春から夏の終わりにかけて読んだ本備忘録
『秋山記行』鈴木牧之
『北越雪譜物語』鈴木牧之/田村賢一訳著
『バット・ビューティフル』ジェフ・ダイヤー/村上春樹訳
『暗殺者の正義』マーク・グリーニー
『卵をめぐる祖父の戦争』デイヴィッド・ベニオフ
『さようなら 昭和の名人名優たち』矢野誠一
『歴史探偵 昭和史をゆく』半藤一利
『明治開花 安吾捕物帖』坂口安吾
『はだかんぼうたち』江國香織
『舟を編む』三浦しおん
『島はぼくらと』辻村深月
『涙と花札 韓流と日流のあいだで』金惠京
『岳飛伝 四』北方謙三
『さよならアメリカ、さよならニッポン』マイケル・ボーダッシュ
『天才アラーキーの良き時代』荒木経惟/末井昭編
『爛漫たる爛漫』津原泰水
鈴木牧之『秋山記行』覚書
秋山記行覚書
鈴木牧之の『北越雪譜』は有名であります。有名であると言うか知る人ぞ知る江戸時代のベストセラー。雪国の暮らしを雪の無い国の人々に知らしめた本であるのだが、さて読もうと意気込んで手に取り開いてみると、そこにはびっしり文語体が。うわ~ちょっと待ってくれ~と浅学非才な私は本を置き、すたこら逃げだしたわけである。しかしこのままでは悔しい、何か牧之で読む物はないかとAmazonを物色したら、そこで見つけたのが『北越雪譜』と並び名高い『秋山記行』の嬉しい事に現代語訳でありました。
『鈴木牧之 秋山記行 現代語訳』
訳・解説 磯部定治(恒文社)
『秋山記行』は新潟長野に跨がる山深い渓谷沿いに点在する里、秋山郷を牧之が調査旅行をした時の記行文で、私達津南町の人間にはまさにご当地本であります。江戸文政の時代、塩沢の牧之がどのようなルートで秋山郷へ入り、どのような回り方をしたのか興味が湧いたので、その辺(道程)を中心に簡単な覚書を書いてみました。
鈴木牧之は塩沢村(現南魚沼市塩沢)の裕福な質屋の旦那であった。生きた時代は(1770~1842)とあるから明和7年~天保13年、73才で亡くなった。『東海道中膝栗毛』で有名な当時の売れっ子作家十返舎一九に、秋山のことを書いて出版しようと依頼されたのが『秋山記行』執筆のきっかけであった。
文政11年(1828)9月、牧之59才、秋山郷へ旅立つ。道案内として同行するのは、度々秋山郷へ商売に行き道のりに詳しい桶屋団蔵。
1日目。早朝に塩沢を出立、十二峠を越えて倉下(立ち寄った家でお湯を飲み一服)さらに上り下りの峠を越えて葎沢、清津川に架かる万年橋(大きな杉丸太2本)を渡り小出(中段という所にある農家で中食)、ここから田代までの山道は牛馬が通れる道とあるから、わりと良い道だったようだ。田代(農家で一休み、柴橋を渡る)そしてここより現在の津南町に入る。所平を通り過ぎて道を上ると山裾の広々した平原、蜘蛛の巣のように迷路が走っているとあり、現在の米原からニューグリンピア津南あたりの広い平原で、当時は村がまったくなかったと思われる。その平原を進み野士・のじ・現太田新田へ出る(30軒程、在所に似つかわしくない町のような家並み、茅葺きの家で渋茶を飲む)。そして見玉で宿泊第一夜(黄昏れの頃着、天台宗見玉不動堂正法院に宿泊。寺僧は大黒の御札配りに上妻有の村々を駆け回っていて二、三日留守)。現在でも見玉正法院は恵比寿大黒の御札を津南町の村々に配っている。
2日目。見玉を朝出立。清水川原(秋山の入口、二軒、茶で一服)を通り三倉(三軒、お昼)、中ノ平(二軒、お茶)、大赤沢(九軒、藤ノ木家でお茶)、甘酒(二軒)と越後秋山郷の村々を通り信濃秋山郷の村小赤沢で宿泊第二夜(黄昏時着、二十八軒、村では稀な塗壁茅葺き新宅の福原家に宿泊。菩提寺は船山の龍言寺とのこと)
3~4日目。小赤沢を朝出立、上の原(十三軒、お茶)、和山(五軒、昼飯)と通り、険しい山道に難渋し、中津川に架かる細い丸太二本による橋を渡り川西へ。湯元・現切明到着し二泊する。(秋山の最奥地、湯治場、湯守りの主人は嶋田性、秋田のマタギが冬期間ここの長屋を借りて草津温泉までの山地を巡り狩りや漁をしている。長屋は秋山で初めて見る板屋根二階建て。秋田マタギからゆっくりと話しを聞きたいために二泊となる)
5日目。湯元を朝出立。東秋山と違い下結東まで道がよい。屋敷(十九軒)、元・秋山村(天明の飢饉で絶えた)、前倉(九軒、昼食)と通り上結東で宿泊第五夜(二十九軒、壁を塗った里のような家が多い、名字は大方滝沢、他に山田、長寿の人が多い)
6日目。上結東を朝出立。逆巻(四軒、秋山を巡りここで初めて土蔵を見た)、猿飛橋(細い丸太二本)で中津川を渡り清水川原から見玉(正法院でお昼)、野士、所平、田代と通り小出で宿泊第六夜。
7日目。小出を朝出立。葎沢から十二峠を越えて塩沢に無事帰宅。
旅の道程は以上の通り。
