために働いているのです。
 スタッフのクオリティーこそが、サービスのクオリティーです。
 しかし、多くのトップが、サービスのクオリティーを高めようとするのに、スタッフの満足度や喜び、働きやすさなどに関心を示しません。
 私は常にスタッフがどうしたら働きやすいかを考えています。(p.78)
   《参照》   『「随所に主となる」人間経営学』 浜田広 (講談社)
             【お役立ち思想】

 

 

【クレドの共有と全総支配人化】
 「クレド」とはラテン語で「信条」の意味。
 リッツ・カールトンのクレドも、毎日のラインナップ(ブリーフィング)で繰り返し読み、理解を深めてもらって初めて実践されます。全世界で3万5000人のスタッフがいますが、仕事に来るときはそれぞれ頭の中はバラバラです。それを、クレドを読み合わせることで、自分たちのホテルがどういう存在であるかを思い出させ、同じマインドにしていくのです。
 こうしてきちんとヴィジョンを共有すれば、スタッフはその価値基準に合った判断を自分で下せるようになります。そして、自分も経営者であるかのように考え、責任を持ち行動できる。これが本来の「自立」であり、権限を委譲できる秘訣です。私は、全スタッフに「総支配人」という名刺を作ってあげたいと思うこともあります。(p.61-62)
 自分自身の現在の肩書より上の肩書で考える習慣ができれば、仕事の見え方は自ずと変わって来る。これによって、不平不満ばかり言っている愚者からは容易に卒業できる。
 これも、リフレーミングの一つの方法であるけれど、総支配人の視点にまで上げて俯瞰するようになれば、学びと向上はMAXになるだろう。
    《参照》   『段取り力』 齋藤孝 (筑摩書房)
              【「段取り力」を鍛える秘訣】

 

 

【温かみのないエレガンスさは、・・・】
「Elegance without warmth is arrogance」
 これは、ザ・リッツ・カールトン・ホテル・アンド・カンパニーのCEOであった Horst H, Schulze 氏の引用句です。
「温かみのないエレガンスさは、傲慢でしかない」 (p.66)
 リッツのようなラグジュアリー・ホテルに宿泊するような人々に、冷酷で傲慢な成り上がり者はそうそういないだろうから、このようなホテルという職場で働ける人は、ホスピタリティの好循環によって人生が煌めくようになる可能性が高いだろう。
    《参照》   『ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣』 美月あきこ (祥伝社)
              【当たり前のことを続ける】

 

 

【奥様が語る、成功の秘訣】
 リコは、とても心の広い人です。
 彼は見返りを期待せず人に何かを与えることができます。このようにして彼は周囲の人の信頼と尊敬を得ており、これが彼の成功の秘訣だと思います。(p.100-101)
    《参照》   『上級の仕事術』 深川太郎 (明日香出版社)
              【常にギブ】

 

 

【日本人は遊び心を】
 大阪の総支配人に初めて着任したときに感じたのですが、日本人はとてもまじめに仕事をします。素晴らしいと思います。でも、もう少し遊び心を持って自分も楽しみながら仕事ができれば、相手にさらに良いものを提供できるのではないでしょうか。
 遊び心は「遊び」とは違うので、仕事に取り入れて大いに構いません。TPOさえわきまえれば失礼もありません。
 特にサービス業では、遊び心というエッセンスが不可欠でしょう。ゲストはホテルステイを楽しみに来ているのですから、スタッフもその楽しさに彩を添えるようなエンターテイメントを提供するべきです。

 まず自分が楽しむこと。
 それを教えてくれたのは、ディズニーのサービスであり、リッツ・カールトンのサービスでした。
 仕事でもプライベートでも、どうしたらもっと楽しくなるのかを探してみましょう! その視点を持つだけで、毎日はもっと楽しいものに変わりますよ。(p.116-117)
 日本人の「おもてなし」の心は素晴らしいけれど、それをする側が、相手を気づかってばかりいると、返って相手は楽しくない場合が多いにあり得る。逆に、自分勝手な楽しい仕事ぶりが、顧客にとって愉快なサービスとなっていることもあり得るのだと言うことを、下記リンクから理解すべき。
    《参照》   『「中国人」になった私』 松木トモ (PHP) 《前編》
              【サービス業に携わる人である前に、一人の個人】

 これらは、民族によって感じ方が同じではないけれど、日本人は「おもてなし」の精神に「遊び心」を付加した方が、国際化した今日の時代状況下では、より効果的なはずである。

 

 

【比較は不要:平均化という猛毒】
 周りと比較していたら、自分の不得意なことばかりが目に付いてしまう。決して劣っているわけではなく、ただ違うだけなのに、その違いに劣等感を感じてしまう。そして、自分が平均化されてしまうのです。
 これは、とてもナンセンスです。(p.124-125)
 「同じであることが正しい」というトンデモナイ社会意識に呪縛されている日本人が、他者と比較をするようになると、間違いなく「平均化」に向かってしまう。これって、エントロビーの概念で言うところの、温度勾配ゼロの「熱的死」に相当するだろう。しかし、日本人の向かうところが本当に「平均化」した地点であるなら、それは最悪の「意識の死」を意味することになる。これは、創造者としての本質に真っ向から逆らう、最悪の在り方である。
 日本人は、日本文化的意識の在り方の功罪を、根本から見直してみる必要があるような気がする。
 そして、新たな地平から再創造すべきなのではないかと・・・・。

 

 

<了>