<前編> より

 

 

【教育の基本】
 世界的に 「優秀だ」 と言われる民族ではしばしば、幼い頃に暗記を強要しています。
 たとえばユダヤ人は知的に優秀な民族とみられていますが、彼らはユダヤ教の教典を幼い頃から暗誦させられます。だから旧約聖書の内容などは完全に身についてしまいます。
 インド人の中でも上位カーストに属する人々は、ヒンドゥー教の経典である 「ヴェーダ」 を暗記させられています。
 こうした幼少期の暗記は、脳科学からみても脳の発達に有効と言われています。記憶とは無数の脳細胞をシナプスよいう回路がつなぎ、ネットワークを作ることで固定されます。繰り返しの刺激によってネットワークが完成するのですが、繰り返しの刺激とはまさに暗記そのものです。ちいさいうちにやればやるほど良いようです。
 ところが日本の旧文部省はこの暗記や繰り返しの効果を否定し、抽象的な 「生きる力」 といった言葉であらぬ方向に教育を導いてきました。 (p.174)
 こういったことを100万回述べても、日本の教育行政の失政をいまさら償うことはできない。著者は、本質的な改善方法を、具体的にこの著作の終盤で語っているけれど、現場の公務員は、このような著作を読むことなどなく怠惰に時を空費し続けることだろう。
 中国の教育現場を視察した著者の記述を読むと、日本と中国の差はかなりのものである。
 現在、中国からは毎年11万人以上が海外留学に出ていると言われています。
 ただ精華大学、北京大学、・・・中略・・・などトップクラスの大学から日本にきた大学生はしばしば、「日本の大学で学んでいても時間の無駄です」 と言い捨てて帰国してしまうことがあるそうです。(p.197)
 決して誇張した表現ではないはず・・・。日本人の大学生同様に、最後まで呆けて居残るのは、きっと共産党幹部の子弟など縁故に物を言わせて留学している非実(学)力者だけなのだろう。

 

 

【日本の年金制度】
 社会保険庁の出鱈目な実態を聞くにつけ腹立つのもアホ臭いけれど、日本の年金制度は既に・・・・・、
 修正積立方式と称しながら既に実質的な賦課方式となっており、そして賦課方式という視点からも、現在の年金制度は既に破綻しているのです。(p.217)
 何年も前からニュースで取り上げられていても、抜本的な改革は、現在まで何も行われていない。
 それでも払い続けるという40代以下の皆さんは、お人よしなのでしょうか? おバカなのでしょうか?

 

 

【ドル外貨準備高世界一の中国と日本の違い】
 日本の場合、外貨準備の額が大きいだけでなく中国などと違ってオープンであるため、ドル売りはすぐにバばれしまい、秘密に売り払うことなどできない相談です。(p.225)
 ドル外貨準備の全てが国債ということにはならないけれど、下記の書籍には、オープンどころか、日本が保有するアメリカ国債は、債権質状態で換金できないと書かれていたけれど・・・・。
   《参照》   『米中冷戦の始まりを知らない日本人』 日高義樹 徳間書店
               【ドル還流のシステム】

 

 

【「日本の特殊性」を発信せよ】
 日本と日本人は世界的に見て非常に特殊な国であり民族です。
 私は今も国際会議などで、「自分の感覚は世界の中では特殊なんだな」 と感じることが多々あります。(p.256)

 日本が特殊な国であるこというを理解し、自らの特殊性を受け入れ、自分の置かれたポジションを自覚することです。そうしない限り、デメリットの部分に引っ張られてメリットの部分もいきてきません。(p.258)
   《参照》   『黄金の帝国』  三原資忍  サン企画
             【日本民族の特殊性】
 明治時代には、英語で 「茶の本」 を出版した岡倉天心、同じく英語で 「武士道」 を著した新渡戸稲造、アメリカで禅を広めた鈴木大拙など、日本文化を海外に広めようとした先人が数多くいました。
 そうした先人たちに倣い、世界の多様な文化を受け入れると同時に、大いに日本文化の独自性をアピールしてゆくべきでしょう。(p.258)
 著者のこの見解は、海外で活躍している日本人全ての人々に共通する見解と思われる。「エンツォ・フェラーリ」 のチーフデザイナーを務めた奥山清行さん も同様なことを書いていた。

   《参照》  『フェラーリと鉄瓶』 奥山清行 (PHP)

          『伝統の逆襲』 奥山清行 (祥伝社)

 

 

【文明の衝突は起こらない】
 国際政治学者のサミュエル・ハンチントンは 『文明の衝突と世界秩序の再編』 の中で、「やがてアジアの成長とともに、中国とアメリカの間で最終戦争が始まるだろう」 と予言していましたが、これはきわめて一神教的な発想です。
 ポスト産業資本主義の時代はおそらくそうはならない、と私は考えます。
 多神教の世界では、多様性がリスペクトされ、自然との共生が重視されると考えるからです。(p.260)
 アメリカ寄りにシフトせざるをえない日本と、ロシア寄りにシフトするであろう中国。カウンターパートナーとして歩まねばならない歴史的必然性が付きまとうように思われる。
 中国は一神教文明国の生み出したイデオロギーに色濃く蹂躙されてはいるけれど、本質的には日本と同様に多神教文化を有する東洋の国である。日本と中国、そしてアジア全体が一神教文明の 「分断と統治」 戦略の罠を見破ることができれば、きっと共生は整うはずである。
 
 
<了>