支配関係については、越後側結東九ケ村の内、下結東・逆巻・上結東・前倉・清水川原・三倉は秋成村庄屋岡村家。大赤沢・中ノ平・甘酒が深見村庄屋中沢家。信州側の村々は全て箕作村庄屋嶋田家の支配とあった。
終章「秋山の評」として牧之は書いている。「秋山は鈍いこと古い硯のごとくである。….この秋山こそ、神代の時代そのままの長寿のようである。それは、天の恵みを自然に守り継ぎ、この土地相応の栃の実、楢の実、粟、稗などを、都会や田舎の食べ物と同じように食べていることによるだろう。これらはすなわち天から賜る土地の産物で、おのずから仙人の道を学んでいるようなものだ。色欲も飲酒も自由勝手にはしない。….一度はこの秋山の猿飛橋の景勝地に庵を結んで住み、中津川の清流で命の洗濯をしたいものだと思った。」
- 秋山記行 現代語訳/恒文社
- ¥1,890
- Amazon.co.jp
ジム・クエスキン・ジャグ・バンド!
4月12日 日本橋三井ホール
まさか21世紀の日本で、ジム・クエスキン・ジャグ・バンドのライブを楽しめるとは思わなかった!素晴らしい歌と演奏だった。まさに夢の一夜。招聘元トムズキャビン麻田浩氏に感謝感謝感謝!!!
なんといってもJKJBは1963年に結成されたバンドで、僕が持っているアルバム『GARDEN OF JOY』は67年の作品です。もちろん後追いで知って買ったものです。この時のメンバーが親分ジム・クエスキン、そしてジェフ・マルダー、ダニー・リッチモンド、マリア・マルダー、リチャード・グリーン、ビル・キースの6人。僕が彼等のアルバムを聴いたのは70年代後半で、その動機といえば、彼等がJKJB解散後の70年代にそれぞれが活発にソロ・キャリアを積み重ね、アメリカン・ロックの世界でも有名人となっていて、そのために彼等が以前一緒に組んでいたバンドJKJBに興味が湧いたってことですね。ジェフ&マリア、ベター・デイズ、ミュール・スキナー、マッド・エイカーズ、シー・トレインなど彼等が主要メンバーとして参加したバンドであり、リチャードとビルはそれ以前にブルーグラスの超名門ビル・モンローのブルーグラス・ボーイズに参加していたという強者でした。マリア・マルダーはソロ・デビューし”オールド・タイム・レイディ”として大スターになっていたしね。
そんなことで、僕にとってはまさにスター軍団夢の来日公演だったわけです(2005年に亡くなったダニー・リッチモンドの不参加が残念)。が、一抹の不安はこの夢の軍団、お歳が70代とご高齢、ジェフ・マルダーが現役バリバリなのは判っていたけど、他の人達は、、、ちょっと不安はありました。
ところがどっこい!歌と演奏が始まった瞬間、そんな不安は歓喜に変わり、もう~凄い~!嬉しい~!凄い~!嬉しい~!の連続で、も~大変(笑)。ほとんどのお客さん(ほとんど年配者w)も同じような感想を持ったと思うよ。グッド・オールドタイム・ミュージックに包まれたハッピーな一夜だったね~♪。
実のところジム・クエスキン本人について、そのソロ活動はまったくノーマークで最近のことも知らなかったので、どの程度できるのか、まあそれが一番心配だったんですね。ところがどっこい!(ここでもw)ジム・クエスキンてのは凄い人だった。今頃?と言われそうだけど。親方なんだよね。存在感が凄い。歌もギターもこれ程の実力者だったとは今まで知りませんでしたよ(失礼いたしました)。その存在感を喩えるならドリフターズのチョーさんだよね。加藤茶と志村ケンというエースがいて彼等がスターなんだけど、やはり親方はチョーさんで、チョーさんがいてこその加藤と志村でしょ。そしてジムもチョーさんもグループで一番のノッポさんだしね。パンフレットに載ってたエピソードに、あのジョン・セバスチャンが合う度に緊張すると言ってるし、細野晴臣はある種の緊張を伴う憧憬を感じると書いている、そんなジム・クエスキンはまさに生きた音楽史って存在でしょうかね。
ライブでは、ジムとマリアとジェフという3人の素晴らしい歌い手がいて、フィドルのリチャードとバンジョーのビルという屈指のプレイヤーがいて、もちろんジムとジェフのギターの腕前も一流で、なので歌も演奏も余裕の素晴らしさ。サポートとしてマンドリン、ウッドベース、ギターに日本人プレイヤーが加わり、彼等のプレイも素晴らしいものだった。JKJBの伝説となっていたジェフによるヘリウムガス・プレイも披露され、演奏中マリアがジェフにヘリウムガスを吸わせて、その甲高い奇妙な声で歌うってやつなんですが、何度も何度も吸わされて歌うそれがコミカルで、しかしきちんと音楽になってところがお見事で、まったくブランクを感じさせないステージでしたね。ほんとにありがとう!ジム・クエスキン・ジャグ・バンド!そして麻田さん!
