Felicidades La H!「貧しい国」が「豊かな国」を倒す!ホンジュラス、リオ五輪出場! | 元U-20ホンジュラス代表GKコーチ・山野陽嗣の「世界一危険な国での挑戦」

Felicidades La H!「貧しい国」が「豊かな国」を倒す!ホンジュラス、リオ五輪出場!


 やったぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!!!!

 我らがホンジュラスリオ五輪出場決めました!!!!!

 
 記憶に新しい「ロンドン五輪金メダル」のメキシコ、「ブラジルW杯ベスト8」のコスタリカと同組という厳しい予選リーグを勝ち抜いたホンジュラスは、リオ五輪出場の切符を賭けて、強豪アメリカと決定戦で激突。

 この決定戦で「勝った方がリオ五輪出場」という運命の一戦…。だが、アメリカは強い。反対側の予選リーグを「3戦全勝」で勝ち抜いてきました。しかも、今予選はアメリカ開催のセントラル方式。そう、アメリカは「ホーム」です。

 相手のアメリカが非常に強い上に、完全「アウェー」の不利な戦いを強いられたホンジュラス(他にもたくさん不公平な状況を強いられましたが、それは下に詳しく書きました)。

 しかし、昨年のブラジルW杯でコスタリカを同国史上初のベスト8に導いたピント監督に率いられたU-23ホンジュラス代表(ピントはホンジュラスA代表監督も兼任)は、本当に強かった。強いアメリカをもさらに上回る「強さ」が、ホンジュラスにはあった。

 U-20ホンジュラス代表で自身のチームメイトだったアルベル・エリスの見事な2ゴールで強豪アメリカにアウェーで2-0完勝!!3大会連続の五輪出場を決めました!!(五輪ここ5大会中4大会に出場


※アメリカとのリオ五輪出場決定戦の動画。「0:26」「2:42」のエリスの2ゴールは圧巻!「ダビド・スアソ」の再来とも言われるエリス。コスタリカ戦、メキシコ戦でも重要なゴールを決め、今最終予選では何と4ゴール。これで、まだ19歳!「ダビド・スアソが19歳の時よりも能力は上」とも言われほど才能溢れるホンジュラスの至宝。U-20ホンジュラス代表時代はフィニッシュの精度に課題を抱えていただけに、現在の確かなる成長と進化は頼もしい限りです。欧州で活躍する日も近いでしょう。





※忘れてはいけないのがGKルイス・ロペスの活躍。「4:55」の超絶スーパーセーブがホンジュラスをリオ五輪出場に導きました。10代にしてホンジュラスリーグ制覇を成し遂げた逸材。自身もホンジュラスリーグでGKコーチを務めていた際に彼とは何度も対戦しましたが、身長こそ低いものの、天性の反応とセービング、GKとしてのセンスは抜群でした。すでにA代表デビューも果たしており(昨年のブラジルW杯もメンバー入り)、ホンジュラスの将来を担うGKとして期待大です。





 今回のU-23ホンジュラス代表には、昨年U-20ホンジュラス代表でGKコーチを務めていた時に共に戦ったチームメイトが6人も居ます。第3GKもU-20ホンジュラス代表時代に指導したGK。またReal Sociedad(レアル・ソシエダ)時代のチームメイトも2人居ます。共に苦しい状況を乗り越えてきた彼らの存在は僕にとって「家族」も同然。そんな彼らがリオ五輪出場を決めた事は本当に嬉しかったです。「家族」である彼らの事を、心から応援しています。


 そして、「また必ずホンジュラス代表に戻るんだと気持ちを新たにしました。


 いろいろあったホンジュラス時代ですが、それでもやはり僕はホンジュラスを愛しているホンジュラス代表と共にW杯や五輪に出場したい気持ち
は、微塵も衰えていません。これは僕の人生の中で絶対に成し遂げなければいけない「目標」であり「」であり「使命だと感じています。


 「中南米最貧国の1つ」と言われるほど「貧しい国」ホンジュラスが、「世界1の経済大国」である「豊かな国」アメリカを破る。アメリカ代表の強化費は、ホンジュラス代表の何10倍とも言われています。

 そんな中でホンジュラスは、アメリカ、メキシコ、コスタリカなど強敵がひしめく北中米カリブ海地区で、たった「2枠」しかない五輪に(今回は南米とのプレーオフを含む2.5枠)、北京五輪ロンドン五輪、リオ五輪と3大会連続で出場を果たしています。シドニー五輪も出場を果たしており、五輪はここ5大会中4大会に出場

 また日本が出場できなかった今年のU-20W杯、U-17W杯にも出場を果たしており、「貧しい国」で恵まれない状況の中でも確かな「結果」を残しているのは見事ですし、立派です。


 確かにホンジュラスは金銭的には「貧しい国」「恵まれない国」かもしれません。

 しかし恵まれ過ぎてる、不幸でも書いたように、国民の「幸福度」では、金銭的にホンジュラスより圧倒的に恵まれている日本やアメリカよりも「」なのです。

 という点から見ると、ホンジュラスは日本やアメリカよりも豊か幸せな国なのかもしれません。


 
 最後に、ホンジュラスをリオ五輪出場に導いた名将ピント監督の話を。

 ピント監督はアメリカに勝利しリオ五輪出場を決めた試合後のインタビューで、「喜びの声」ではなく「怒りの声」をあえて挙げました。

 何に対して怒っていたのか?