最後にこの2.3年のライブで昔のライブと変わったこと、それはTwitterとツイ友さんの存在。Twitterを始める前なら、東京のライブなどは1人で出かけて1人で聴いて、終わればホテルに戻って寝て帰る、なんですね。ところがTwitter始めて同好の士であるツイ友さんが増えると、どのライブでも何人かのツイ友さんに出会うことになる。ライブ会場での話し相手ができ、それが終演後の飲み友達となるケースも増えた。
今回も何人かのツイ友さんと出会い、そして終演後は札幌で浜田真理子さんのライブを主催した恵本さんに出会い、その間を取り持ってくれた平野さんと3人でお酒を飲みながらいろんな話が出来、収穫の多い東京ナイトだったのです。
ネットが生み出すモノってまったくもって油断できないね。(笑) fin.
今年に入ってこれまでに読んだ本
作者得意の警察小説。刑事部と警務部がいや~な内部抗争。こうゆう内部ドロドロな警察小説が多くなったけど、大丈夫か?日本警察!
「冬の本」友部正人、浜田真理子ほか/夏葉社
年をまたいで一篇一篇読み続け、最後に登場の吉本由美さんは『海炭市叙景』を取り上げていた。嬉しい。佐藤泰志『海炭市叙景』は好きな小説だったから。
「噂の女」奥田英朗
奥田英朗にはずれなし。「あの女、絶対ヤッとるぞ!.....この町のどこか、夜ごと語られるは彼女にまつわる黒い噂...。」帯にあるとおり。まったく、男ってやつは...(笑)
「火口のふたり」白石一文
「吐き気がするほどの性欲を感じた。」という帯の文句に釣られたわけじゃないよ(笑)まあエッチはエッチだけど、富士山が噴火するかもって話しだから。「でも、実はすっごくイヤだった。」にほろりとしたかな。
「ビブリア古書堂の事件手帖2」三上延
テレビドラマ化される前から読んでたシリーズ。ヒロインの栞子は絶対巨乳でなきゃいけないのに、剛力彩芽では、、、う~ん、違うんだなあ。誰か深田恭子が良いと言ってたな。
「春嵐」ロバート・B・パーカー
スペンサー・シリーズはご無沙汰だったけど、シリーズ最終作と聞いて手に取った。読めば面白いのは判っているけど、シリーズを10数冊も読むと、もういいかなって気になったんだよね。でもやはり探偵スペンサーのファンだからね、彼の最後の姿はきちんと読んでおきたかった。
「疑心ー隠密捜査3」今野敏
超堅物なキャリア官僚、竜崎伸也が主人公の警察小説シリーズ。警察モノでは今一番面白いのだ。今回はあの原理原則主義者の堅物竜崎が恋するオジサンになってしまうお話し。さあ大変だ(笑)部下の女性キャリアに対する恋心に戸惑い調子を崩す竜崎。作者も酷なことをする(笑)
「ラストサムライ 山本覚馬」鈴木由紀子
今年は『八重の桜』だからね。しかしすでに『あまちゃん』に抜かれてる(笑)。もともと幕末と会津藩には興味あったし、新島八重のことも知ってはいたけど、何故か不覚にも山本覚馬のことはまったく知らなかった(反省)。このひとは凄い人なんだね。視力を失った後、明治の時代にその残した足跡が凄いんだね。う~ん、幕末から明治の初め、凄い日本人がにょきにょきと現れてる。時代が人を生むのか?
「戦争と一人の女」坂口安吾原作/近藤ようこ漫画
自分の好きな物事だけを考えていられる人もいれば、嫌いな物事ばかりが気になる人もいるだろう。安吾は嫌いな物事に敏感だったし、自分もそんなタイプのような気がする。嫌いなものに真っ直ぐぶつかることをせず(できずに)斜に構え皮肉屋の振る舞いをする。なんでこんなこと書いてるんだろ(苦笑)。大好きな漫画家による坂口安吾の作品。悪いはずがない。
「戦友の恋」大島真寿美
唯川恵の『肩ごしの恋人』と角田光代の『対岸の彼女』が好きな私だから、当然この小説も気に入りましたよ北上さん(笑)北上次郎曰くヒロイン友情小説。はい好きです弱いです。
「紅の匣子槍(モーゼル)2 狼叫」上下巻 樋口明雄
満州馬賊となって活躍する少女紫火の波瀾万丈の物語。伊達順之助、川島芳子など実在の人物の登場。前作は冒険活劇小説としてまた少女紫火の成長物語として文句なしの面白さだったけど、今回は悲壮感が漂う場面ありで少し辛くもあり。
「大いなる眠り」レイモンド・チャンドラー/村上春樹訳
村上訳チャンドラーもこれで4作目。どれも皆素晴らしい。音楽CDで言えばリマスターされて格段に良い音になった感じ。以前の訳によるマーロウがモノクロなハンフリー・ボガートなら、比べて村上マーロウはジョージ・クルーニーって感じ。どう?(笑)もともと好きだったチャンドラーのマーロウ物が更に好きになってしまった。
「BILLY BAT」8~10巻 浦沢直樹/長崎尚志
話の展開が、時も場所もやたらに飛ぶのでストーリーの芯が見えづらくなっていた感があったけど、前から気になっていた伊賀忍者、ついにまた伊賀忍者に繋がった。そして雑風先生の新潟ルーツが明らかに!中越地方っぽい(笑)
「白土三平 ビッグ作家究極の短編集」白土三平
たまたま本屋で見かけて買った1冊。ここに収められた白土三平の懐かしい忍者物の短編こそ、私を本好き読書好きにしてくれた作品だったと今にして思う。忍者漫画だから当然子供が読んで面白いものだ。ただ白土三平の忍者漫画には奥深さがあった。それがなにか判らないながらも感じることができた。白土三平60年代の忍者漫画はいまでも十分に面白い。
「中夏文明の誕生」NHK「中国文明の謎」取材班
これNHKでやってたのを見て興味が湧いて即購入。中国最古の王朝は紀元前1600年頃の殷王朝だと記憶していたけど、その前に夏王朝があったというのだ。遺跡も出ている。もしかして、もっと古い王朝の遺跡も出るかも?いやはや中国の歴史はダイナミックだ。中華=中夏。中華思想のルーツを夏王朝に求めるとか、古代王朝興亡史はやはり面白いね。
この秋から年の瀬のあいだに読んだ本
「竹に紅虎」下川博
「その日東京駅五時二十五分発」西川美和
「大瀧詠一~大瀧詠一と大瀧詠一のソロ活動40年史」
「リトル・シスター」レイモンド・チャンドラー/村上春樹訳
村上訳で生き返った作品だと思う。ヒロインが生き生きとしてるもんね。
「新宿、わたしの解放区」佐々木美智子
佐々木さんの前向きな明るさと行動力に圧倒された。彼女を取り巻く人達が曲者揃いで素敵なんだけど、それは彼女の包容力の大きさゆえなんだよね。
「戦後史の正体1945-2012」孫崎亨
「ビリー・ワイルダーのロマンティック・コメディ」瀬川裕司
「GO!GO! アリゲーターズ」山本幸久
「恋する古事記」近藤ようこ
「MUSIC MAGAZINE レコード・コレクターズ present 定盤1000」
「心星ひとつ~みをつくし料理帖」髙田郁
「希望の獅子」本城雅人
この小説は抜群に面白かった。
「ニール・ヤング自伝1」ニール・ヤング/奥田祐士
「岳飛伝3」北方謙三
物語に新たな展開が。秦容が向かう先は?史進に黄昏れが、、。
「冬の本」友部正人、浜田真理子ほか/夏葉社
じつはまだ三分の一くらいしか読んでないんだけど、どれもこれもお手本にしたい程のいい文章です。
あ~もう夕方の5時。Macの前にいる場合じゃない。
大晦日なのだ。