 彼はこう言いました。


 「今回のリオ五輪最終予選のCONCACAF(北中米カリブ海地区サッカー連盟)のオーガナイズは不公平極まりなかった。例えばホテル。我々ホンジュラスは試合会場から40kmも離れた遠いホテルに宿泊させられ、対照的に『ホーム』のアメリカは、何と試合会場から5~10分の近いホテルだった。悪意があったとは思いたくないが、CONCACAFには改善を求める」


 実はホンジュラスがリオ五輪出場を決めた裏側にはこのように「ホーム」で「経済大国」のアメリカに有利な、不公平極まりないCONCACAFのオーガナイズがあったのです。他にもアメリカで行う予選でアメリカと対戦する可能性があるのに(実際、最も大事な決定戦でアメリカと対戦した)、アメリカMLSで活躍するU-23ホンジュラス代表の選手たちが、MLS側から許可が下りなかったため招集できないという問題もありました。こんな事は通常ありえないです。アメリカがホンジュラスの戦力ダウンを狙って意図的にやったと思われても仕方ない。

 このような不公平極まりないオーガナイズが今最終予選にはたくさんあったからこそ、ピント監督はリオ五輪出場を決めた直後のインタビューで、「喜びの声」ではなく、あえて「怒りの声」を挙げて改善を求めたのです。

 連盟のオーガナイズに対して「怒りの声」を挙げるのは、この世界ではよくある。

 けど、今回のピント監督が「よくある怒りの声」と決定的に違うのが、予選中は一切、文句を言わず不公平な状況の中でも勝利を積み重ね、五輪出場という「結果」を出した後に「怒りの声」を挙げている事

 「五輪出場」という誰が見ても文句なしの「結果」を出した後に「怒りの声」を挙げているのだから、説得力が違う。これが予選中や、もし敗退してから「怒りの声」を挙げても、プロの世界では、ただの「言い訳」と取られてしまいます。

 ピント監督のこういう素晴らしい哲学が、昨年のブラジルW杯でコスタリカを史上初のベスト8に導く成功をもたらしたのだと感じました。

 戦術面に関しては、ロンドン五輪の時のようにまたリオ五輪でも日本と対戦する可能性があるので詳しくは言えませんが(僕はホンジュラス側の人間なので)、昨年のブラジルW杯のコスタリカを彷彿とさせる「組織的」かつ「手堅い」チームに仕上げています。

 「組織力」「手堅さ」などはこれまでのホンジュラスに最も欠けていた部分であり、元々「高い個の能力」を誇るホンジュラスに「組織力」と「手堅さ」を融合させた今回のチームは、ひょっとしたらベスト8入りしたロンドン五輪の時のチームよりも、強いかもしれません。

 選手も2013年のU-17W杯UAE大会でベスト8入りした時のメンバー(エリスなど)が順調に成長と進化を遂げて残っていますし、
世界大会での経験も実績も豊富。スペインのテネリフェで活躍するFWアントニー・ロサーノはロンドン五輪にも主力として出場しており、今回は招集できなかったMLSの選手たちや、アンデルレヒトで活躍しA代表でも主力のアンディ・ナハル(彼もロンドン五輪でも主力として出場)らも合流するであろうリオ五輪本大会は、今最終予選よりもさらに強くなる事が予想されます(ちなみにロンドン五輪にも主力で出場したロサーノもナハルもオーバーエイジではありません。彼らはロンドン五輪当時は19歳でしたので、リオ五輪でもU-23として出場可能なのです)。

 唯一の不安はA代表監督も兼任するピント監督がA代表と日程が重なってリオ五輪本大会で指揮を執れない…という状況に陥る可能性がある事。かつては北京五輪で同様の問題が起こって敗退した苦い経験がありますし、今最終予選でも五輪出場を決めましたが、予選リーグ3試合目はA代表の日程と重なったため急きょピント監督がチームを離れる…という問題がありました(よく「監督不在」という状況がありながら五輪出場を決めた!)。そこが唯一かつ最大の不安要素です。リオ五輪で成功を収めるにはピント監督の存在は不可欠ですからね。


 近い将来、必ず僕も再びホンジュラス代表に戻ってW杯、五輪に出場を果たします!!必ず!!



※昨年のU-20ホンジュラス代表時代の写真。コスタリカ遠征にて。僕の隣に居るのがアルベル・エリス。この中のメンバーの多くがリオ五輪のU-23ホンジュラス代で活躍しています。選手としての能力が高いのはもちろん人間的にも謙虚で向上心溢れる素晴らしい選手たちです。自身の「家族」とも言える彼らと、また再び共に戦える日がくる事を心から願っています。いや、必ずその日はやってくる!

2014年。U-20代表、コスタリカ遠征

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